３０代独身　リストラには「会社都合」で戦う

　次なるリストラのターゲットが「文系・大卒・３０歳以上」になってきた。３０代独身は狙われやすい。会社に嫌気が差して辞めるにしても、言いなりになってはダメだ。

　ＮＰＯ法人「ＰＯＳＳＥ」が１８〜３９歳の労働者を対象に退職理由を調査したところ、約７割が「自己都合」と回答。ところが、そのうち４割近くが「雇い止め」などの「会社都合」になり得るケースだったという。

「自己都合」か「会社都合」か。これは大きな問題だ。会社都合なら、退職金は一般的に２〜３割増し。失業手当だって、会社都合なら「特定受給資格者」として優遇される。勤続年数が１０年以上２０年未満、３５歳以上４０歳未満の場合、自己都合だと１２０日しかもらえないが、会社都合なら２４０日。会社都合の場合、手続きから約１カ月後に支給されるが、自己都合は４カ月後だ。

　それなのに会社側はメンツとかカネの問題で、自己都合にしたがるケースが多い。社会保険労務士の稲毛由佳氏に“防衛策”を聞いた。

●退職届は提出しない

　リストラを行う際、会社側はそれとなく「辞めてもらえないか」などとあいまいな打診をするケースが多い。その言葉の裏には、「解雇」ではなく自己都合で退職させてしまおうという“思惑”がある。

「まずは『解雇なのかどうか』をしっかり確認すること。会社が解雇を認めなければ、『自分から辞めるつもりはない』とクサビを打ち、退職届は絶対に提出しない。〈一身上の都合により……〉なんて書いてしまうと、一発で自己都合になってしまいます」

　解雇なら「解雇予告通知書」と「解雇理由証明書」をもらっておく。会社が解雇予告を行った日の翌日から解雇までの日数が３０日未満だった場合、日数に応じて解雇予告手当が支払われる。解雇予告日が記載されている通知書は、手当を計算する際に必要だし、支払われなかったときの証拠になる。

　悪質な会社は、ハローワークに提出する「離職票」の離職理由の雇用主記入欄を勝手に自己都合にしているケースもある。会社側が修正に応じない場合は、ハローワークに異議を申し立て、解雇理由証明書を提出すれば話は早い。

●過去の給与明細は取っておく

　会社が解雇を認めない場合、給料が大幅に減額されるような嫌がらせを受けることもある。が、給料がこれまで支払われていた分に比べて８５％未満に低下した、または低下することになった場合、会社都合で退職できる。その際、過去の給与明細が大きな証拠になる。また、前出の解雇予告手当や未払い賃金を請求する際にも、明細が必要に。退職した月の最後の明細も必ずもらう。

　ほかにも、通勤が困難（２時間以上が目安）な事業所に異動させられたり、月４５時間以上の時間外労働が３カ月以上連続したことで退職する場合も会社都合扱い。タイムカードのコピーも手元に残しておくといい。

　もっとも、会社とモメて、交渉を長引かせるのは得策とはいえない。辞めると決めたら、次の転職先をイチ早く探すことの方が重要だからだ。

「自己都合にする代わり、解雇なら３０日分もらえる解雇予告手当を“解決金”としてほしい――そう会社に“和解”を申し出る手もあります」

　もちろん、最大４０日ある有給休暇もフルに使って就職活動すればいい。

（日刊ゲンダイ2009年11月30日掲載）