世界金融危機

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千波万波:鳩山イニシアチブ=潮田道夫

 <せんぱばんぱ>

 やっぱり、不況は効く。いささか不謹慎な言い方だが、不況にまさる温室効果ガス削減策はないのである。

 来月早々、国際エネルギー機関(IEA)が発表する見通しでは、不況のせいで世界の二酸化炭素排出量は、過去40年で最大の減少になるそうだ。

 ニューヨーク・タイムズによれば、減少率は2・6%。これは石油危機で世界経済が大打撃を受けた1981年より大きな落ち込みだという。減った分の4分の1は省エネ努力のおかげだそうだが、何といっても不況の影響が大きい。

 日本も生産の落ち込みは甚だしい。この経済状況だと、京都議定書で約束した90年比6%減も、想定よりラクに達成できるのではないか。あまり喜ぶ気になれないが。

 鳩山由紀夫首相は国連で、2020年までに温室効果ガスを90年比25%削減すると演説した。鳩山イニシアチブつまり鳩山構想である。米国や中国がちゃんと責任を果たせば、という条件付きだが、簡単ではない。

 前政権のとき、25%削減だと1世帯当たり36万円の負担増という試算が出た。民主党はこの試算は前提の置き方に問題があるから、もう一度、試算し直すという。何度でも計算すればいい。しかし、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告書も、排出規制が厳しければ厳しいほど、成長にマイナスだと認めている。それが動かし難い前提なのだ。

 環境政策で栄える新産業が生まれるのは事実だろう。だが、この先、環境規制で何か所得がどんどん増えるような幻想を国民に抱かせてはならない。サルコジ仏大統領が国内総生産(GDP)に「幸福度」を加味した経済指標を作ろうと言っている。そう、それがポイントだ。

 低エネルギー化の結果、経済成長が落ちる。しかし、日本国の「幸福度指数」は高い。民主党政権はそういう日本を目指すべきなのだ。(論説室)

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 ronsetsu@mbx.mainichi.co.jp

毎日新聞 2009年10月4日 東京朝刊

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