【幻影の古戦場】戦火の山とみっつのオモイ

<オープニング>


 少しの後。
 目を泣き腫らした少年をあやめが住居まで送り届けに出た頃。
 神殿には起き出てきた長老をはじめとする数人の妖狐と、それから能力者たちがいた。
「なるほど……事情はしかと聞いた。ごほっ」
「精一杯を尽くしたんですが……」
 香月は幾人かの土蜘蛛を取り逃した事、あやめと秋桐が負傷した事、防壁が破壊された事を含めて長老に頭を下げる。
「なぁに、それらは大したことではないじゃろうて。それより……」
「土蜘蛛が攻めてくるのは時間の問題かと」
「ううむ。困ったのう」
 草月を捕らえられ、土蜘蛛の女王が黙っていない事を交換した情報で知る千怜たちは戦の準備を促す。
 その結果、一応武具の準備などは行われたが……。
「本当に来るのかなぁ」
「ちょっとコワイねー」
「東北の人たちに追い返してもらえば大丈夫だよ!」
 などという会話がちらほら。
(「やはりこちらから動かないとだめみたいですね」)
 まどかは小さく首を振り、何か後押しする一言でも掛けようかと思っていた時。
 一人の妖狐が言った。
「あの子、草月って言ったっけ。土蜘蛛のところに帰してあげようよ」
「そうだねー。そうすれば戦うの、考え直してくれるかもしれないしねー」
 これも幻影の古戦場の効果か。それとも妖狐の性格なのか。
 あやめの反応といいここにいる妖狐たちといい、草月を『捕虜』として扱うのには抵抗があるようだ。
「しかし彼は戦略上……」
 言いかけ、アインはふと思いとどまる。
 仲間たちと視線を交わし、そして誰かが言った。
「それなら――」
「ふむ?」

 与えられた寝室に戻ってきた能力者たちは、それぞれ戦いに向けての準備を整えていた。
「では、2班に分かれるという方針で構いませんの?」
 撫子の言葉に一同が頷く。
 車座になり、なるべく外に声が漏れないようにしながら燐が確認をとる。
「片方が草月の逃走を支援する班。そしてもう一方が砦に留まる班、であるな」
「土蜘蛛の方たちも臨機応変に動いてくれると思いますし、草月さんを逃がすのは良い手だと思います」
 言って、まどかが頷く。
 妖狐たちも「そう言ってくれると思ってた! よろしくねー!」と、とても喜んでいた。
 草月にとっても悪い話ではないし、そうでなくても彼に『逃げる事』を拒否する権利はないだろう。
「どこまで逃がして、その後どうするというのは?」
 アイリーンの質問に、今の彼らに明確な解を示すことは難しかった。
 しかし、彼の命運は確実に能力者たちが握っている。
 それは草月だけでなく、
「妖狐は……妖狐は、どうなっちゃうんだろう」
 果は少し落ち込んだような表情で呟く。
 少し考えた茜が、やはり小さな声で告げる。
「史実では……滅びてしまうのでしょう」
「やっぱり、ゴーストでも……たすけてあげたいな」
 幻影の古戦場から出たゴーストは消えてしまう。
 傷つき倒れ、『死んで』しまっても消えてしまう。
 この二つに大きな差はない。しかし、それでも。
「頑張ればきっと何とかできるよ!」
 しょんぼりとうな垂れる果を元気付けるように椎奈が笑った。

 それは、決戦を控えた夜の出来事。
 彼らに突きつけられた選択肢。
 行灯の火が音をたて、揺らいだ。

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参加者
桐嶋・千怜(萃禍・b01805)
神農・撫子(おにしるべ・b13379)
赤金・茜(銅の鎧巫女・b13957)
アイン・ヴァールハイト(コキュートス・b22629)
新町・果(約束の地・b28478)
霧島・燐(神技流空手伝承者の内弟子・b29825)
水原・椎奈(陽だまりの姫君・b31817)
釜崎・アイリーン(巡る音と流れる歌・b45268)
氷室・まどか(小学生雪女・b51391)
土御門・香月(氷月に降る淡い蒼雪・b63217)



<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

桐嶋・千怜(萃禍・b01805)
■心情
偽り…幻影とはいえ、何ともやる瀬ないな

■作戦
妖狐班として工作及び砦から妖孤を逃がす為の説得の試みと牽制
逃走の際火を放ち、砦の利用阻止

■行動
▽工作
笠間陣営が砦に着く前に火種等を集め、効率よく家屋等に
火の手が上がるよう燃えやすい物を設置しておく

▽笠間入砦の際に迎えとして役を買って出
妖孤にバレないよう笠間の者と先に渡りがつくように
のち笠間が行動を起こす際は、妖孤が先走らぬよう一歩前にで煽らないよう牽制を

「チッ、また随分と無茶な要求だこと…少し時間をもらえるか?
アンタらもここで戦うのは本意じゃない、だろ?」

▽説得
長に駆け寄り砦放棄するよう進言

私たちの仲間が出払っていなければ手の打ちようもあったろうが…
現状ここで応戦すれば2陣と事を構える形となり生き残るのは難しい。
地を離れるのは辛いだろうが…今この場は退くべきだ。
まだ幼く今を生きる者達の為にも、な。…ご決断を!
と説く

説得が上手く行けば長から他で仲間が説得している
あやめや妖孤全体に逃走の旨を伝えてもらう

▽誘導
焦らず子供や老齢の者を優先に
若い者は砦を利用出来ないよう逃走時に火を点けていくよう伝える

■逃走・戦闘
戦場となる位置から離れるように伝え
両陣営から追っ手が掛からないとも限らない為、殿に控え有事の際は交戦に転じる
虎紋覚醒から震脚→白虎絶命拳へと繋げ、以下震脚から再度連携へ

■消失
終わったか
泡沫と消えゆく身なれど、此処に居た証は…確かに

神農・撫子(おにしるべ・b13379)
――これが最善と信じ、やるべき事をやるまでですの。
最後までベストを尽くしましょう。

<目的>
笠間を勝者とし、均衡を崩す

<作戦>
他陣営と手紙のやり取りをした岩のポイントを合流地点とする
草月処断後、土蜘蛛陣営と合流、鋏角衆・巫女部隊を殲滅して女王討伐へ

<行動>
【草月班】として行動
女王討伐戦に参戦する事を前提に、
目立たない装備で行く/有効であれば地味の才能を活かす

砦出立後は急襲に備えて常に周囲を警戒し、草月の行動にも注視
処断は先輩の指示に従う
彼の退路を塞ぐ位置に立ち、逃がさぬようにした上で殺害
――覚悟を決めてここに来ておりますから、迷いはございません。

<戦闘>
葛城山、今治に続き……また戦わねばなりませんのね。

基本的に後衛として行動
射程内に4人以上入る時のみ吹雪の竜巻を使用
結晶輪での射撃攻撃を主体とし、その際に狙う優先順位は
消耗してきた敵>回復手を担う巫女>その他
着実に数を減らしていきたいですね

鋏角衆・巫女部隊と戦う際は相手の動きに気を付け、
逃走しそうな素振りがあれば仲間に注意喚起を
一人たりとも逃がしません

・使役
積極的に前に出て攻撃させる
体力の半分を切るダメージを受けた人が出たら最優先でペロペロなめるを指示
オトリ弾対策として、自分の様子がおかしくなったら
「祈りを捧げる」ように予め言い聞かせておく

<作戦終了後>
皆の無事を確認、必要に応じて手当てを

……マロウを抱き締めて少しだけ休憩したいですの。

赤金・茜(銅の鎧巫女・b13957)
これで最後。全てはより良き結末の為…
飾らず、取り繕わず、ただ己に出切る事を通しましょう。

【作戦】
私は『草月班』。
草月様を連れ先ず向かうは土蜘蛛依頼の方々と連絡に使った書簡を挟んだと言う所。合流するならそこが最良でしょう。
草月様を囲む様にして歩き、周囲に意識を張り巡らせます。
草月対応班の合流、ないし救助隊らしき人影を発見した場合即、草月様を処断…いえ、殺します。
獣撃拳奥義。出切る限り迅速に、確実にと言うだけです。
「…するべき事をするだけだから、謝らないよ」
その権利も無いでしょうし、ね

死亡確認後、出切るだけ早く草月対応班に合流、鋏角衆・巫女部隊の殲滅を。
1人の取りこぼしも無い様、これも確実に…皆殺しに。

その後は、持参アクセサリを上から纏い、出切るだけ目立たぬ衣装に。
可能であれば草月対応班の皆様の案内と指示に従い土蜘蛛の陣に参り潜伏。
土蜘蛛の女王討伐に加勢致します。


◎戦闘
何れも余裕を見て森羅呼吸法による強化を行います。

>鋏角衆・巫女部隊戦
距離の一番遠い方に肉薄し…殺しましょうかと。
逃げられると不味い。獣爪の速さを活用致します。
強化より囲むを優先し、確実に追い詰めたいですね。

>女王戦
女王には手出しせず、近衛兵の迎撃に専念。
アビリティは出し惜しまず、数を減らす事に全力を。
戦場ですし、これも殺す事になりましょうね。


◎後
可能な限り皆様と合流し、戦場の外へ脱出致します。

泣くも吐くも、その後で良い。

アイン・ヴァールハイト(コキュートス・b22629)
心情
…コレで終わり、やな。

行動
俺は草月班で行動
予め、行動出来ない様に手はロープで縛っとく
草月を連れて前回決めた、連絡ポイントに使ってる大岩の場所まで囲むようにして歩き
常に周囲に気を配りながら少しの間、待機。
「何か、言い残したい事、あるか?…少しなら、聞いてやる」

土蜘蛛方の潜入した人であれ、草月救出部隊の奴であれ、人影を見かけたら
白燐奏甲で強化して処分、する。
「…アンタに何も恨みもないけど…伝えたい事くらいは、伝えたる」
人の形したのをやるのは、ホンマ嫌やな…。

草月の死亡確認後、
件救出部隊が残ってるようなら殲滅に手を貸す
数が多い様なら、拡散弾を使用し
少なそうであれば、武器に因る通常攻撃で討ち取る
一人として逃がしてはならない、回復より囲み、討ち果たす事を重視する
この際、氷の吐息は使用しない

救出部隊殲滅後、
持って来たの和服を羽織り返り血などを隠して目立たぬようにして
土蜘蛛方の草月対応班の人たちの案内などを受けながら女王の居る陣へ
その際、もし草月から伝言を預かっていれば一応伝える
女王へは…がんばって伝えるか
案内の元、陣に潜伏して女王討伐の加勢をする

女王戦
基本女王に手を出さず、近衛兵の相手をする
数が多い内は拡散弾で攻撃
「白燐の蝶よ、荒れ狂え!」
土蜘蛛には氷の吐息で攻撃
「…芯まで凍りつけ」
酷く怪我したり、怪我した奴が居たら白燐奏甲で回復する

女王が突っ込んで来たりしたら、全身全霊もって相手したるわ

新町・果(約束の地・b28478)
ゴーストなんだよね
古戦場も消さなきゃいけないんだよね
わかってる
けど…
かなんも、みんなが幸せになればいいと思う

どうしたらいい?
消したいのはただ、悲しいオモイなのに


(以下、表記は簡略化します)

私は草月班
服は木々の様な色の目立たない物に着替えておく

「おにーちゃん、こっちっ」
合流場所へと草月の手を引っ張るのは…
このまま古戦場の外に連れ出したい気もするからかな

草月が攻撃されて
まるで死んだ様に見える位ぼろぼろになって
もう自由に動けないなら…
庇う様に前に立つ
「おにーちゃんは死んだって思われればいいんだよね?
なら充分…もう充分だよ…」
…消えてしまう
彼が裏切り者とされても
八重紅を喪っても
…ごめんね
私、やっぱり死なせたくない
(但し、成功が最優先
誰の心も変えられないなら、退かされるのも覚悟の上で)


土蜘蛛側の人に合流したら
すぐにゴースト合体
雑霊弾改で後方から弱っている人を狙って攻撃
可能なら草月は着替えさせて、血塗れの着物を持って来ておいて
「草月おにーちゃんは…いないもん。もう、いないもん」
涙が流れても止めない侭、情報を流す

女王との戦いの時は
邪魔をされない様、私は雑霊弾で
使役は火を吹いたり近づく相手には突撃して、近衛兵を妨害
ただ、学園の誰かが危ない時には
「行って……――シオン!」
と、私よりその人を使役に護らせる


…無理じゃない
みんな幸せになれるよ
生きてさえ、いれば


・補足
今回に限り
一人称:私
使役:しーちゃん(シオン)

霧島・燐(神技流空手伝承者の内弟子・b29825)
■心情
最後であるな
やれることをやるであるよ
覚悟を決めるである

■行動
『草月班』に所属する
目立たない服装をして仲間とともに砦を出る
砦を出る前に残る仲間と会話できるようなら、妖狐を頼むようなことを言っておく
砦を出たら周りに注意しつつ移動
基本的には草月の行動を監視する
特に戦闘中は逃がさないように注意する
処断の時は覚悟を決める
「すまないである…草月」

■戦闘
女王戦以外はアビを使用せずに神秘攻撃にて攻撃する
HPが危なくなったら【雪だるまアーマー】を使用するが1回は残しておく
この戦闘で1人も逃がさないように注意
また一応この戦闘中に土蜘蛛勢には「草月は悪いけど…死んだである」といっておく
仲間との連携も心がける(声による相手の位置確認なども含め)

■女王戦
土蜘蛛依頼の草月対応班と合流後に土蜘蛛勢の衣装を入手できれば入手し、ソレを着て変装して潜入する
衣装の入手が不可能ならば、目立たないような衣装に着替える

戦闘を開始したらまずは接近しながら【雪だるまアーマー】を使用
その後は【氷の吐息奥義】で攻撃する
HPが半減以下になったら【雪だるまアーマー】で回復をする
アビリティが切れたら神秘攻撃にて攻撃を行う
行動は仲間と連携して行動を行う
「本当に我輩達は土蜘蛛とは縁があるである…」

■戦闘後
古戦場が崩壊するようなら即座に脱出する

水原・椎奈(陽だまりの姫君・b31817)
何が正しいかなんて、わからないよ。
でも、手を汚すのを怖がっちゃいけないんだよね。



草月班で行動。

「ついでに、土蜘蛛の様子を見てくることにするよ〜!」
草月の護送兼偵察として出立。事前に目立たない兵卒の衣服を求めます。

…躊躇わないわけじゃないよ。

草月を連れて、あらかじめ土蜘蛛陣営と打ち合わせた場所に移動。
香月の合図で草月を取り囲み、一思いに倒す。
「…気がついていたのかな〜?繰り返すこの世界のこと。…ごめんね」

合流した土蜘蛛陣営の誘導で鋏角衆・巫女部隊に近づき攻撃。
フランケンシュタインのゴーレムを前に出し、自分は後衛から雑霊弾使用。
傷ついた巫女を優先して攻撃。
ゴーレムのHPが装甲(防具HP)を割ったらゴースト治癒使用。
もし椎奈が攻撃を受け、回復が遅れそうなら、早めにゴースト合体。
ゴーレムは巫女戦ではアビリティ温存。椎奈が怒り・麻痺を受けた場合のみ祈りを捧げます。



「いっけー、ゴーレム!決着をつけようよ〜!」
巫女部隊を殲滅後、両陣営の衝突で混乱する様子を確認してから、
土蜘蛛陣営の仲間とともに女王近くに接近。土蜘蛛陣営の仲間の突撃と共に攻撃開始。
後衛に位置し、巫女部隊戦と同じ戦法で戦う。椎奈は対女王。ゴーレムは護衛に対しパワーナックルを使用。
その場の半数以上が戦闘不能で、血路を開いての撤退を提唱。



これでよかったのかな。解き放てるのかな。
…龍脈ゴーストを止めないと。
胸を痛めるのは、それからだよ〜。

釜崎・アイリーン(巡る音と流れる歌・b45268)
【作戦始動】
終局ですね。
龍脈ゴーストとは言え、仲良くなったあやめさん達と別れるのは寂しいですけど…。

これだけそっくりなのだから、あやめさんと武曲さんは何かの血筋的な繋がりがある。
そして、この記憶も武曲さんへと…

今は、そう祈りたいです。

【無血開城】
前々回、前回と同じく喋りも表情も穏やかに。

笠間の陣の能力者が砦を訪れるので、通すように主要人物を説得。
「笠間陣営の方がいらしてます。土蜘蛛に対する協力の申し出のようですが…。」

妖狐の皆も一堂に集めて。相手から条件を提示され
「土蜘蛛も本気で陣を敷いているようですね。」
「戦力差から見るに…笠間の助力なしでは防ぎ切るのは難しいでしょう。」
「癪ですが、背に腹は変えられません…この場から手を退くのも、一つの策でしょう。」

以上、主にあやめさんへの進言、説得。

撤退時には
「勿論、ただでこの砦を明け渡すのも勿体無い。彼らがここを有効活用できないよう、火をかけておきましょう。」
「仕掛けはできてます。皆さんは早く安全な所に避難を…。」
「命あればこそ…必ずこの地を取り戻すことが出来ますよ。」

事前に燭台、灯篭、提灯等火を光源にしている物から火を蝋燭や松明などに移して集め、
撤退時にそれらを燃えやすいもの(畳や柱とか藁の山等)にこっそり放つ。

戦闘発生時は、雪だるまアーマーで強化してから森王の槍攻撃を。

【任務完了】
この思い出は、永遠に私の心の中に。
願わくば、最良の結末を…。

氷室・まどか(小学生雪女・b51391)
妖狐班として行動

説得
あやめさんへ
『死んだらそこで終わりなんですよ・・生きている限り、何度だってやり直そうと思えばやり直せますっ・・だからここはっ!!!!』


逃走の前準備
火計の準備は他に任せ、時間の許す限り妖狐の手も借りて事前に色々小細工、進入予想経路に板に釘を刺したものを何個か置いたり、火計の影響を受けにくい見通しの悪い通路に足元の高さぐらいに縄を張っておいたりして、多少なりとも足止めに・・・・大勢で来るなら先頭の人の足が止まれば、人が雪崩のように倒せるかも?

逃走時
妖狐達が逃走を開始したら、決められた通り燃えやすい家屋などに火を放って逃走開始
砦の出口まで来たら、妖狐達を見送りつつ、しんがり役をつとめる


戦闘
間合いをとって射撃攻撃や光の槍などで対応、囲まれるような事があったら、吹雪の竜巻を使用する

HPが『2/3』ぐらいに減った場合、雪だるまアーマーを使用して自主回復


別れ際
仲良くなった妖狐の子
『お姉ちゃんは大丈夫だから・・』
最後なので、軽くモフり・・抱きしめます

優しく笑顔を浮かべ、秋桐君へ
『あやめさんの事が本当に大事なら、その背中を任せてもらえるぐらい強くならないと駄目ですよ・・心身ともに・・ね』
・・これ、私の実経験ですよ・・と、最後に付け加える

物思い
『あやめさんの生まれ変わりが武曲さんだとしたら・・きっと秋桐君の生まれ変わりもいて・・またきっと二人は巡り合って・・』
頬を赤くして何か嬉しそうに

土御門・香月(氷月に降る淡い蒼雪・b63217)
【心情】
あと一息……
複雑な、思いだ…………(ぐっと拳を握り締め)

【目的】妖狐を劣勢に落としいれ撤退させることで三つ巴の均衡を崩す。

【作戦】
僕は『草月班』として動きます。

班の作戦としては、まず草月様を連れて山を降り、此方へ向かってくる人影を確認次第すぐに彼を処断。(この時は苦しめないように一瞬で済ませたいところです……。)その後、足止めしている皆様に合流して巫女部隊と交戦、全滅を図ります。
古戦場崩壊時は皆様と避難。

僕としては、特に草月様を処断した後の、土蜘蛛の巫女部隊との戦闘で確り全滅させられるように頑張りたいところ。
独りでも逃げ延びられてしまったら作戦が狂ってきてしまうはずだから……。

まず、出発前に目立たない地味な服装に着替えます。アクセサリーとして持ってきている着物を上から纏っておけば、真っ白な着物の防具のままよりは目立たないんじゃないかな?
女王討伐戦に加勢する時、上手く混ざれるようにです。

草月様を処断した後の巫女部隊との戦闘は、
雪だるまアーマーで強化後、氷の吐息奥義で積極的に攻撃に出ます。
学園の能力者で総HP6割を切った人には治癒符改で回復を。
もし余裕があって女王との戦闘に加勢する時も基本的にはこれと同じで、アビリティが切れたら薙刀で神秘通常攻撃をします。

……戦闘中でも、ふいに妖狐の皆様のことが脳裏をよぎる。
短期間とはいえ一緒に語らい、笑いあった妖狐の皆様……本当に、すみません……。




<リプレイ>

●Decision
「この砦を……棄てろと?」
「死んだらそこで終わりなんですよ……」
「だが、この山を失う事は死も同然だ!」
「生きている限り、何度だってやり直そうと思えばやり直せますっ」
 砦内の一室でのこと。
 氷室・まどか(小学生雪女・b51391)は必死の思いであやめに訴えかけていた。
「死ぬ事が本意、か?」
 まどかの背後から桐嶋・千怜(萃禍・b01805)が音もなく歩み出る。
「皆で一丸となって戦えば……!」
「現状ここで応戦すれば2陣と事を構える形となり生き残るのは難しい」
 千怜たちは現在二手に分かれ、行動している。
 片方は砦に残り、そして片方は土蜘蛛の青年草月を『逃がす』ために砦から出立したところだった。
「それは幼く今を生きる者達も例外なく巻き込まれる。長、貴方の考えを聞きたい」
「長、私は……!」
 緊急事態という事もあり体を起こし上座に座る長老は、しばらく無言だった。
「……この状況、本来ならば」
 そしてようやく口を開いた長老に一同の視線が集まる。
「女子二人に言い寄られるとは……ふぉっふぉ、年老いてもなお、わしは幸せモンじゃの」
「こ、こんな時でもそのような冗談を……」
 まどかたちはそれはもうガクリと肩を落としてしまったが、すぐに居直って真面目に話をするように催促するのだった。
「心に余裕をもってこそ、じゃよ。ごほっ。さて……少しばかり様子を見たいところじゃが」
 軽く咳き込む長老がちらりと外を見た。
 同時に、外の警戒に当たっていた釜崎・アイリーン(巡る音と流れる歌・b45268)が小走りで部屋に入ってきた。
「何かあったのか?」
「笠間陣営の方がいらしてます。何やら申し出があるようですが……」
 どうやら、門前に笠間の使者が来ているようだ。
「そうも言っていられぬ、という事かの。千怜殿、まどか殿、それから愛燐殿」
「はい」
「あやめと共にお客人の話を聞いてもらえまいか」
「構わない、のですか?」
 今後を我々に託して良いのか。
 その意味を含んだ問に長老はイタズラっぽく笑った。
「あなた方ならわしよりも良い決断が下せるじゃろう。ごほっ」
「……わかりました」

 砦の玄関口である外門から少し離れた場所に3人の使者がいた。
 それぞれが簡単に、事務的な挨拶を交わすと「早速だが」と笠間側の一人が話を持ち出す。
「この砦を捨てて逃げるならば特に何もしねぇが……もし戦うってんだったら、誰だろうと手加減すんなってのが命令だ」
 海と名乗った男の言葉に、やはりと言うべきか。あやめが食いかかった。
「私たちに協力し土蜘蛛を退けるという話は嘘だったのか!? 卑劣な輩め!」
「俺は別にいいんだぜ? 蜘蛛と笠間……二つを敵に回して生き残れるってんなら見ものだからな」
「くっ! お前程度、この私が――」
「私共を手に掛けますか? 帰ってこなかった時も含め、こちらは全ての手筈は整っておりますので」
 嘲笑するかのような海に向かって剣を抜き放とうとしたあやめを、海と同行してきた要の言葉が制する。
「大人しく砦を明け渡していただければ、こちらも手出しはしないのです」
 それは妖狐のためでもあり、土蜘蛛を討ち滅ぼす目的は果たせるのだと物静かそうな少女、宝は言う。
「戯言を!」
 千怜たちに抑えられ、あやめは使者たちを睨みながらも身を引いた。
「……少し時間をもらえるか?」
「ええ、こちらとしても無闇に人の命を奪いたくはありませんから」
「あんまり遅ぇと蜘蛛が来やがるぜ」
「わかっています」
 千怜とアイリーン、まどかはあやめを連れ、一度砦の中へと戻る事にした。
 多くの妖狐が不安そうな、あるいは興味津々といった様子で少女たちのまわりに集まってきた。
「土蜘蛛も笠間も、本気で陣を敷いているようですね」
「ああ……」
「癪ですが、背に腹は変えられません……この場から手を退くのも、一つの策でしょう」
 アイリーンの言葉に苦い顔をするあやめは小さく震えていた。
「わかっている。わかっているんだ……。でも、だからこそ!」
「あやめさん……」
「お姉ちゃんたち……どうしたの?」
 彼女たちを囲う輪からとことこと中心に歩いてきたつけ耳を頭にのせた少女をまどかは優しく、しかししっかりと抱きとめる。
「大丈夫。お姉ちゃんは大丈夫だから……」
「むぎゅー。んん。だいじょう、ぶ?」
 その様子を見たあやめは心なしか落ち着いた表情になり、
「幼く今を生きる者達の為にも……か」
「決心は、つきましたか?」
 長老の孫娘の口は動かなかったが、その瞳に先程までにはなかった光が宿っていた。

●Destiny
 深い森が広がっていた。
 藪を切り分け、落ち葉を踏みしめながら一団は山を進む。
「おにーちゃん、こっちっ」
 新町・果(約束の地・b28478)は疲れきった顔をした青年の手を引き、歩く。
 何度も転びそうになりながらもその手は離さない。
「……どうして?」
 青年――草月は独り言のように呟いた。
 神農・撫子(おにしるべ・b13379)も同様に、誰かへ伝える言葉としてではないように言った。
「理由が必要ですの?」
「……」
「妖狐の皆様の願いを少しでも叶えたい、というところでしょうか」
 それは半分本当で、半分が嘘だと土御門・香月(氷月に降る淡い蒼雪・b63217)は思う。
 しばらく無言の時間が過ぎ、木々に囲まれた大きな岩まで辿り着いた頃。
「……気がついていたのかな〜?」
 草月と顔を合わすことなく、水原・椎奈(陽だまりの姫君・b31817)が言った。
「繰り返すこの世界のこと」
「……?」
「ごめんね」
 次の瞬間、草月は完全に包囲されていた。
「逃がすと言っていたであるが、すまないである……草月」
 そして気付く。
 霧島・燐(神技流空手伝承者の内弟子・b29825)の手にある薙刀の切先が自分に向けられている事を。それが彼だけでなく、取り囲む者全員がそうしている事も。
 薄々ながらも草月は感じ取っていたのだろうか。一瞬目を見張ったかと思えば、ただそれだけだった。
「……するべき事をするだけだから、謝らないよ」
「……」
 後ろ手に縛られていた草月はゆっくりと膝を付き赤金・茜(銅の鎧巫女・b13957)を見上げる。
「何か、言い残したい事、あるか? ……少しなら、聞いてやる」
 それは死の宣告も同然の質問。
 アイン・ヴァールハイト(コキュートス・b22629)の声は少しだけ、震えを抑えているように感じられた。
「――――」
 山を撫でるような穏やかな風が流れ、木々の葉や雑草をそよがせた。
 小さくも確かに口が動き、言葉が紡ぎ出され――
「!」
 確かに聞いた。
 そして伝える。
 約束した。

 暖かな液体が山の柔らかな土へと染みていく。
 鼓動に応じるように溢れる血は、徐々に弱々しく。そしてそれは『死』に近付いている事を誰の目にも明らかにしていた。
「待って!」
「果様……?」
 息を細く吐く草月と仲間たちの間に果が立ち塞がった。
「おにーちゃんは死んだって思われればいいんだよね? なら充分……もう充分だよ……」
「……。彼は、もう……」
「私、やっぱり死なせたくない!」
 果の瞳は涙で溢れかえりそうになっていた。
「ごめんね。ごめんね、おにーちゃん……」
 赤く染まった草月の手を優しく握り締めると、もう何も見えないであろう虚ろな目を果に向け。
「……っ…………」
「おにーちゃん? 草月おにーちゃん……?」
 少なくとも苦しんだ顔をしていない草月は、絶命した。
「今は、こうする事が最善でした。そして……まだ全てが終わったわけではありません」
 感情を押し殺したような顔の茜は果の背中に語りかけた。
「そうですの。もう間もなくここには」
 撫子が言いかけ、
「草月様!?」
 茂みをかき分け、言わんとしていた者たちが現れた。
 全速力で走って来たのだろう。土蜘蛛側に潜伏していたリコリスと恭真は息を荒くし、額に汗を浮かべながら状況を静観すると、
「草月は、死んだのか?」
「……はい。間違いなく」
 地面に横たわる草月を認めたリコリスは、軽く俯いて唇を噛んだ。
「できれば全部を話して、ごめんなさいしたかったのです……」
「……ごめんね」
 ようやく立ち上がった果は、リコリスにそれだけを言った。
「なあ、草月」
 冷たくなりつつある草月に歩み寄りながら恭真が口を開く。
「結局貴様は、『何』を守りたかったんだ?」
 目を閉じ、穏やかそうに眠る青年が答える事は二度となかった。
 恭真はしばらく草月を見つめてから木々の隙間から見える、違和感のある空を仰いだ。
 そう遠くない位置から大勢の気配が感じ取れる。
「……また戦わねばなりませんのね」
「ああ」
 撫子に恭真、その場にいる能力者たちは詠唱兵器を握る手に力を入れた。

●Desire
「すまない、愛燐。私は多くの友人の命を無下にしてしまうところだった」
「いえ、命あればこそ……ですから。必ずこの地を取り戻すことも出来ますよ」
「そうだな。死んでしまってはそれも叶わない」
 「ただでこの砦を明け渡すわけにはいかない」と砦に自ら火を放ち、山を下る途中。あやめはアイリーンに頭を下げ、感謝している旨を伝えた。
「アタイはあやめサマがいりゃー、どこでも楽しいけどな!」
「うんうん。あ、もちろんこの山も大好きだけどねー」
 まわりの妖狐たちはいつもと変わらない様子でわいわいと盛り上がっている。
 変に悲観的になるよりはいいかもしれないが……。
(「それがここの妖狐たちのいいところ、かな?」)
 周囲を警戒しながらも、アイリーンもそれにつられて笑っていた。
「良い仲間たちだな、あやめ」
「千怜か。子供たちは大丈夫だろうか」
「遠方に遊びに行くようなはしゃぎぶりで、まとめるのに苦労した意外は問題ないな」
「そうか……」
 詳しい事情を伝えていない子供や長老を含めた高齢の妖狐を先に誘導していた千怜が戻ってきていた。
「長……いや、お爺様に代わり礼を言いたい」
「礼なら」
 全てが終わってからにしてくれ。
 その言葉がすぐに出てこない。
「いや。どうやら戦火が広がっているようだからな、私たち3人は有事に備えて殿につきたいと思う」
「そういうことですので、一度ここでお別れです」
「なんだ水くさい。あまり戦力にはならないだろうが、一族の代表として私も――」
 千怜たちの宣言に身を乗り出そうとするあやめだが、それを制したのは千怜でもアイリーンでもなかった。

 砦の要所要所に燃えやすい物を配置したり、荷造りをしたりしている最中の事。
「秋桐君」
「きみは……まどか?」
 まだ少しほうけている秋桐をまどかが呼び止めた。
「あやめさんの事、大事に思っていますか?」
「そ、それは……。でも、僕は守れなかった……」
「それなら強くならないと。そう、本当に大事なら、その背中を任せてもらえるぐらい強くならないと駄目ですよ……心身ともに、ね」
「か、簡単に言ってくれないで欲しいな……」
「これ、私の実経験ですよ」
 まどかはどこか憂いた表情で秋桐を見つめた。
 強く、なりたい。
 少年は心の中でまどかの言葉を反芻し続けた。

「あやめ!」
「あ、秋桐?」
「……一緒に、いこう。あやめはみんなを守らないといけないし、それから」
 意表をつかれた様子のあやめに秋桐は畳み掛けるように続けた。
「あやめは、僕が……。僕も、一緒に戦うから……」
「……。ぷっ、あはは! わかった。秋桐が一人でというのも心許ないからな」
「秋桐君……」
 まどかはほっとしたような笑顔で秋桐を見た。
「では、後方は千怜たちに任せるとしよう。必ず戻ってくると約束してくれよ?」
「……。ああ、約束だ」
「よし! 私たちはまず先頭の様子を見にいくぞ、秋桐!」
「あ……うん!」
 元気よく駆け出そうとするあやめは一度振り返り、
「山を下りたらまた会おう!」
 笑顔で手を振っていった。
 果たせない約束だとは知らずに。
 古戦場から出るとどうなってしまうのかも知らずに――
「……行ってしまいましたね」
「そうですね。でも、最後は笑顔で本当によかった」
「私たちも最後まで露払いを頑張るとするか」
 残された3人は次第に大きくなってくる戦いの音に詠唱兵器を構えた。
 空の亀裂が目立ち始めた頃だった。

●Daily
「うっ、ううっ……」
「もう、全部終わったのです……だから」
 最後の雑霊弾を撃ち出し、そのままの格好で涙を流していた果の手をリコリスはそっと握った。
「あ……。しーちゃん?」
 シャーマンズゴースト・シャドウのシオンも心配したように果の側に寄り添っている。
「古戦場は、崩壊したのです」
「そっか……おわったんだね……」
 おぼろげに空の亀裂が拡大し、そこを起点に世界が割れていった記憶があった。
「消したかったのは……」
「?」
「悲しい『オモイ』だけだったのに……。これじゃ……」
 持ち出した草月が着ていた着物を手繰り寄せようとしたが、それも幻影と共に消えてしまったのだろうか。
「大丈夫ですの」
 果の後ろには撫子に茜、それから恭真がいた。
 撫子はモーラットピュアのマロウを胸に抱いたまま果に歩いていく。
「あの二人はたぶん……」
 草月は無念だったろうか。恨んでいただろうか。悲壮に満ちていただろうか。
 もう確認する術はないが、撫子たちはそうは思えなかった。
「草月の死に哀切はない。……どうせ全部幻想だ」
 言い切ってしまえばそれだけだが、恭真はその言葉をただ冷たく言い放ったわけではないようだった。
「幻は消え去るのがこの世の摂理というものだ」
「……わかってる、けど……」
「これが最良の結末かどうかはわかりませんが、彼らに対する思いが全て悲観的であるとも……決め付け、られません」
 下を向く茜の顔を窺う事はできない。
 幻とはいえ人と人を引き離し、そして命を奪ってしまった事に対する負の感情は簡単に拭い去る事は難しい。
「でも、妖狐の皆様は『生かす』事ができました」
「生かす……」
 戦闘が激しくなるにつれ、妖狐の砦側に戦線が拡大している事を知り、自然と『抑え』と『攻め』の2部隊に分かれてしまい、その時離れ離れになってしまったアインたちを探しに出ていた香月が戻ってきた。
「どうでした?」
「皆様怪我はしていますが無事のようです。アイリーン様たちも恐らくこの近くにいると思います」
「……生きてさえ、いれば」
 果は小さく呟くと、涙を拭った。

 詠唱兵器を下ろし、まどかは安堵の息を吐いていた。
「幻影の古戦場、消えたようですね」
「そうらしい」
 大挙していた土蜘蛛や笠間の軍勢はそれこそ幻と化し、触れる空気は馴染み深く感じられ、『元の世界』に戻ってきた実感を煽った。
「生きていれば、約束も……」
 アイリーンはあやめたちが去っていった方を眺めていた。
「泡沫と消えゆく身なれど、此処に居た証は……確かに」
 そして千怜は静かに目を閉じた。
「――あ、あれは!」
 遠くに見知った顔を見つけたアイリーンは、千怜とまどかと共に歩き出した。
 幻影は消え、残ったものはかけがえのない――


マスター:黒柴好人 紹介ページ
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知 的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2009/12/09
得票数:ハートフル1 
冒険結果:成功!
重傷者:アイン・ヴァールハイト(コキュートス・b22629)  霧島・燐(神技流空手伝承者の内弟子・b29825)  水原・椎奈(陽だまりの姫君・b31817) 
死亡者:なし
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