不吉な噂は本当なのか? 京王電鉄の事故を呼ぶタタリ (1/2)
通勤・通学の要として利用されている、京王電鉄の明大前駅。そんな明大前駅構内に以前、“湖”があったのをご存知だろうか。その名は「無事湖(むじこ)」。しかし駅ビル開発に伴い、その無事故は取り壊され、以来「事故が増えた」という噂が流れている。
東京都世田谷区の京王電鉄・明大前駅。京王本線と京王井の頭線の乗換駅となっているため、通勤・通学の要として利用されている駅だ。そんな明大前駅構内に以前、“湖”があったことをご存じだろうか。その名は「無事湖(むじこ)」。京王電鉄の「無事故」を祈願して命名されたものとみられ、実際は湖と呼ぶにはほど遠い二畳程度の大きさの人工池だった。それが平成18年の駅ビル開発に伴い、取り壊されてしまった。以来、「事故が増えた」と不吉なうわさが流れているというのだが……。(宮原啓彰)
知る人ぞ知る“都会のオアシス”
複数の京王線利用者によると、伝説の「無事湖」は、明大前駅の井の頭線3番線ホームのやや吉祥寺方面よりにあったという。人工湖でありながら茂みに囲まれ、乗り換え客らの雑踏の中にひっそりとたたずむ姿に心癒される乗客も少なくなかった。
「子どものころから駅を利用していた。電車の待ち時間に池に住む金魚やアメンボなどの生き物をみるのが楽しみだった」と振り返るのは、都内の女性会社員(30)。まさに、知る人ぞ知る“都会のオアシス”だったようだ。
一方で、その存在自体に謎めいたところもある。
無事湖について、京王電鉄広報は「かなり昔からあったのは事実ですが、資料が既に廃棄され、名前の由来を含めていつごろから存在したのかさえ分かりません。当時の関係者も見つからない」と打ち明ける。
実際、知名度はそれほど高くなく、明大前駅の売店の女性店員も「(無事湖は)二畳ほどの広さだった……」とおぼろげな記憶しかない様子。学生時代に同駅を利用していた明治大学出身の男性会社員(36)でさえ、「知らないです。池なんてどこにあったけ?」と首をかしげていた。
ところが、この無事湖、18年に始まった駅ビル工事により取り壊されてしまう。女性会社員は不吉なうわさについて口を開く。「無事湖をなくしてから京王電車の事故が増えるようになったという話があるんです――」
事故増加の統計なし
ネット上などでも語られる「無事湖のたたり」の根拠となっているのは、無事湖が取り壊されてから京王電鉄で立て続けに起こったとされる事故だ。同年4月、踏切で乗用車が衝突する死亡事故が起き、半月後にはオーバーランにより乗客3人がけが。11月にも踏切で深夜に起きた乗用車との衝突事故により電車が脱線してしまった。
この「無事湖のたたり」について、乗客などから京王電鉄にも問い合わせが来ているという。「無事湖の取り壊し以降、『事故が増えているのではないか』などの電話はあります」(京王電鉄広報)
しかし、実際に事故は増えているのだろうか。「事故が増えたという統計的な事実はないので、何とも……」(同)
明大前駅近くの飲食店経営の地元女性(64)に聞いたところ、「(自分の)子供が生まれたころにあったから、少なくても40年以上前からあったはず。小さい子供のためにはあった方がよかった。事故は増えた印象はないね」と答えていた。
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