近畿一円でスーパーを展開する近鉄百貨店グループの近商ストアが、都市部の鉄道の駅やターミナル隣接地に「駅ナカ」スタイルの出店を加速している。８月上旬に高級食料品専門店「ハーベス」に業態転換したＪＲ天王寺駅内の店舗をモデルに、コンビニエンスストアの利便性と、充実した生鮮食料品を兼ね備えた“都市型店”として、近隣住民に加え通勤通学客らを囲い込みたい考えだ。

　リニューアルオープンした「ハーベス天王寺店」は日常の食料品に加え、こだわりの高級食材など約４９００アイテムを扱い、「デパ地下食料品売り場」と差別化した。

　一方で、コンビニエンスストアに対抗するため、店舗の一角に調理コーナーを設け、昼食時と帰宅時に合わせてコロッケや作りたてのおかず、弁当などを提供できるようにした。周辺のオフィス街で働くサラリーマンの昼食や単身者の夕食需要も見込み、少容量の総菜類も充実させている。

　同社は１１月、ＪＲ玉造駅前に「スーパーマーケットＫＩＮＳＨＯ玉造店」（仮称、大阪市天王寺区）を開業するのに続き、来年末までに、近鉄沿線の上本町駅（同）や菖蒲（あやめ）池駅前（奈良市）で、都市型の「駅ナカ」スタイルのスーパー３店を出店する計画。

　乗降客や近隣住民など多様な客層を持ち、近くに百貨店やライバルの量販店などを多く持つ天王寺店をモデルに店舗展開していく考えだ。

　同社では「消費者の買い控えが強まるなか、提供する商品や提供方法を工夫して、１日約４０万人もいる天王寺駅の乗降客を店舗内に引き入れたい」（菊井節夫常務）としており、今後、天王寺店での試みを他の駅ナカスーパーにも応用していくという。

　【写真説明】駅ナカスーパー出店が相次ぐ近商ストアのモデル店「ハーベス天王寺店」。奥に調理室を設け、作りたての揚げ物などで総菜売り場を強化した＝大阪市天王寺区のＪＲ天王寺駅構内