閉会した臨時国会で、鳩山由紀夫首相の偽装献金問題をめぐって党首討論もなく、議論がすれ違うばかりだった。首相は野党時代には政治とカネの問題を厳しく追及してきた。それだけに、説明を先送りする及び腰の姿勢には落胆の声もあがる。
「今回の母親からの資金提供は、子ども手当ならぬ、親から子への違法な手当だ」。40日間の国会会期中、自民党からこんな批判を受けながらも、首相は「検察の解明を待ちたい」と繰り返した。
首相が所信表明で採り上げた川崎市のチョーク製造会社の大山泰弘会長は「ルール違反はいけないが、捜査後に説明すると約束したので、待ってもいいのでは。賄賂(わいろ)を受け取るような悪質なものではないようだし」と語る。
一方、ある障害者団体の関係者は「障害者自立支援法廃止に向けて動きを進めるために、今国会でけじめをつけてほしかった。障害者からすると金銭感覚も違い、きちんとした説明がほしい」と話す。
新政権に注目し、本会議や事業仕分けを傍聴した東京都中央区の不動産管理業、中島明彦さん(48)は「事業仕分けでは透明性が好評だった。自身の問題も透明にすればいいのに、もったいない」。
政治資金に詳しい神戸学院大学法科大学院の上脇博之教授は「政権交代しても、政治とカネの問題は変わらず、失望した」という。「批判してきた相手と変わらないあいまいな対応を続ければ、信用を失う。後から説明するのでは、検察の結論に沿った形で自分に都合良く話す内容を変える恐れもある」と指摘した。
漫画家のやくみつるさんは「鳩山さんは弁がたたないわけでなし、何を腰引いてんだとも思う。特に実家のことは知らないではすまされない。党首討論もせず、映画を見に行くなどのパフォーマンスに力を入れ、やることがアベコベだ」と述べた。(福井悠介、野村雅俊)