社説

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

社説:COP15開幕 実効力ある合意目指せ

 京都議定書以降(ポスト京都)の世界をどう方向付けるか。温暖化対策の今後を占う「気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」が、デンマークのコペンハーゲンで今日開幕する。

 当初めざしていた法的拘束力のある新議定書の採択は困難な状況だが、地球の気候安定に向けた歩みを止めるわけにはいかない。確実に議論を前進させ、実際に温室効果ガス削減に結びつく政治合意をまとめることが欠かせない。

 合意に不可欠なのは、京都議定書で削減義務を負っていない米国や中国、インドなどの大量排出国も責任を果たす枠組みだ。

 最近まで、米中印がCOP15で中期目標を示すかどうかは微妙だった。しかし、先月末から相次いで削減の数値目標を公表し、風向きは変化している。

 ただし、これらの数値は十分ではない。「05年比17%減」という米国の目標は、90年比では数%に過ぎない。「90年比25%減」を掲げる日本や、「90年比20~30%減」の欧州連合(EU)に比べ見劣りがする。

 中国やインドの数値は国内総生産(GDP)当たりで示されている。エネルギー効率は高まるが、経済成長に応じて総排出量は増える。あまり甘い数値では意味がない。

 「25%減」という日本の数値が「突出して高い」と懸念する声もある。しかし、高い目標は他国から削減努力の上乗せを引き出したり、新たな制度設計を提案したりできる材料でもあるはずだ。

 「25%減」の条件が「すべての主要国による意欲的な目標の合意」である以上、それを実現すべく他国に働きかけるべきだ。その際には、説得力のある「公平性」のデータを持って臨まなくてはならない。

 省エネを進めてきた日本では、二酸化炭素をさらに削減するための費用が高いことは確かだ。しかし、国際交渉では1人当たりの排出量などさまざまな公平性の指標がある。削減費用だけでは説得できない。

 政治合意文書には、2050年までの長期目標や、先進国全体の中期削減目標も盛り込む必要がある。実際に削減できているか、測定・検証するための仕組み作りも重要だ。

 途上国が削減に参加するためには、先進国からの資金提供が欠かせない。COP15では、途上国の排出抑制を継続的に支える基金構築が必要で、日本の役割も重要だ。

 国際交渉は各国の思惑がぶつかりあう場だが、化石燃料の大量消費に歯止めをかける必要性は誰も否定できないはずだ。近い将来の新議定書採択に向け、国同士の対立を超えて、合意点を見いだしたい。

毎日新聞 2009年12月7日 2時40分

 

PR情報

社説 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド