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きょうの社説 2009年12月4日
◎たばこ税引き上げ 小幅ならばやむを得ない
2010年度税制改正へ向けて、たばこ税を小幅に増税する方向になったのは、やむを
得ない判断だろう。国内の販売価格は欧米諸国の半値から3分の1程度であり、健康への負荷の重さを考えれば、もう少し高くしてもおかしくはない。税収不足を補う切り札として、一挙に現行価格の2、3倍に引き上げる大幅増税を主張 する声もあるようだが、それでは愛煙家だけでなく、小売店や葉タバコ農家を含めた業界全体への打撃が大き過ぎる。健康問題を前面に押し立てて、「たばこは悪」と決め付け、大幅増税で罰を与えるようなやり方は感心しない。 税収にばかり目を向けず、国民の健康増進にも配慮した無理のない税率を考えたい。デ フレ不況が心配されているときだけに、1本2〜4円程度の値上げであっても、禁煙の十分な動機付けになるのではないか。未成年者や若い世代に新たな喫煙者を生み出さない効果も期待できるだろう。 たばこ税は、この10年間で3回引き上げられた。いずれも1本1円程度の小幅な引き 上げにとどまったこともあり、消費量の減少は比較的緩やかで、消費税1%に匹敵する約2.1兆円の税収は、「安定財源」として、ほぼ横ばいで推移している。 厚生労働省は、たばこの値段が手ごろだから、喫煙率が他の先進国ほど下がらないと主 張している。この際、一気に税を引き上げる「ショック療法」で、喫煙率を大きく減少させたいのだろう。政府税調では、現行で1箱300円の主力商品を600円にすれば、40%近い男性喫煙率を30%前後にまで下げられるとの試算を示した。 税収が増えて、たばこが原因の成人病などが減り、医療費の節減につながれば、一石二 鳥と言う指摘には確かに一理ある。しかし、販売価格を一挙に引き上げるやり方は、喫煙者だけに重い負担を強いることになり、公平さを欠く。たばこの総需要は毎年4、5%ずつ減っており、過去20年間でおよそ半分に減った。無理をせずとも、これから数年間かけて、段階的に税率を引き上げ、たばこ消費量を着実に減らしていけばよい。
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