他人のネットタダ乗り“無銭”LANが秋葉原でバカ売れ

2009.12.03


これが「無銭LAN」のセット。同梱CDに解読ソフトが入っている【拡大】

 オフィス街や住宅地で飛び交っている無線LANのパスワードを解析し、他人のネットワークにタダ乗りできてしまう無線LAN機器が中国から日本に上陸し、飛ぶように売れている。国産品の数倍から数十倍というハイパワーが魅力の通称「無銭LAN」。実用性はあるのか?

 東京・秋葉原のパソコンショップでは10月中旬ごろから「中国で話題の無銭LAN」と銘打ち、問題のマシンが発売された。ネットメディアやブログでも紹介され、「入荷のたびにすぐ売り切れるほどのヒット商品となった」(ITジャーナリスト)。台湾メーカーの中国製で、実勢価格は4000円前後。電気街だけでなく、大手ネット書籍サイトや通販サイトでも購入ができるほど販路は充実してきている。

 裏モノらしく、ほとんどの販売店は「一切の保証なし」「質問は受け付けません」「自己責任でお願い」と製品の正体を明かしていない。前出のITジャーナリストによると、表向きはパソコンにUSB接続して無線LANを受信する機器だが、同梱の解読ソフトを使えば「WEP」と呼ばれる比較的旧式のセキュリティー規格を突破できるという。

 「つまり、人のふんどしを借りて相撲を取るようなもの。適合する無線さえ飛んでいれば無料でネットに接続できるほか、ユーザーの身元もバレにくい。ただ、パスワード破りに近いので『不正アクセス禁止法に抵触する』という見方がネットでは定説です」

 ただし、誰にでも使えるシロモノではないようだ。実際に購入した30代の男性は「解読ソフトがうまく立ち上がらず、システムが不安定になった」。別の20代男性も「解読に4−5時間もかかった」と語る。不具合があっても返品やクレームができないのは、大きなリスクでもある。

 一方で「かなり遠距離の無線LANポイントが受信できた。こいつを使えばバリバリ入る」(前出の30代男性)といい、「解析ソフトを使わなくても、市中にはセキュリティーをかけていない無線LANポイントが結構あるので使えそうだ」と話す。

 メーカーのサイトによると電波の出力は国内製品の数倍以上となっており、電波法違反の疑いもある。総務省電波環境課監視管理室は「高出力で電波障害が出たとの申告があれば調査するが、いまのところ無線LANの案件は聞いていない。この周波数帯は電波が強くても広域に広がらず、テレビやラジオ、通信機器に影響を与える可能性も低いだろう」という。たとえ違法な出力だったとしても当局が把握するのは困難というわけだ。

 中国在住のITライターで、今回の機器について早くから取材していた山谷剛史氏は「中国ではパソコンのヘビーユーザーに受けた。ただ、日本人の所得やインターネット常時接続の普及率を考えると、違法すれすれの行為をしてまで導入する必要はないのではないか。趣味の世界で使う物で実用的ではない」と話している。