いい感じでかっこつけよう
サラリーマンは淡々と仕事をしているように見えて、実は見栄の張り合いなどの無駄なコミュニケーションも多いものです。冷静になって考えてみると、そういうしょうもない見栄などを気にしなければ生産性はもっと上がるはずですが、正味な話、生産性について本気で考えている人はほとんどいませんし、そもそも生産性なんて上げて得をする人は少ないので、どちらかというと、そういう無駄なコミュニケーションもエンジョイしていきたいところですが、どうせなら、いい感じでかっこつけていきたいところです。
多用されるのが、言葉づかいで差をつけること。頭がいいとかセンスがよいと思われたいがために、普段つかわない言葉をつかってしまって自爆・・・・となるわけですが、恐ろしいのは自爆しても誰も指摘しないところです。
また、インテリっぽく見せようと思って言葉を間違っていると、インテリじゃないことがバレるのも恥ずかしいですが、インテリにコンプレックスを抱いていることがまるわかりになってしまい、自我が崩壊してしまうほどの恥ずかしさなのでご注意ください。
そういえば、「慙愧に堪えない」でだいぶ恥ずかしい思いをされた方がいらっしゃいましたね。わたしが総理大臣であの間違いをしたら、恥ずかしさのあまり、それだけで辞任してしまいます。その意味で政治家ってやっぱり太くないとできないですよね。それはともかく、最近目にした間違いについて列挙し、念のために正しい用法について書かせていただきますね。
誤用の代表例
【あまつさえ】
「ただでさえ」の意味だと思っている人がたまにいらっしゃいます。
この誤法の恥ずかしいところは、半ギレのときに多用されるセリフだからで、たとえば「あまつさえ、コストがかけられないというのに、こんな無駄遣いをするとは!」みたいな間違い方をしてしまうと、感情が高まっていることもあって、傍から見たときの面白さが倍増なのです。「あまつさえ」は「さらに悪いことに」という意味ですが、自信がないなら「さらに悪いことに」をそのままつかうのがオススメです。
【すべからく】
「すべて」の意味でつかう人が続出での「すべからく」。漢文の授業でさんざん習った「すべからく~べし」を忘れている方がこんなにいらっしゃるとは……と驚いてしまいますが、日本の高等教育の限界というものでしょうか。
困るのが、「この件については、すべからくチェックをお願いします」というとき、「すべからく~べし」の「べし」を抜いたようにも読めるし、「すべて」と言いたいようにも読めたりするところ。かといって「この、すべからくってどういう意味ですか」とも聞けないし、つらいところです。
【近しい】
「親しい」の意味ですが、単に「近い」という意味でつかう人が多いです。これも冷静に考えたら「近い」といえばいいところを「近しい」と一文字加えることで、生産性が悪くなっている上にさらに間違えているところがちょっと恥ずかしいかもしれません。
【いみじくも】
「偶然」という意味でつかう人がいますが、「たくみに」の意味です。これも、偶然起きたシチュエーションを素敵な言葉で表現したいという気持ちが空回りしてしまって非常に恥ずかしいですよね。
他にも間違いはあると思いますが、同じ間違い方でも、敬語表現での間違い―たとえば、「お伺いする」など―は、「ああ、丁寧にしようと思って空回りしているんだな。でも、丁寧にしようと思ってくれる気持は受け取ったよ」と思ってもらえ、間違っても好感度は下がりません。状況によっては、あえて間違いと知っていながらつかった方がいいくらいなのですが、上記の例のように、自分の頭のよさを知らしめたいと思って失敗してしまうのは、そもそも動機が不純であるため、滑稽な印象しか与えないのです。