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定住後、公的支援が課題<脱北13>「脱北者2万人時代」を間近に控える韓国では、きめ細かな公的支援の整備が急ピッチで進んでいる。 定着支援施設を出た脱北者が地域に溶け込めるよう今年、全国6か所に生活支援施設「ハナ・センター」を開設。3週間、ごみ分別や銀行口座の開設など、暮らしの知識を教えている。プログラムを受けた男性(27)は「初体験ばかりで不安だったが、職員が携帯電話の契約にまで付き添ってくれた」と感謝する。 一方、帰国者と家族だけを受け入れている日本には、公的支援制度はない。 「民間だけでは限界だ」。NGO「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」副代表で大阪経済大准教授の山田文明は危機感を募らせる。 脱北者らは、住居や仕事のあっせんなどをすべてNGOなど民間ボランティアに頼っているのが実情。居住地も関係者のいる首都圏と大阪に集中している。 東京で警備会社に勤める男性(37)は、日本語とパソコンを専門学校で学ぶ費用をNGOに立て替えてもらった。「申し訳ない気持ちでいっぱい。日本語習得だけでも国が支援してくれたら」と胸の内を語る。 脱北者の半数が心身に不調を抱えているといい、山田は「人道的にも、国が来日時に専門医による検診を実施しては」と提案する。 昨年、大阪府に定住した20歳代の男性は、餓死者を見た記憶から「通行人が死人に見える」と訴え、不眠で仕事に就けないという。 政府は、北の核開発を巡って半島情勢が緊迫した1994年、脱北者が10万人規模で日本に避難してくると想定し、対策を検討。2006年成立の「北朝鮮人権法」で脱北者を保護、支援することも明記されたが、定住後の具体的支援策は今も講じられていない。 94年の政府検討にかかわった元東京入国管理局長で社団法人・人道移民支援センター代表の坂中英徳は言う。「北朝鮮有事の際は、かつてのインドシナ難民のように帰国者らが救いを求めて来日するだろう。『帰国事業の被害者』ともいえる彼らをどう受け入れるか。日本社会の寛容さが試される」 (敬称略、おわり)
(社会部の中川孝之、福田公則が担当しました)
(2009年12月2日 読売新聞)
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