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【社説】

郵政見直し 早急に設計図を示せ

2009年12月5日

 日本郵政グループの株式売却凍結法が成立した。民営化路線修正の第一弾だ。国会は見直しの具体的な図柄が示されず閉じられた。鳩山政権は早急に設計図を国民に示して判断を仰ぐべきだ。

 凍結法は持ち株会社の日本郵政はじめグループ三社の株式上場をひとまず停止し、民営化をストップさせることが狙いだ。

 見直しは郵便配達のついでに過疎地に住む高齢者の貯金出し入れを仲介したりする利便性の復活や向上が目的で、鳩山政権の改革方針には「郵便局を地域のワンストップ行政の拠点にする」などが盛り込まれた。

 しかし、民営化見直しを主導する亀井静香郵政改革担当相が西川善文初代社長の後任に抜擢(ばってき)した元大蔵次官の斎藤次郎新社長は、年金などの手続きを一カ所で引き受けるワンストップ行政を「仕事の範囲が広がれば社員の負担が過重になり、コスト高も招くので難しい」などとあいまいだ。

 全国二万四千の郵便局の半分近くを局員三人前後の特定局が占めており、確かに介護の取り次ぎや旅券発行事務まで手広くこなすのは容易でない。亀井氏は郵政改革法案を年明け通常国会に提出するので、見直し作業はこれからが本番と説明するだけで、結局は何の具体策も示していない。

 見過ごせないのは、基本方針が、民営化の際に決めた郵便貯金への銀行法と簡易保険への保険業法適用をはずしている点だ。

 国営時代は郵便・貯金・保険の三事業を一体で経営してきた。郵便に赤字が出たら郵貯、簡保からの利益つけ替えが起きかねない。金融は信用秩序が根幹であり、銀行法、保険業法ともに郵便などのビジネス併営を認めていない。

 都市銀行と同等の法令順守で緻密(ちみつ)な作業を強いられ、郵便局長の多くが息苦しさを訴えているとされる。そうした不満が見直しの理由だとしたら説得力を欠く。

 銀行、保険業法からの離脱は厳しい管理からの解放を意味し、収益軽視の非効率経営に逆戻りしかねない。

 三百兆円近くに上る郵貯と簡保資金の行方も気がかりだ。八割が斎藤新社長がかつて勤めた現財務省発行の国債購入に充てられており、公益法人などに回って非効率な使われ方を温存させないか。「官から民」を理念に中小企業向け融資の拡大を通じた地域経済の浮揚も、もはや望めそうにない。

 鳩山政権は使い勝手のよい見直し策を早急に示してもらいたい。

 

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