Profile:
アニメ評論家。東京工業大学卒。ファンクラブ「ヤマトアソシエーション」の会長を務めたことから、1977年に劇場版「宇宙戦艦ヤマト」公開に協力。
同時に「月刊OUT」創刊2号ヤマト特集号でライターデビュー。富野由悠季監督(「機動戦士ガンダム」ほか)、出﨑統監督(「エースをねらえ!」ほか)、アニメーター金田伊功(「無敵鋼人ザンボット3」ほか)などの評論多数。NHK BS-2「BSアニメ夜話」にレギュラー出演。日本のアニメ文化史をそのままに生きている評論家の一人。
復活篇をご覧になった感想はいかがでしたか?
地球消滅という絶対の危機の設定、バトルシーンのビジュアルが放つ美しさと迫力の融合、激しい感情を盛りあげる流麗な音楽と、最初の『宇宙戦艦ヤマト』を楽しんだテレビアニメ第1世代としては、あらゆる意味での「ヤマトらしさ」が新たな映像とドラマとして気持ちよく表現されていることに、素直に驚き、また楽しみました。
宇宙戦艦ヤマトの魅力とはなんでしょう?
大スクリーンに展開する光と影、色彩、そして大音響を全身に浴びる映画的体験が、まずかけがえのないものです。そしてその魅力は、決して洗練されたところにはないと思います。むしろ野暮ったいとか、時代錯誤だとか、大仰だとか言われかねない、どこかゴツゴツしてムダにも見えるものがいっぱいついていて、生硬な感情もかなりストレートに出てくる。しかし、そうしたちょっと拒否感も抱きかねないものに戦闘スペクタクルの華麗さと音楽が加わったとき、突如として言葉にならないような感動に転化するわけです。その瞬間に生じる逆転の驚きが、最大の魅力だと思います。ヤマト本体のメカデザイン自体がそういう考え方で成立しているので、非常にシンボリックだなと改めて思いました。
21世紀を迎え、ヤマトが復活することに関してどう思われますか?
最初に『宇宙戦艦ヤマト』が登場したのは戦艦大和があった太平洋戦争から29年が過ぎた1974年でした。ところがそれから2009年までは35年。いつの間にか、こちらの方が長くなっていて、すでにヤマトそのものが歴史になっていることを実感します。「復活篇」は、現在のアニメをかたちづくる様式や価値観とはまったく異なるアニメ映画にも見えます。ですが、ヤマトが今日隆盛なハイエンドアニメの元祖であった歴史を考えると、ここで「原点にしてホンモノ」が最新作として登場したことに、必要以上の意味を感じとってしまいます。なので、ヤマトを知らない若い世代がどう感じられるのか、興味津々です。少なくとも現代の若者が、まったく観たことのないタイプの映画だと思いますので、偏見を捨てて新たな原点を体験していただければと願っています。