【社説】泰安原油流出事故から2年、進まぬ補償問題
忠清南道泰安半島沖で、フーベイ・スピリット号による衝突・原油流出事故が起きてから、7日でまる2年となる。この事故で200キロにおよぶ海岸線が油で激しく汚染されたが、2年が過ぎた今、海や海岸は奇跡的に以前の姿をほぼ取り戻した。述べ123万人のボランティアや住民が汗を流し、油を除去する作業に取り組んできたからだ。
しかし、事故で被害を受けた住民の悩みと苦悩は今も続いている。2万人以上が損害賠償請求を行ったが、賠償責任を負う国際油濁補償基金(IOPC)はこれまで138件、22億3600万ウォン(現在のレートで約1億7200万円、以下同)しか補償の支払いに応じていない。請求件数があまりにも多く、また査定作業も遅れている上に、IOPCが補償の基準を複雑に設定しているためだ。
被害状況の査定が終了した300件以上のうち、110件ほどは「被害が十分に立証されていない」として補償が認められなかった。IOPCは今年10月、無免許・無許可の漁業従事者に対しては補償を行わない方針を定めたため、当人たちは補償を受ける道が閉ざされてしまった。また、韓国政府が操業再開を認めた昨年4月以前に操業を再開したという理由で、補償が拒否されたケースも数百件以上に上る。海外では油が流出する事故が起こって2年が過ぎると、通常は請求額の80%は補償が行われるという。その話を聞いて、補償されるとの期待から借金をし、早期に操業を再開した住民たちは、生活費もまかなえず今も苦しんでいる。
泰安の住民が申告した被害総額は1兆6840億ウォン(約1298億円)に上るが、IOPCが算定した被害総額は6150億ウォン(約475億円)だった。さらにIOPCは補償の限度枠を設け、その額を3150億ウォン(約243億円)に設定した。住民たちはIOPCから補償を受けられない分については、タンカー所有会社、タンカーと衝突したクレーン船が所属するサムスン重工業、韓国政府を相手取って訴訟を起こす計画だというが、この法的手続きに一体どれだけの時間がかかるのかさえ分からない。
1997年に島根県沖合でロシア船籍のタンカー、ナホトカ号が重油流出事故を起こした際には、賠償請求額の73%が支払われ、99年にフランスのエリカ号が大西洋沿岸で起こした重油流出事故では、同じく60%が支払われた。日仏両国政府が被害住民とIOPCとの交渉で積極的に仲介したからだ。韓国政府は昨年、IOPCの補償限度額を超える部分については政府が補償を行うという特別法を制定したが、IOPCとの交渉が終わらなければ、この法律を活用することはできない。そのため、被害を受けた住民たちは、この特別法の恩恵をいつになったら受けられるのか、まったく予想できない状況にある。
政府は今年7月、この事故で被害を受けたおよそ6473平方キロにわたる地域を、特別海洋環境復元地域に指定した。今後10年かけて25の事業を行い、環境をよみがえらせるという基本計画も、最近になって定めた。泰安は現在、わずか1回の不注意が引き起こす自然破壊と、それによる住民の精神的・経済的傷を癒すのに、いかに多くの時間と莫大(ばくだい)な費用が必要かを示す教訓の地となっている。
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