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【発明の名称】 炭化水素ガスの熱分解方法及びその装置
【発明者】 【氏名】松村 修三

【氏名】米田 昌司

【氏名】伝田 六郎

【要約】 【課題】高温加熱を必要とせず、設備コストの低減が図れると同時にコーキングが避けられる炭化水素ガスの熱分解方法及びその装置を提供する。

【解決手段】分解反応塔1内に垂直方向に延在されている多孔質チューブ群の各多孔質チューブ4間に被分解炭化水素ガスを均一に流し、多孔質チューブ内から外に、前記被分解炭化水素ガスの流れに対して直角方向に、空気または酸素を均質に噴出して点火し、多孔質チューブ4の外面に拡散火炎層Bを形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被分解炭化水素ガスを空気または酸素と直接接触させて拡散火炎層(B)を形成し、これを熱源として被分解炭化水素ガスにラジカル反応を起こさせ、オレフィン系有機化合物ガスを生成することを特徴とする炭化水素ガスの熱分解方法。
【請求項2】 分解反応塔(1)内に垂直方向に延在されている多孔質チューブ群の各多孔質チューブ(4)間に被分解炭化水素ガスを均一に流し、多孔質チューブ内から外に、前記被分解炭化水素ガスの流れに対して直角方向に、空気または酸素を均質に噴出して点火し、多孔質チューブ(4)の外面に拡散火炎層(B)を形成することを特徴とする請求項1記載の炭化水素ガスの熱分解方法。
【請求項3】 分解反応塔(1)内に垂直方向に延在されている多孔質チューブ群の各多孔質チューブ(4)間に空気または酸素を均一に流し、多孔質チューブ内から外に、前記空気または酸素の流れに対して直角方向に、被分解炭化水素ガスを均質に噴出して点火し、多孔質チューブ(4)の外面に拡散火炎層(B)を形成することを特徴とする請求項1記載の炭化水素ガスの熱分解方法。
【請求項4】 前記被分解炭化水素ガスに代え、廃棄プラスチックを熱分解して得た合成ガスとしたことを特徴とする請求項1、2または3記載の炭化水素ガスの熱分解方法。
【請求項5】 一端に被分解炭化水素ガスを供給する入口(2a)、他端に生成されたオレフィン系有機化合物ガスを排出する出口(3a)を有する分解反応塔(1)と、該反応塔(1)内に垂直方向に延在されている多孔質チューブ群と、各多孔質チューブ(4)に接続され、空気または酸素を供給するヘッダー(5)とからなることを特徴とする炭化水素ガスの熱分解装置。
【請求項6】 一端に空気または酸素を供給する入口(2a)と、他端に生成されたオレフィン系有機化合物ガスを排出する出口(3a)を有する分解反応塔(1)、該反応塔(1)内に垂直方向に延在されている多孔質チューブ群と、各多孔質チューブ(4)に接続され、被分解炭化水素ガスを供給するヘッダー(5)とからなることを特徴とする炭化水素ガスの熱分解装置。
【請求項7】 各多孔質チューブ(4)の外周を包囲して無孔チューブ(10)が同心に設けられていることを特徴とする請求項5または6記載の炭化水素ガスの熱分解装置。
【請求項8】 分解反応塔(1)の入口(2a)側には、ディストリビューター(8)が設けられていることを特徴とする請求項5、6または7記載の炭化水素ガスの熱分解装置。
【請求項9】 前記被分解炭化水素ガスに代え、廃棄プラスチックを熱分解して得た合成ガスとしたことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の炭化水素ガスの熱分解方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭化水素ガスの熱分解方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】原油の常圧蒸留によりガソリン、LPガス、灯油、軽油等が精製されるが、同時に多量のナフサが発生する。通常、ナフサの主成分はパラフィン系有機化合物(ノルマルパラフィン、イソパラフィン等)であり原料油として用いられる。
【0003】従来、パラフィン系有機化合物から目的とするオレフィン系有機化合物(エチレン、アセチレン、プロピレン、ブテン等)を得るためには、通常、熱分解装置等を経て、長鎖の化学組成を有するパラフィン系有機化合物を短鎖の化学組成のオレフィン系有機化合物に分解する必要がある。
【0004】従来の熱分解装置としては、加熱炉中のチューブ内にガス状のナフサと水蒸気を流し、チューブ外面からの加熱によりナフサを熱分解してオレフィン系有機化合物を生成するタイプのものが主流であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の熱分解装置によるプロセスにおいては、高温加熱(700〜900℃程度)を必要とするため、設備コストの増大とチューブ内のコーキングの問題が避けられなかった。このコーキングを防止するために、上述したようにチューブ内にナフサと共に水蒸気を流す必要があった。
【0006】本発明は、高温加熱を必要とせず、設備コストの低減が図れると同時にコーキングが避けられる炭化水素ガスの熱分解方法及びその装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を次のようにして解決した。すなわち、被分解炭化水素ガスを空気または酸素と直接接触させて拡散火炎層を形成し、これを熱源として被分解炭化水素ガスにラジカル反応を起こさせ、オレフィン系有機化合物ガスを生成する。
【0008】前記拡散火炎層を形成するには、分解反応塔内に垂直方向に延在されている多孔質チューブ群の各多孔質チューブ間に被分解炭化水素ガスを均一に流し、多孔質チューブ内から外に、前記被分解炭化水素ガスの流れに対して直角方向に、空気または酸素を均質に噴出して点火し、多孔質チューブの外面に形成するか、それとは逆に、分解反応塔内に垂直方向に延在されている多孔質チューブ群の各多孔質チューブ間に空気または酸素を均一に流し、多孔質チューブ内から外に、前記空気または酸素の流れに対して直角方向に、被分解炭化水素ガスを均質に噴出して点火し、多孔質チューブの外面に形成する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0010】図1は、本発明の第1の実施例による炭化水素ガスの熱分解装置の概念図である。同図において符号1で示されるものは、上部にディフューザー2、下部にレデューサー3を有する分解反応塔であり、その内部には、多孔質チューブ群が垂直方向に延在されている。なお、前記反応塔1は、円形タイプでも矩形タイプでもよい。
【0011】前記多孔質チューブ群の各多孔質チューブ4は、多孔質金属またはMF(Micro Filtration)、UF(Ultra Filtration)までの細孔サイズを有する金属膜材料より構成されている。この多孔質金属または金属膜材料には、SUS、工具鋼、インコネル、チタン合金、アルミニューム合金等を用いる。
【0012】各多孔質チューブ4の上端は塞がれ、下端はヘッダー5に接続されている。このヘッダ5は、中空板状とされ、その上面には前記多孔質チューブ3とジョイン6を介して接続される無孔チューブ7が突出して設けられている。
【0013】前記ディフューザ2の下端であって多孔質チューブ群の上方には、ディストリビュータ8が設けられている。また、各多孔質チューブ4の上部の外面間には、点火系9が設けられている。
【0014】前記ディフューザー2には、パラフィン系ガス等の被分解炭化水素ガスの入口2a、レデューサー3には、オレフィン系ガス等の分解精製ガスの出口3aが設けられている。また、ヘッダー5には空気または酸素の供給ノズル5aが設けられている。
【0015】次に動作について説明する。
【0016】ナフサ等を蒸発させて得た被分解炭化水素ガスは、分解反応塔1の入口2aから供給され、ディストリビューター8により整流されて反応塔1の上部から各多孔質チューブ4間に均一に流れる。
【0017】また、供給ノズル5aから供給された空気または酸素は、多孔質チューブ壁の内外の圧力差により、金属多孔質細孔から同チューブ外に、被分解炭化水素ガスの流れに対して直角方向に、しかも均質に噴出される。
【0018】この状態で点火系9により点火すると、図2示すように、多孔質チューブ4の外面に拡散火炎層Bを形成し、これが熱源になりパラフィン系ガス等の被分解炭化水素ガスがラジカル反応(遊離基反応)を起こし、より短鎖のオレフィン系有機化合物ガスを生成する。
【0019】図3は、本発明の第2の実施例による炭化水素ガスの熱分解装置の概念図である。本実施例は、多孔質チューブ4の外周を包囲して無孔チューブ10が同心に隙間を有して設けられていることのみが第1の実施例と相違するので、その他の構成の説明は省略する。すなわち、図4に示すように、多孔質チューブ4の内管と、無孔チューブ10の外管により構成される2重管の内管に空気を流し、内外管で仕切られた空間(2重管部)にガス状の被分解炭化水素ガスを流すことにより、第1の実施例と同様、被分解炭化水素ガスがラジカル反応を起こし、より短鎖のオレフィン系有機化合物ガスを生成する。
【0020】上述した実施例では、多孔質チューブ4の内部から外部に空気または酸素を供給し、多孔質チューブ4の外部に被分解炭化水素ガスを流しているが、多孔質チューブ4の内部から外部に被分解炭化水素ガスを供給し、多孔質チューブ4の外部に空気または酸素を流してもよい。
【0021】また、上述した実施例では、被分解炭化水素ガスを分解反応塔1に供給しているが、図5に示すように、ガス化装置11に廃プラ等の固体原料を供給して、加熱装置13によってガスと残渣に分解し、発生したガスを管路12および入口2aを介して反応塔1に供給することも可能である。
【0022】また、上述した実施例では、分解反応塔1の入口2aを上側、出口3aを下側に設けているが、逆に、分解反応塔1の入口2aを下側、出口3aを上側に設けてもよい。
【0023】
【発明の効果】本発明による熱分解方法および装置は、上述した従来の分解方法および装置と異なり、ナフサ等を蒸発して得た被分解炭化水素ガスを、空気または酸素と直接接触させて拡散火炎層を形成し、これを熱源としてラジカル反応を起こすものであり、本方法および装置を用いることにより、高温高圧のプロセスを経ずに目的とするオレフィン系有機化合物ガスを生成することが可能となり、設備投資額の低減が図れると同時にコーキングが避けられる。
【出願人】 【識別番号】592264053
【氏名又は名称】松村 修三
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
【出願日】 平成10年9月2日(1998.9.2)
【代理人】 【識別番号】100070219
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 忠 (外4名)
【公開番号】 特開2000−80385(P2000−80385A)
【公開日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願番号】 特願平10−248400