<せんぱばんぱ>
日本は「突出」しているのだろうか? コペンハーゲンの気候変動に関する会議(COP15)を前に、日本の温室効果ガス削減目標が主要国に比べ高過ぎる、という見方が強まっている。
日本の目標は2020年までに90年比25%減。対して欧州連合(EU)は20~30%減、米国は約4%減、中国は総枠規制はせずエネルギー効率を05年比40~45%高めるそうだ。これで「突出」といわれるのはなぜか。
この間、国際エネルギー機関(IEA)が09年エネルギー見通しを出した。今年の目玉はコペンハーゲンで各国がどのぐらいの削減を約束すれば、温暖化地獄を避けられるか、国別目標を算出してみせたことだ。
その数字を見て、日本政府は跳び上がった。「エッ、その程度でいいのか。なぜもっと早く教えてくれないんだ!」
IEAによれば、日本は10%の削減でよい。もっとも、これは他国から排出枠を買ったりせず、自力で減らす「真水」の削減目標だ。麻生太郎前首相は真水で8%減を表明した。あれより少々きついが、鳩山由紀夫首相の25%(真水がいくらかは分からないが)よりはるかに低い。
ほかの国は米国3%減、EU23%減。中国については65%の効率アップを求めている。これと各国の目標はほとんど差がない。「世間相場」を踏まえた交渉をしてきたことが分かる。それに比べ日本は何と「世間知らず」であることか。
鳩山首相は25%は無条件ではなく、主要国が「意欲的」な目標である場合に限ると留保条件をつけた。さて、各国は「意欲的」といえるのか? いえませんね。だとすれば、日本も下げるのが筋である。一部に「15%」説が流布している。相場だろう。
しかし、多分、鳩山首相は25%にこだわり続ける。その場合どうなる? 真水でぎりぎり10%減らし、あと15%は外国から排出枠を買う。IEAの数字で計算すれば、費用は8兆円である。おや、まあ。(論説室)
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ronsetsu@mbx.mainichi.co.jp
毎日新聞 2009年12月6日 東京朝刊
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