鞍手地区の7中学校が合同で開催する合唱祭「鞍手地区連合音楽会」が、27日のステージで60回目を迎える。半世紀以上地域で続く音楽会は珍しいとされ、1980年代には荒れた生徒の心を解きほぐし、自信をつけるきっかけにもなった。今年も、出場する生徒たちが仲間との「友情ハーモニー」に磨きを掛けている。
音楽会は1948年、当時の鞍手郡内(現宮若市、鞍手町、小竹町)の教育委員会でつくる鞍手地区教育研究所が「生徒に文化に触れる機会を」と始めた。当初はピアノや日舞などを習う生徒の発表会だったが、80年代ごろから各校代表による合唱祭となった。
70年代後半から80年代前半は、全国的に校内暴力や喫煙など「荒れる学校」が社会問題化した時期。83年、宮田中学校に着任した計良(けいら)洋美教諭(52)は一計を案じ、音楽の授業で、流行の歌謡曲を取り上げた。すると、授業をさぼっていた生徒も次第に出席し、放課後には音楽会に向けて、練習するようになった。
「校則を守らないと音楽会に出場させない」と“決まり”もつくると、服装や頭髪の乱れが少なくなったという。同中OBの原田史夫さん(42)=同市龍徳=は「当時はかなり『やんちゃ』をした。でも、楽しそうに練習する友達を見ると、自分も歌いたくなってね。練習しているともっとうまくハモりたいと思うようになって、仲間意識も強まった」と振り返る。
いつしか、「荒れる学校」は治まり、音楽会はこの地域の中学校の伝統行事へと育った。
今年は宮田中が会場のため、同中は3年の3クラスが出場。生徒たちは放課後、「中学生活の思い出に」と、練習に励んでいる。計良教諭は「美しいハーモニーを奏でることができた、という自信と達成感が毎年、子どもたちに芽生える」と確信し、“最終レッスン”に余念がなかった。
=2009/11/27付 西日本新聞朝刊=