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【正論】拓殖大学大学院教授・森本敏 国家を揺るがす日米同盟の危機

2009.12.4 03:05
このニュースのトピックス正論

 ≪米側の明らかな不快感≫

 このところ急速に株価が下落し、円高もすすみ、デフレ現象への危機感が広がっている。政府・日銀はこれに対して、追加的な金融緩和策を取ろうとしている。これは当面の危機に対処するための適切な措置かもしれない。しかし、先般、米議会で海兵隊のグアム移転経費の7割を削減する法案が採決されたり、トヨタのリコール問題が起こったりしたことを合わせ考えると、これら一連の変化の背後に米政府の意図が介在しているような気がしてならない。

 確たる証拠があるわけではないが、米国のアフガン新戦略を同盟諸国や中国、インドにまでオバマ大統領が直接電話をして事前説明しているのに、鳩山首相には電話さえなかったのも、同様の背景要因がある。すなわち、これには明らかに米政府の日本政府に対する不快感とそれに基づく政治的圧力が存在すると見るべきである。

 鳩山政権が誕生して、直後のニューヨークにおける日米首脳会談で、日米双方は日米同盟の重要性を確認し合った。しかし、その後、鳩山政権は普天間基地問題の決断を先延ばしにして、今までの交渉経緯を検証すると言い出した。さらに、インド洋から海自を撤退すると言い、東アジア共同体構想を提案して、岡田外相は、米国をこれには加えないと説明した。米国政府内に日本民主党に対する疑念が出始め、その一方で、少し、忍耐して事態を静観しようという見方が生まれた。

 ≪度重なる裏切りに疑念も≫

 ワシントンではオバマ訪日を延期すべきだという意見さえ一部にあった中で、オバマ大統領は訪日を決断し、11月13日には2回目の首脳会談をやった。実質的な内容のない会談であったが、ともかく日米同盟深化のための政府間協議と普天間問題を話し合う閣僚級会合という2つの枠組みを作ることだけは合意した。その直後、鳩山首相がシンガポールで普天間基地問題に関するオバマ大統領との約束を反故(ほご)にするような発言をした。米国の温情と忍耐もここまでだった。

 ゲーツ国防長官が訪日して、相当に不快感を持って帰ったが、国防長官をなだめることができたのは、キャンベル、グレグソン両次官補など知日派による説得ではなかったのか。しかし、その忍耐も限界に来つつある。こう考えると、最近、日本を取り巻く経済状況の裏に、米政府の意図が介在していても不思議ではあるまい。

 米国にしてみれば、日本は米国の期待を裏切ることばかり重ねているように見える。普天間基地問題は日米間で約束したのに、これを実行するどころか今までの経緯を検証すると言いつつ、決断を先送りしている。沖縄の現状を見ると、事態はますます深刻になりつつある。インド洋から海自を撤退する代わりではないが、5年で50億ドル(約4500億円)の民生支援をコミットして金で済ませようとする。また、日米地位協定の改訂を提起しようともしている。

 在日米軍への接受国支援(HNS)を事業仕分けの対象にして減額しようとする。米国外しの東アジア共同体を提案する。そして、日米間の核密約を暴露しようとしている。これが同盟国の対応なのか。日本民主党は、自民党政治の仕組みだけでなく、日米同盟も排して新しい政治を試み国民人気を取ろうとしているのではないか。日本民主党が主張する「対等」な日米関係というのはこういうことだったのか。

 米国の疑念はこういう気持ちに要約されよう。われわれは米国が日本の政治に失望しようが、期待はずれの気持ちを持とうが、日本の国益を追求するために必要だと思えば、米国に遠慮なく物を言うべきである。遠慮なく振る舞うべきである。

 ≪首相の勇気ある決断を≫

 しかし、日本の国家の安全と繁栄が、日米同盟に大きく依拠しているという厳然とした事実を忘れるべきではない。国家が直面する危機感と国家のガバナビリティに欠ける政権運営は、国家の安全と国家主権を危うくする。傷ついた日米同盟を修復するには、首相の勇気ある決断力が必要であるが、いまや、それだけではなく、今後、長期にわたる信頼回復への努力とコストを払わねばならない。

 このところ、国際社会における日本の姿が見えなくなっている。国力が低下しているのか、日本が内向きになっているのか分からないが、事態は深刻である。銀行の資金力も低下している。日本に海外から投資しようとする動きが急速に消えつつある。日本の将来と信頼感に対する期待感が低下して、それが指標に出始めている。

 しかし、日本にはまだ、良いところが多い。底力もある。人材も育っている。これを生かすか、殺すかは政治の責任である。その前に、まず、現下の日米関係の危機的状態を救うべきである。自民党も首相の献金疑惑の追及だけでなく、政権与党と超党派を組んで日米同盟の信頼性回復のために立ち上がるべきではないか。今こそ、そうすべきではないか。(もりもと さとし)

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