池田信夫 blog

Part 2

総務省が、ホワイトスペースについての検討チームを発足させた。かつては民放連が存在そのものさえ否定していたホワイトスペースが認知され、利用の検討が始まったことは大きな前進だが、その内容には疑問がある。

総務省がUHF帯で想定している技術は、エリアワンセグという日の丸技術らしい。他方、アメリカではFCCはホワイトスペースを免許不要で開放することを決め、マイクロソフト、グーグル、ヤフーなど7社が共同で空き周波数のデータベースをつくるなど、民間主導で整備が進んでいる。技術もIEEEで標準化が進んでおり、広帯域の公衆無線が想定されている。

ここで日本が、また日の丸技術を決めて社会主義的な電波割当を行なうと、3年以上もめているVHF帯のように談合と外圧の泥仕合になって、日本の無線通信サービスは世界から決定的に取り残されるだろう。IEEEの技術が国際標準になる可能性は高いので、総務省はその情報を収集し、電波の割当方式から検討すべきだ。それなしでアドホックな「実証実験」をやって、なし崩しに既成事実をつくるべきではない。

無線通信サービスは、ほとんど壊滅状態のIT業界にあって、まだフロンティアの残された数少ない分野の一つである。ここに内外無差別に競争を導入すれば、かつてソフトバンクが日本のブロードバンドを大きく前進させたように、新しい企業が参入してイノベーションを生み出す可能性もある。日本に足りないのは技術ではなく、没落するITゼネコンに対するチャレンジャーである。

役所が談合させるのと、業者が談合体質なのが「鶏と卵」だというのは嘘である。VHF帯の割当には200社近い応募があったのに、それを総務省が「グループ化」してNTT=テレビ業界連合とクアルコムに「二本化」したあと、調整が難航している。スパコンと同様、談合を生み出しているのは役所であり、外圧がかろうじて競争を担保しているのだ。

成長戦略とは、政府が個別の産業に裁量的に介入することではなく、電波開放のような制度設計によって競争を促進することだ。200メガヘルツもあるホワイトスペースは、周波数オークションで時価を算定すれば2兆円以上の価値があり、それによって生み出される無線機器や通信サービスの市場を考えれば、数十兆円の新しい産業を生み出す可能性がある。幸い「市場原理主義」のきらいな総務省も「コモンズ」には前向きなので、UHF帯を電波コモンズとして利用すべきだ。

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コメント一覧

  1. 1.
    • irakihoe
    • 2009年12月03日 14:11

    雇用の流動化がデフレスパイラルを食い止めているという当ブログのテーマにふさわしい内容のエントリーがあるのですが、どうですか?
    http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/report3_1846.html

  2. 2.

    池田先生、
    UHF帯の周波数帯にそんなに大きなスペースがあるのなら、おっしゃるように使い方のコンペをすべきですね。コンペのうち将来性と採算性のありそうなものを選ぶ段階で役所の手は入らざるを得ませんが、使用者には5年とか7年とか期間を決め(更新はありとして)ペイするぎりぎりの相当高い電波料をとって貸し出すべきだと思います。(そうすれば謝蓮舫さんが仕分けであんなに恥をかかなくて済みます

    でもテレビのチャンネルがいなくなったVHF帯はどんな風に使うのでしょうか。電波の広がりから言ってVHF帯はもっとお金を生む鶏になるんじゃないでしょうか。中国ならこういうのにまず手を挙げるのは各大学理科系学部の関連企業だと思います。これがきっかけとなって、すごいのからジャンクまでアイデアが出てくること自体に大きな意義があるのだと思います。
    趙秋瑾

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