きょうのコラム「時鐘」 2009年12月7日

 新しい最高裁判事の人事が発表された。元金沢地検検事正の甲斐中辰夫氏と、金大卒で弁護士出身の中川了滋氏の退任に伴うものである

14人の最高裁判事に北陸ゆかりの2氏が並ぶのは珍しかった。国民審査の形骸化が指摘されて久しく、重要な判例も最高裁となるとどこか遠い存在に思いがちだった。両氏のおかげで最高裁を身近に感じたこともあった

甲斐中氏は判事就任時に「常識が生かされる判決」と抱負を述べたことがある。分かり易いが、難しい課題だった。常識は時代とともに変わる。国家や社会でも基準が異なる。「常識に照らし合わせて」の裁きは司法界永遠のテーマだろう

裁判員裁判も、プロの非常識に、素人の常識をぶつける試みと言える。非常識な金銭感覚がまかり通る政界の現状など見ての通りだ。これを裁くのは、有権者と言う名の「素人裁判官」である

鳩山内閣初の最高裁判事任命となるため注目される人事案件だったが、慣例通り後任は退官者と同じ出身の検察と弁護士から選ばれた。内閣と司法の関係が微妙な時という。常識以外の選択はあり得なかったろう。