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【発明の名称】 濃縮凝集装置
【発明者】 【氏名】菅原 良行
【住所又は居所】東京都港区芝浦三丁目6番18号 株式会社西原環境衛生研究所内

【氏名】安部 忠彦
【住所又は居所】東京都港区芝浦三丁目6番18号 株式会社西原環境衛生研究所内

【氏名】石谷 純一
【住所又は居所】東京都港区芝浦三丁目6番18号 株式会社西原環境衛生研究所内

【氏名】間瀬 博子
【住所又は居所】東京都港区芝浦三丁目6番18号 株式会社西原環境衛生研究所内

【要約】 【課題】濃縮分離液の清澄度が高く、水処理系統への返流水負荷を大幅削減可能で、且つランニングコストの低減を図ることができる濃縮凝集装置を得ることにある。

【解決手段】流入水を導入する流入槽2と、この流入槽2からの流出水を濃縮する濃縮槽3と、この濃縮槽3から濃縮分離液を導入する凝集分離槽4と、この凝集分離槽4から前記流入槽2に凝集汚泥を返送する汚泥返送管7とを備えたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 流入水を導入する流入槽と、この流入槽からの流出水を濃縮する濃縮槽と、この濃縮槽から濃縮分離液を導入する凝集分離槽と、この凝集分離槽から前記流入槽に汚泥を返送する汚泥返送管とを備えた濃縮凝集装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水等の固液分離設備として適用する濃縮凝集装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に水処理分野の汚泥濃縮は、下水等の固液分離濃縮技術として広く使用されており、その濃縮方法としては重力濃縮や機械濃縮(遠心、浮上等)があり、いずれの場合も濃縮性能は、濃縮液濃度が高く、分離液が清澄であるなど、その主な目的は、後段汚泥処理の効率化と水処理への返流水負荷の低減にある。しかるに近年は、生活環境の変化や分流式下水道の普及に伴い汚泥濃縮性が悪化しているため、その汚泥濃縮方法として機械濃縮機を採用するケースが増加している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の汚泥濃縮方法において、重力濃縮の場合、消費動力は小さいが、その反面、濃縮槽の汚泥滞留時間が10時間程度と長く且つ広い敷地を必要とし、濃縮液および分離液濃度は原汚泥の性状に大きく依存する。ここでの、一般的に濃縮槽への投入汚泥濃度は、0.5〜1%程度であり、濃縮液の濃度は2〜3%程度、分離液濃度は1000〜5000mg/L程度(SS回収率60〜70%程度)となる。このように、重力濃縮槽ではランニングコストは小さいが濃縮性能の悪化時に、高濃度の分離液が水処理系統へ返流水として戻り、水処理の負荷に大きな影響を及ぼすという課題があった。一方、機械濃縮の場合、一般的に濃縮液の濃度は4%以上、SS回収率は90%以上となるが、その反面、設備費および消費動力が大きくなるという課題があった。このように従来の重力濃縮および機械濃縮ではそれぞれ一長一短があることから、低コストで濃縮性能が向上する濃縮装置の開発が望まれている。
【0004】本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、濃縮分離液の清澄度が高く、水処理系統への返流水負荷を大幅削減可能で、且つランニングコストの低減を図ることができる濃縮凝集装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る濃縮凝集装置は、流入水を導入する流入槽と、この流入槽からの流出水を濃縮する濃縮槽と、この濃縮槽から濃縮分離液を導入する凝集分離槽と、この凝集分離槽から前記流入槽に汚泥を返送する汚泥返送管とを備えたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1による濃縮凝集装置を示すフロー図である。図において、1は原水導入管、2はその原水導入管1から流入水を導入する流入槽、3は流入槽2からの流出水を導入しその流出水に含まれた懸濁物質(汚泥)などを濃縮する濃縮槽であり、この濃縮槽3としては一般的な重力濃縮装置が適用される。4は前記濃縮槽3から濃縮分離液を導入して固液分離する凝集分離槽、5はその凝集分離槽4内に添加物を供給する添加物供給手段であり、添加物供給手段としては、定量フィダー供給やスラリー供給あるいはドライ供給が挙げられるが、凝集分離槽4内に添加物を速やかに供給できるものであれば、如何なるものでもよい。その添加物としては、砂または砂に近似する比重2〜8の範囲である有機系や無機系の物質、またはそれらの混合物、例えば微粒砂や酸化ジルコニウムやガーネットなどが挙げられる。6は前記凝集分離槽4に無機凝集剤および高分子凝集剤を併用するか、各々単独で供給する薬品供給手段、7は前記凝集分離槽4から凝集汚泥を前段の流入槽2内に返送する汚泥返送管、8は凝集分離槽4の分離液を系外に排出する処理水排出管である。汚泥返送には、砂が含まれることもあるので、耐摩耗性があるサンドポンプや、耐摩耗性水中ポンプなどが好ましい。凝集分離に微粒砂を用いた場合は、サイクロンなどで砂分を分離した汚泥を返送する。なお、汚泥返送管7は返送路など汚泥を流入槽2に戻すことができればよい。なお耐摩耗性であればなおよい。また、流入槽2に代わりにパイプで導入したり、スタティックミキサー、ラインミキサーを使用したり、濃縮槽3に付帯するように設けられた槽でもよい。さらには、濃縮槽3の流入口付近に返送汚泥を返送しても代用できる。
【0007】次に動作について説明する。原水導入管1から流入槽2に流入した流入水は、後段の凝集分離槽4から前記流入槽2に返送された凝集汚泥と混合され、その流出水が濃縮槽3に移流し、この濃縮槽3では、流入槽2からの流出水中の凝集汚泥や流入水中の固形分等が重力濃縮されて分離される。ここで、濃縮槽3に移流した流入槽2からの流出水中には凝集分離槽4から返送された凝集汚泥に含まれる沈降促進材となる凝集剤や砂等の不溶性物質が含まれていることにより、前記濃縮槽3では汚泥の重力濃縮が促進される。これにより、濃縮汚泥のTS濃度と濃縮分離液の清澄度などが改善される。
【0008】次いで、凝集分離槽4内には、添加物供給手段5から砂等の不溶性物質である添加物が供給されると共に、薬品供給手段6から凝集剤が供給されることで、凝集分離槽4内に移流した濃縮分離液に含まれる汚泥が凝集沈殿され、その凝集汚泥は汚泥返送管7を介して前段の流入槽2に返送される一方、分離液は処理水排出管8から系外に排出される。
【0009】以上説明した一連のプロセスにより、濃縮液濃度は通常の重力濃縮の場合と比較して10〜20%増加し、重力濃縮と凝集分離とによる総合的なSS除去率は95%以上となり、SSに含まれるリンが除去されるだけでなく、濃縮分離液の清澄度が向上する。このため、水処理系への返流水負荷が大幅削減される。
【0010】実施例1.上記実施の形態1による構成とした本発明の濃縮凝集装置と、重力沈降を行う濃縮槽に直接凝集剤を添加した従来(薬注重力濃縮)の場合とを下水で実施して比較した結果を表1に示す。
【0011】
【表1】

【0012】なお、実施条件として、本発明の凝集分離槽4に添加する添加物としては微粒砂を用いた。また、原液汚泥SS5,000mg/L、T−P80mg/L、処理量3,800m/日とした。さらに、本発明の凝集分離槽4における砂濃度は6,000mg/L、従来例の重力濃縮槽単独の濃縮液TS濃度は1.7%程度である。なお、SSは浮遊物質(懸濁物質)を、T−Pは全リンを、TSは蒸発残留物(全固形物量)を示す。
【0013】本発明による濃縮凝集装置での処理では、前段の重力濃縮槽3での濃縮液TS濃度が2%、後段の凝集分離槽4での凝集分離処理水のSS濃度が40mg/Lとなり、総合的なSS除去率は99%以上となった。また、T−Pの除去率もSS除去率と同様に99%以上となって頗る良好であった。なお、この時の薬品使用量は無機凝集剤290L/日で、これは全固形物量に対して8%になるように高分子凝集剤2.9m/日で、これは全固形物量に対して0.13%になるようにした。これに対し、単独の重力濃縮槽に凝集剤を直接添加した従来のプロセスでは、本発明と同じ薬品使用量(無機凝集剤290L/日,高分子凝集剤2.9m/日)で濃縮液TS濃度は2.1%、SS除去率は76%であり、更に薬品使用量を増加させたところ、濃縮液TS濃度は2.8%、SS除去率は99%となった。
【0014】ここで、従来の重力濃縮槽において、上述のように薬品使用量を増加させることにより、本発明の場合とほぼ同様のSS除去率を得ることができるが、この場合、表1の薬品コストの欄で明らかな通り、19,700円/日から53,920円/日へ2倍以上のコスト高となる。これに対する本発明では、容積2,000mの濃縮槽3に対して後段の凝集分離槽4は容積10mと非常に小型であることから、少ない薬品コストで非常高いSS除去率およびT−P除去率が得られた。この事由は、濃縮槽3から凝集分離槽4に移流させた濃縮分離液のみに薬品添加を行うことで効率化を図ったことと、凝集分離槽4での添加物使用による凝集沈殿の高速化を図ったことにある。本発明の実施例では、添加物を使用して凝集分離槽を小型にしたが、凝集分離槽を10倍の容積にすれば同等の薬品コストで、同等の水質が得られる。したがって、本発明の濃縮凝集装置によれば、低コストで濃縮分離液の清澄化が可能となり、水処理系への返流水負荷を大幅に削減可能となる。
【0015】なお、上記実施の形態1において、濃縮槽3は重力濃縮に限らず他の遠心濃縮や加圧浮上濃縮であっても良く、また、対象廃水は、屎尿や産業廃水など濃縮を必要とするものであれば、処理対象の被処理液(流入水)となるものである。
【0016】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、設備費や消費動力が大きな濃縮機械を必要とせず、近年の生活環境の変化や分流式下水道の普及に伴う汚泥濃縮性能の悪化傾向にあっても、消費動力が小さく低コストで濃縮性能を向上させることができるという効果がある。即ち、凝集分離槽での凝集汚泥を前段の流入槽に返送して流入水(被処理液)と混合させることにより、次段濃縮槽での濃縮性能が向上し、その濃縮槽から後段の凝集分離槽に移流した濃縮分離液のみに添加物を添加することにより、凝集分離槽での凝集分離処理を非常に短時間(5分程度)に効率よく行うことができ、このような濃縮槽と凝集分離槽とによる総合的なSS除去率は、上記実験例で明らかな通り95%以上となって、濃縮分離液の清澄度が非常に高くなるという効果がある。また、薬品使用量について、従来の重力濃縮槽に直接凝集剤を添加した場合に比べ、同じSS除去率を得るのに本発明では50%以上少なくて済むので、薬品コストを低減できるという効果がある。あるいは、凝集分離槽に添加物を使用しないで、凝集分離槽の容積を10倍とすれば、同様の薬品量で、同様の水質が得られるという効果がある。さらに、本発明では、濃縮槽から凝集分離槽に移流させた濃縮分離液のみに薬品添加を行うので、濃縮槽後段の凝集分離槽は前段の濃縮槽に比べて容積が非常に小さなものでよく、その小容積の凝集分離槽によれば非常に高いSS除去率を得ることができ、また、小容積の凝集分離槽に対する薬品添加量は、上述のように従来の重力濃縮槽に直接凝集剤を添加した場合に比べ、同じSS除去率を得るのに50%以上少なくて済むので、薬品コストを低減できるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000147408
【氏名又は名称】株式会社西原環境テクノロジー
【住所又は居所】東京都港区芝浦3丁目6番18号
【出願日】 平成14年5月14日(2002.5.14)
【代理人】 【識別番号】100066474
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 博昭 (外1名)
【公開番号】 特開2003−326107(P2003−326107A)
【公開日】 平成15年11月18日(2003.11.18)
【出願番号】 特願2002−139165(P2002−139165)