国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が7日、デンマークのコペンハーゲンで開幕する。京都議定書に続く、温室効果ガス削減の国際的な枠組みに向け、意味のある政治合意ができるかが焦点となる中、米中が矢継ぎ早に削減目標を打ち出すなど主導権争いも激化し始めた。交渉の現状や各国の思惑を報告する。
2大排出国の米中が相次いで削減目標を打ち出してから一夜明けた先月27日早朝。岡田克也外相の緊急招集で閣僚が国会に続々と集まった。だが、小沢鋭仁環境相ら閣僚は「鳩山由紀夫首相の国連演説が米中を促し、主導権を握れた」と自賛。国際交渉への対応は「今後精査する」とし、切迫感とは無縁の会合となった。
20年の温室効果ガスを05年比で17%削減する米国の目標は、90年比ではわずか4%足らず。中国の目標はガスの大幅増につながる可能性さえ高い。それでも「数字」を避けてきた米中の変化は国際社会で評価を受けた。この変化は、先月に北京で開かれた米中首脳会談でのエネルギー分野の包括提携合意で伏線が敷かれたという。国際交渉筋は「米中の削減も示し合わされたもの」と語る。
これに先立つ9月、鳩山首相は国連で「90年比25%削減」との大胆な目標を国際公約。世界をリードしたかに映った。しかし、米中などのしたたかな布石に、日本が翻弄(ほんろう)される局面が続く。
「世界の排出量を50年までに半減する」。先月15日、シンガポールで採択されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の共同宣言から、草案に盛り込まれ、日本政府も求めていた一文が消えた。交渉筋は「中国が最後まで反対した」と明かす。中国はさらに、新興国への技術移転なども盛り込ませた。米国もCOP15に7人もの閣僚級を派遣。交渉担当者は「米国によるCOPのハイジャックだ」と、半ばあきらめ気味に語る。
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「もはや日本には残されたカードはない」。澤昭裕・21世紀政策研究所研究主幹は厳しい見方を示す。各国は状況次第で数値を増減するフリーハンドを確保している。「日本だけ厳しい確定数値で、(25%だけで)交渉の幅もない」と疑問を投げかける。
鳩山首相周辺は26日、「勉強を始めたばかりだ」と声を潜めた。一時、世界をリードしたはずの日本だったが、「情報が取れない。外されてしまうのではないか」(政府筋)。27日の緊急会合が切迫感と無縁だったのは、「情報がないことの裏返し」との皮肉な指摘も出ている。
毎日新聞 2009年12月2日 東京朝刊