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きょうの社説 2009年12月9日
◎「企業市民」の案内所 金沢の魅力アップに貢献
宅配便最大手のヤマト運輸(東京)が、金沢市役所並びのビルに開設した「観光案内所
」は、通常業務に加えて、観光客へのサービス向上と地元特産品の販路拡大などを図る新たな取り組みである。金沢の魅力アップに貢献することを期待したい。ヤマト運輸金沢主管支店は、金沢経済同友会が提唱した「企業市民宣言の会」に参加し ており、今回の「地域貢献の思いを形にした」という姿勢は評価される。経済合理性を追い求めるだけでなく、地域のために協力、貢献する企業は、地元からの支持も得られるはずである。北陸新幹線金沢開業に向けて、郷土がより魅力的になるためには「企業市民」の役割は大きい。さらに多くの企業がそれぞれに実践できる分野で地域貢献に取り組んでもらいたい。 今回、ヤマト運輸が全国で初めて展開する「クロネコほっとステーション」の第1弾と なる「金沢香林坊センター」は、独自サービスとして手荷物の一時預かりや「荷主への恩返し」として石川の特産品紹介などを行う。英語が堪能な職員も常駐して外国人観光客にも応対し、職員は来年以降の金沢検定も受験するという。 兼六園や金沢城公園、金沢21世紀美術館に近い金沢市の中心部だけに観光客への利便 性向上と特産品のPR効果がかなり見込めそうである。従来の集配送業務だけの事業所にはない「石川のアンテナショップ」の機能を持ち、ビジネスチャンスが生まれる可能性も高い。 これまで金沢の観光案内機能は金沢駅に集中していたが、新たな発想による都心部での 機能充実は、もてなしの幅を広げ、観光客の満足度を高めるうえでも望ましい。観光だけにとどまらず、各企業が知恵を絞った地域貢献を実践していけば、地域の活力をさらに高めることになろう。 「企業市民」の取り組みは、文化・スポーツ活動の支援や地域の環境活動など着実に広 がってきている。金沢市の南町と上堤町(かみつつみちょう)というビジネス街の旧町名復活にあたっても、「企業市民」意識の高まりが追い風となった。「まちづくり」に欠かせぬ「企業市民」の活動を着実に重ねていきたい。
◎経済対策を閣議決定 住宅エコポイントに期待
鳩山内閣が閣議決定した総額7.2兆円の経済対策で、期待したいのは、断熱効果の高
い住宅取得を補助する「住宅版エコポイント制度」の新設である。今回、延長が決まった省エネ家電の「エコポイント制度」と「エコカー助成」は、自動車や家電業界の業績改善に大きく貢献した。住宅建設をうまく後押しできれば、経済波及効果は自動車や家電の比ではなく、幅広い分野で需要創出効果を生み出すだろう。個人金融資産がどれだけあろうと、ただ抱え込んでいるだけでは景気回復に寄与しない 。貯蓄の一部を消費に回してこそ、生産活動が活発化して新規の需要が生まれ、経済は活性化する。新たな住宅支援策には、借入期間最長35年の当初10年について、金利を1%引き下げる住宅ローン補助や贈与税の非課税枠拡大も検討されている。ポイント制度をより魅力的なものにして、省エネルギーのエコ住宅ブームをつくり出したい。 現在、検討されている住宅版エコポイントは、2010年中の着工を条件に、省エネ対 応の住宅新築や、断熱材、二重サッシなどを使った改築を行った場合、費用などに応じてポイントがつき、商品やサービスと交換できる。 政府は、2010年度税制改正で、子どもの住宅取得を親が支援する際の贈与税の非課 税枠を拡大する方針を固めている。高齢者に偏在している金融資産を子や孫の世代に移転しやすくし、住宅投資を促すのが狙いである。 デフレ不況下で、消費を刺激するのは簡単ではないが、国民全体で見れば、貯蓄は十分 過ぎるほどあるのだから、「消費をすれば得をする」仕組みは理にかなっている。エコカー助成や家電のエコポイント制度が成功した理由もそこにある。住宅版エコポイントを使い勝手のよいものにし、贈与税の非課税枠も大胆に広げてほしい。 政府の一部には、非課税枠拡大方針を「金持ち優遇」などと反対する声もあるが、現行 の特例枠500万円では住宅購入のインセンティブ(動機付け)にはならない。国土交通省が要求している2000万円程度への拡大を求めたい。
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