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【社会】

認知偽装の子に日本国籍 「父親は日本人」 比人女再逮捕へ

2009年12月8日 朝刊

 フィリピン人男性との間に生まれた子どもの父親を別の日本人と偽って日本国籍を不正に取得していたとして、愛知県警国際捜査課と中署は8日にも、フィリピン人の女=入管難民法違反容疑で逮捕=を国籍法違反(うその国籍取得届け)の疑いで、再逮捕する。県警は背後に日本国籍の不正取得をあっせんする組織があるとみている。

 国籍法は、日本人の父と外国人の母の間に生まれた子どもが日本国籍を得る際、「両親の婚姻が必要」としていた規定を、1月に「父の認知があれば得られる」へ緩和する形で改正しており、その点が悪用された。法務省によると、うその国籍取得届けが逮捕容疑となるのは全国初という。

 捜査関係者によると、女はフィリピン人との間に生まれた子どもを、日本人の男に「自分の子ども」とうその認知届を提出させた上、法務局で認知届を添付して日本国籍の取得を届け出た疑いが持たれている。県警は、日本人の男の関与も調べる。

 入国管理局によると、子どもが日本国籍を持てば、親は「定住者」として1〜3年の在留資格を得ることができる。

 女が、日本で仕事を得るための在留資格を得る目的で企てたとみられる。

◆届け出のみで要件

 今回の犯罪の舞台となったのは、未婚の日本人男性と外国人女性の間に生まれた子について、父親が認知すれば国籍を取得できるとした「改正国籍法」。日本人男性と外国人女性の間に生まれた子は「両親の結婚があって初めて日本国籍が得られる」とする規定について、最高裁が昨年6月、「法の下の平等に反する」と違憲の判決を出したのがきっかけだった。

 改正後、10月末までに403人の婚外子が日本国籍を得ており、婚外子救済について一定の成果を出している。一方で、今回のような不正は改正の議論の中で、すでに不安視されていた。

 子どもが国籍を得る際の条件である「父親の認知」は、市町村へ届け出るだけで満たせる。認知してくれる日本人男性がいれば、親は日本での在留資格を得ることができる。

 改正案が可決された際、「DNA鑑定など科学的確認方法の導入の検討」の付帯決議も採択された。法務省はDNA鑑定について「民法の家族法で、日本人が子どもを認知する際にも要件とはなっていない。実施するには費用もかかる」ことから見送った。

 今回の事件では、これを悪用したブローカーの影も見え隠れしている。改正国籍法では、虚偽の届け出をした者には1年以下の懲役か20万円以下の罰金が科せられるが、手続き方法などについて再び議論する時が来ている。

 

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