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【日本の未来を考える】東京大・大学院教授 伊藤元重 “オオカミ”は必ず来る

2009.12.5 02:59

 政府債務の対GDP比のランキングで、日本はジンバブエについで世界第2位であるそうだ。日本は160%を超える水準であるが、100%を超えるような国はこれ以外にはレバノン、ジャマイカ、イタリア、スーダンしかない。日本の政府債務はそれだけ異様な大きさであるのだ。多くの経済学者が日本政府の抱える巨額の債務のリスクについて論じてきた。あまりに債務が膨れあがれば、国債を市場で消化することが難しくなる。国債の価格は大きく下がるだろう。それはつまり、国債利回りが高くなることであり、もし国債利回りが上がれば諸々(もろもろ)の金利も上昇して経済は大変なことになる。私自身もこのような議論をしてきた。

 こうした財政破綻(はたん)論が出てきてから10年以上がたっている。その間に政府債務はさらに膨れあがっている。それにもかかわらず国債利回りは史上最低というような水準を維持している。経済学者の財政危機説は「オオカミ少年」と同じであると感じている人も多いかもしれない。しかし、オオカミは必ず来る。対GDP比で世界第2位の水準の債務を抱えていて、まともな形で財政再建が果たせるとも思えない。少なくとも、歴史的にみてGDP比で160%近い債務を抱えた国で、インフレも起こさず、債務の不履行にも踏み切らないで財政健全化を果たした国はあまりないはずだ。

 政府がこれだけの債務を抱えていても国債利回りが低いのにはいくつかの理由がある。第一には、世界的な不況と金融危機の影響で、資金が安全な国債に逃げているからだ。第二には、日本の国民の潤沢な貯蓄が国債を支えているということがある。そして第三には、まだ国民の税負担率が比較的低い日本では、政府が大幅に増税をすれば財政健全化をすることが可能であると市場が判断していることがあるだろう。しかし、こうした条件は永遠に続くものではない。世界的な不況と金融危機が遠ざかれば、資金がリスク資産に移動しはじめ、世界的に金利は上昇しはじめるだろう。日本の金利もある程度はそれにつられるはずだ。また、国債を支えている国民の貯蓄だが、高齢化が進む中で日本の家計の貯蓄率が急激に低下し、いつまでも膨大な国債を支えきれるかどうか分からない。そして増税の可能性であるが、今の政治状況の中では増税はなかなか難しそうである。また、政府債務がさらに拡大していけば、増税でカバーできる余地を超えてしまうかもしれない。デフレで政府の税収が落ち込んでいることも、財政状況をさらに厳しくしている。

 結局、日本の財政は他の多くの国が経験したような財政破綻の道にひた走りに向かっていくのだろうか。債務不履行にまで踏み切らなくても、国債の利回り急騰や、調整のための高いインフレ率への誘導という事態に陥るのだろうか。そうなれば、経済は大混乱だろう。一部には、国債の価格暴落が起き、国民が驚いて、増税による財政健全化が政治的に通りやすくなる環境になるまで、今の状況は続くという見方もある。しかし、その時点まで増税を待っていて間に合うのだろうか。新政権はミクロレベルでの歳出見直しには熱心であるが、マクロレベルでの財政健全化シナリオを早く出してほしいものだ。(いとう もとしげ)

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