バイオ燃料の生産効率2倍
京都大学と三重大学の研究グループは住友商事の協力を得て、稲わらや木くずの植物繊維をほぼ残らず分解し、バイオ燃料のもとになる糖に変えられる細菌を見つけた。一部の繊維成分しか分解できなかった従来法に比べ、バイオ燃料の生産量を倍増できる可能性がある。細菌のゲノム(全遺伝情報)は解読済みで、遺伝子の働きを詳しく調べて分解効率をさらに高める方法を探る。
成果は横浜市で開く日本分子生物学会で12日、発表する。
バイオ燃料をつくるには植物繊維を分解し糖にしたうえで、発酵させアルコールに変える。繊維にはセルロースとヘミセルロースの2種があるが、両方を同時に糖にする有効な方法はなかった。
京大の植田教授らは木くずなどに含まれる「クロストリジウム属菌」の一種が2種類の繊維成分を同時に分解することを見つけた。既知の菌だが、繊維の優れた分解力を持つことを初めて見つけた。
細かく砕いた稲わらを交ぜた水溶液に菌を入れると、約10日で完全に糖に変わった。この糖を発酵させてバイオエタノールを作れば、100キログラムの稲わらから約30リットルのエタノールが得られる計算になるという。従来技術では半分以下だった。
現在使われている細菌でヘミセルトースを分解するには化学薬品などで前処理する必要がある。廃液処理もあり低コストが難しいため、主にセルロースしか使えず無駄が多かった。研究グループは菌のゲノムデータをもとにヘミセルロースの分解に関与する複数の遺伝子とその機能を解明し、特許出願した。今後は植物の種類に合わせて最適な遺伝子の組み合わせを調べ、分解効率の向上につなげる。遺伝子をアルコール発酵に使う酵母に組み込み、植物繊維からエタノールまで一気に作る手法の実現を目指す。
繊維分の多い茎や廃棄物など非食料を原料に使うバイオ燃料の製造法開発には、米国なども国をあげて取り組んでいる。