米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡り、日米関係が混迷の度合いを深めている。鳩山由紀夫首相は8日、平野博文官房長官、岡田克也外相、北沢俊美防衛相、前原誠司沖縄担当相と首相官邸で会談し、米側に伝える政府の基本方針について、移設先を決定せず、結論は来年に先送りすることで合意した。米側に配慮するため、現行計画も排除しない方針だが、了承が得られるかは不透明だ。【須藤孝、野口武則】
「決める方向で今努力している。かなり詰まってきている」。会談後、首相は記者団にそう強調した。社民党と連立を維持するためには、キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)に移設する現行計画で年内に結論を出すことは難しい。
首相は、国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議が開かれているコペンハーゲンで18日に日米首脳会談を行い、(1)連立維持の重要性(2)現行計画を排除しないこと(3)沖縄の負担軽減の必要性--をオバマ米大統領に直接説明し理解を得たい考えだ。だが、外務省幹部は「結論が出ていないのに会談ができるか疑問だ」と、米側が応じない可能性を示唆する。
普天間問題は日米関係全体にも影響を及ぼし始めている。日米同盟深化のための政府間協議について、米側は11月の局長級協議で「普天間解決後」とし、4日の日米閣僚級作業グループ協議後にも改めて先送りを伝えた。岡田氏は「(協議できる)状況ではない。普天間の問題を解決せずに日米同盟の議論に入るという気持ちになれない」という。外務省幹部も「ローンが残っているのに次の借金はできない」と表現した。
日米閣僚級作業グループも「連立の話が出て、先送り論や(移設先を)他に探す話も出てきた。いったん停止をして待っている」(岡田氏)という状況で、事実上頓挫。岡田氏は8日の記者会見で「日米双方に深刻な信頼関係の喪失が生まれかねない。日米同盟が若干揺らいでいる」と改めて懸念を表明した。
米側にも危機感がないわけではない。ズムワルト駐日首席公使は8日、民主党の山岡賢次国対委員長を国会内に訪ね、早期決着への協力を求めた。連立問題がカギとみた米側が、連立重視の小沢一郎幹事長に近い山岡氏にアプローチしたとみられる。だが、山岡氏は「国内の政治情勢も理解して進めた方が、長い目で見たら日米関係にプラスになる」と述べるにとどまった。
一方、社民党は攻勢をかける構えだ。来年1月には米紙ニューヨーク・タイムズへの意見広告の掲載や、国会議員の訪米団が米議会に直接働きかけることも検討している。党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は16日から沖縄県を訪問する。
毎日新聞 2009年12月9日 東京朝刊