先日行われた内藤、亀田戦だが、どうもスッキリしない。
私の採点では115−113で亀田選手だったが、10ラウンドまではドローで11、12ラウンドを亀田選手が連取してギリギリ逃げ切った、という印象だったが、ジャッジの採点は4ポイント差が一人、そしてどこを見ていたのか6ポイント差のジャッジが二人もいた。
翌日のスポーツ新聞には亀田選手の「完勝」「大差の判定勝ち」等と書かれてあったが、この人達も一体どこを見ていたのだろうか?ジャッジペーパーの結果だけを金科玉条にして試合内容を判断しているとしか思えない。
WBCは4ラウンドと8ラウンドに採点を公開するので、WBAに比べてはるかに透明性があり好感が持てるが、そのぶん採点基準の第一番目であり具体的で説得力のある「有効なクリーンヒット」にこだわり過ぎている感があり、採点基準の第二番目であり抽象的な「攻勢」がまったく評価されていない。
これは由々しき事態ではないのだろうか?
今回の試合結果を知り私は約2年前に行われた同じWBCの大一番、オスカー・デラホーヤとフロイド・メイウェザーとの一戦を思い出した。
あの試合は終始攻勢を取り続けたデラホーヤの勝ちだと私は思ったが、ジャッジ達は手数は圧倒的に少ないながらも時折り効果的なカウンターを当てたメイウェザーを支持した。
危険をかえりみずに自ら試合を作って行こうとするボクサーより、安全地帯から相手のスキを狙うボクサーが評価されるWBCの風潮は間違っているとしか思えない。
ボクサーやセコンド、そして日本のジャッジ達がクリーンヒット原理主義に冒されて行ったら、果たしてボクシングは面白くなるだろうか?
もし今回の試合が「攻勢」を評価する日本人ジャッジだけだったとしたら、勝敗はまったく逆になってただろう。
そうなった場合、記者や元世界チャンピオン達は内藤選手の闘志を褒め称え、亀田選手の戦法を挑戦者としては消極的過ぎると批判するのだろうから、まったくいい加減なものだ。
更に私をスッキリさせないものは亀田選手の闘い方だ。
戦前私は亀田選手の勝ちを予想していたが、それは亀田選手がフットワークとジャブを多用した積極的なアウトボクシングを展開すると思っていたからだ。
亀田選手は戦前に「3ラウンドKO宣言」を堂々と公言した。
タフな内藤選手を3ラウンドで倒せるとは到底思えなかったのでハッタリだとは思っていたが、ひょっとしたら勘違いしてて本当に倒す気で向かって行くかもしれないと、淡い期待を抱いたが、1ラウンド早々からやたらにバックステップを踏む亀田選手の闘いぶりを見て落胆した。
予告した3ラウンドになってもその消極的な闘い方は変わらず最初からKO勝ちを狙ってなかった事は明白だ。
しかも後日放映された番組の中で亀田選手本人が「3ラウンドKOとか言ってるけど、絶対いかへんよ。今回の戦い方は俺はアウトボクシングで行くから」と戦法を恥じる事無く暴露しているのだから驚いた。
亀田選手のこの行為は、亀田選手のKO宣言を信じて高いチケットを買い時間を割いて寒風吹きすさぶ中、埼玉まで足を運んだボクシングファンへの完全な裏切り行為ではないのか?
試合後観客にお詫びの一言でもあってしかるべきだが、「オヤジー!どんなもんじゃい!」と下品に絶叫し父親の存在を世間にアピールする事に余念がなかった。
亀田選手は「ボクシング界を盛り上げて行きたい」と殊勝な事をよく口にするが、ボクシング人気復活の為に必要な物は、試合前の派手なパフォーマンスなんかではなく、リング上での死力を尽くした闘い、それしかないはずだ。
一度や二度倒されても、最後には「打ち勝つ!」それぐらいの覚悟を持って日本中が注目した今回の大一番に臨んでもらいたかった。
試合後に余力を残した計算通りの闘いでは、観る者に決して真の感動を与えはしない。
戦前亀田選手は試合前のパフォーマンスに参加しない40戦のキャリアを持つプロ中のプロである内藤選手に対してあろうことか「プロ失格」の烙印を押したが、試合前は派手な記事が欲しいマスコミを喜ばす事だけに執心し、肝心な試合になれば身銭を切って会場に来た観客の期待を裏切るという亀田選手の方がよっぽどプロとして失格だろう。
更に亀田選手は「フェアな闘いをする」とも公言したが、2ラウンドのクリンチ間際に内藤選手の首に肘を押し付けた以外は目立った反則行為はなかった。その点は「フェアな闘い」だったが、しかしKO予告をしておきながらの判定狙いの闘い方は男としてまったくフェアではなかった。
今後対戦が確実視されているポンサクレック戦でも、今回と同じ様に試合前にKOラウンドを予告しておきながら、判定狙いの消極的な闘い方をし、試合後自分の覚悟の無さを棚に上げて「勝ちに徹した」等と愚にもつかぬ言い訳を繰り返そうものなら、世界チャンピオンとは名ばかりの、ただの狼少年へと、成り下がるだろう・・・・・・。
こう書き上げ、後は編集者の方に送信するだけの段になった時、ふと、ある疑問が浮かんだ。
なぜ、今回の試合は日本人同士の世界戦なのに、日本人ジャッジが一人もいないのか?
通常日本人同士の世界戦の場合、渡航費用と滞在費を浮かせる為、アジア圏内か日本国内のジャッジが登用されるのがボクシング界の慣例だったはずだ・・・・・。
早速ボクシング関係者の知人に連絡し、内藤選手の防衛戦で同じく日本人対決だった清水智信戦のジャッジ構成を聞く。
タイから一人、そしてお隣り韓国からは二人招かれている。
日本人ジャッジはいない。どうやら私の考え過ぎだったようだ・・・・・。
そう思ったが、念の為に同じWBCの世界戦で近年行われた日本の選手同士の対戦、徳山昌守対川嶋勝重戦のジャッジ構成を調べる。
いた。日本人ジャッジが一人。
ここまで来て、またある疑問が浮かんだ。
なぜ亀田選手はここ1,2年の間頻繁にメキシコに行くようになったのか?
WBAのライトフライ級王座に就く前に亀田選手がメキシコに修行に行ったとか、亀田選手がメキシカンボクサーフリークだった、なんて話しは聞いた事がない。
なぜ、急にメキシコに通い詰めたのか?
スパーリングパートナーを求めて?
いや、メキシコに行く途中にあるロサンゼルスに行けば、アメリカンスタイルのスピーディーなボクシングをするメキシカンはけっこういる。
空気の薄いメキシコで心肺機能を高める為?
いや、そんな効果は日本に帰って来て10日もすれば消えてなくなる。
ではなぜ?
浮かんで来た答えは一つ。
WBCのドン、ホセ・スレイマン会長と亀田選手の癒着だ。
この結論が出た時、ゾクッと背中に悪寒が走った。
メキシコはWBCの総本山であり、亀田選手が滞在していたメキシコシティーにはWBCの本部がある。
豪勢な手土産を持ってスレイマン会長を表敬訪問する・・・・・。
それぐらいの事はしたたかな亀田選手なら朝飯前だろう。
メキシコを訪れる度にスレイマン会長と接触し親交を深める・・・・・。
そしてスレイマン会長の覚えめでたくなり、今回の試合に相成った・・・・・。
あの12ラウンドの拮抗した試合で終始攻勢を取り続けた内藤選手が3ポイントしか取れず、後手にまわっていた挑戦者である亀田選手が9ポイントも与えられるなんて、ジャッジ達に最初からなんらかの意図がない限りありえない採点だ。
もう一度内藤、亀田戦のジャッジ構成を見てみる。
アメリカ、ベルギー、チュニジア。
アジア圏内からは一人も呼ばれていない。
世界地図を広げる。
どの国も日本までの距離はかなりある。これはおかしい。
しかもベルギーとチュニジアからは大西洋をひとっ飛びで簡単にメキシコに渡れる。
アメリカは言わずもがなだ。
どの国も試合開催地である日本からは遠く、メキシコには近い。
彼ら3人のジャッジ達は今回の試合前にメキシコに呼び出され、スレイマン会長の密命を帯びて来日した・・・・・・。
「まさか・・・・。考え過ぎだろ・・・・・」
そんな思いを「いや、たぶんそうだろう・・・・・」
そんな言葉が打ち消した・・・・・。
虚構にまみれた男の、よく出来た物語は、これからも続いて行く・・・・・・。 |