「ETCの決済 カードは疑問」
昨年9月18日の朝日新聞朝刊「声」の蘭に私の投稿が掲載されました。
高速道路の自動料金収受システム(ETC)利用の際、通行料金がクレジットカードによって行われることに理不尽さを感じる。
日本道路公団によると、ETCカードの発行は、通常のクレジットカードと同様にカード会社の審査があり、ETCカードが発行されることを確認してから車載器の準備をするように、とある。
確かに現状でも、多くの高速道路の料金支払いはクレジットカードで済ますことが可能だが、これは利用者の任意による支払い方法の選択であり、ETC普及の理念とは関係ない。
クレジットは「付け払い」である。滞納債務者が激増していると聞くが、小さな付け払いの集積が多重債務者を生み出すきっかけになっている。国民共有の財産である道路を利用するため、クレジット会社の審査を要求され、クレジットにより道路使用料を請求されるシステムが、国の政策として正しいのだろうか。
政府は日本国民の借金に対する感覚を麻痺(まひ)させないためにも、こうした問題に対しても全力で取り組むべきだ。国民は「後に付けがまわってきた」といくら悔やんでもその時はもう遅いのだ。
<転載終了>
「構造改革」のターゲットの1つであった道路公団が今月1日に民営化されました。はたして国民にとって何のメリットがあるのでしょうか。
元民営化委員の猪瀬直樹氏は「夜間の通行料金が下がった』「サービスエリアからの入退出が可能になった」など「小さなメリット」についてのみ言及しています。(談合防止や天下り禁止などは、民営化には関係の無い「当たり前」のことです)
国土交通省はETC(高速道路の自動料金収受システム)の利用率を、昨年9月の2割から2006年までに7割に引き上げる目標を掲げています。ETCは料金所での人件費の引き下げや渋滞緩和の効果が高いとされていますが、一方では、ETCを利用するために車載器を購入しなくてはならないことへの不満や、二輪車は利用できないことへの不公平さを指摘する声もあがっています。
私はETC普及へは、全く別の視点から異議を唱えたいと思います。それはETCを利用した通行料の決済が、すべてクレジットカードによって行われることの理不尽さです。
旧日本道路公団のホームページには、ETC利用上の注意事項が掲載されていました。「ETCカードの発行は、通常のクレジットカードと同様にカード会社の審査等があります。必ず、ETCカードが発行されることを確認して、車載器の準備をしてください。」「クレジットカード会社からの請求時期については、クレジットカード会社にお問い合わせください。」
私達国民は、全国民共有の財産である「道路」を利用するために、クレジット会社からの審査を要求され、公団はクレジット会社に手数料を支払い、クレジット会社から国民に道路使用料を請求させるというシステムの構築が、国の政策として本当に正しかったのでしょうか。
私には到底そうは思えません。
同じ税金、同じ通行料を何十年と払い続けてきた利用者(国民)でも通行料が割引されるのは「ETCカード所持者」だけです。クレジットカードを持たない人、持てない人は割引の対象になりません。これは一種の「差別」と言えないでしょうか。
ディズニーランドでは「全てのゲストをVIP(とても大切な人)と考えなさい」と教えています。
このブログはホスピタリティ・ブログです。ホスピタリティの観点からこの問題を考えたとき、日本政府とディズニーランド間の「人」に対する考え方の違いに驚かされます。なぜならばホスピタリティの根幹は、困っている人や「ヘルプ」を求めている人に対する「心からの手助けをしたいという気持ち」にほかならないからです。
ディズニーランドはパーク内で何らかの援助を求めている人には最大限の手助けをします。日本政府はクレジットカードを持てない人やアンチクレジット(クレジット嫌い)の人のことなど全く考えておりません。本当に困ったことです。
さらに付け加えるべき大問題は、ETCカードはクレジットカードであり、クレジットは付け払いであるということです。当たり前ですが返済の義務を伴う負債なのです。
個人の返済能力を超えクレジット会社やサラ金会社から複数の借金をしている多重債務者は、全国に150万人以上と言われています。2000年から2004年の5年間に自己破産した人の総数は全国で100万人に近い数字になっています。
両者を単純合計すると250万人です。
日本の労働者数を6500万人とすると3,8%、労働者の26人に1人が多重債務者か自己破産者ということになります。(専業主婦や年金生活者が含まれる数字ではありませんが)
日本の総世帯数を4700万軒として計算すると5,3%、約20軒中1軒に借金地獄に陥っている人が生活している計算になります。
小さな付け払いの集積が多重債務者を生み出すきっかけになっているのは間違いありません。
水道料金など公共料金のクレジット払いも検討されているそうです。
ETC普及が付け払い社会、借金社会へ加速させていくことにならないか・・・
不安の念を禁じえません。
行き過ぎた市場経済至上主義による弱者と強者の二極化が進む中、クレジットも持てない国民は有料道路を使うな、とも受けとれるこの施策を鑑みたとき、これが国民の圧倒的な支持を得た「改革」と本当に言えるのでしょうか。
何回も繰り返しますが、これが本当に正しい姿でしょうか。
私には到底そうは思えないのです。
2005年10月05日