漢方の保険外し 事業仕分けの危うさが見えた(12月7日付・読売社説)行政刷新会議による事業仕分けの結果に、医療関係者から怒りの声が上がっている。 特に、漢方薬にかかわる医師や患者たち、新生児医療にたずさわる学会などの反発が強い。 先の事業仕分けで、漢方薬を保険適用から外し、NICU(新生児集中治療室)への支援を含む救急・周産期対策の補助金は削減するという判定が出たためだ。 日本東洋医学会など漢方関係団体は約27万人の反対署名を厚生労働省に提出した。日本未熟児新生児学会も抗議声明を出した。 関係者の憤りは、仕分けの結論だけでなく、そこに至る手法にも向けられている。 漢方薬が関係した仕分けは「後発品のある先発品などの薬価の見直し」という題で行われた。 そこでの主題は、特許の切れた先発薬の値段を下げることで医療費の節減を図れというものだ。ところが予算を切りたい財務省からは、さらに複数の論点を提起した「説明シート」が配られた。 その中に「類似薬が市販されている薬は保険適用外としてはどうか」との論点が示され、事例として「湿布薬、うがい薬、漢方薬など」と記されていた。 議論の場で、漢方薬を保険外にすべしとの意見は出なかった。結局、わずか1時間の議論で出た結論は、財務省が示した論点通りに「見直し」。さりげなく例示された漢方薬の記述を含め、丸ごと承認された形になった。 漢方薬の保険外しは財務省が長年にわたり主張してきた。国民注視の“仕分け劇場”を目 NICUに絡む補助金も同様である。「医師確保、救急・周産期対策の補助金」という題の仕分けに含まれ、全体として予算要求の半額カットを求められた。 理由は、救急・周産期医療など大変な医療分野の支援は補助金ではなく、診療報酬の配分を抜本的に見直すことで対処すべきだ、というものだ。 しかし、抜本的見直しは簡単ではない。NICUをはじめ、補助金の投入でようやく持ちこたえている医療現場は多い。 補助金の細目を分析して緊急度を判断せず、まとめて半減せよ、と結論を出すのは乱暴だ。 国民が身近で重要視している医療の問題は、血の通った議論が不可欠である。今後の予算折衝では必要な措置はきちんと復活させる政治判断が求められる。 (2009年12月7日00時58分 読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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