シュレーダー そのような移民だけを受け入れる有効な手段があれば、ほとんどの国が似たような移民政策を実施していることでしょう。しかし、現実にはそうなっていません。すべての国が、自国のニーズを満たすにはどのような方法がよいか、探し出そうとしているのです。
―― ドイツは1960年代、労働力不足を補うためにトルコなどから期間限定で移民を受け入れようとしました。しかし、結果的には、移民の流入を制御できなくなったという苦い経験があります。
シュレーダー 1960年代の移民政策は、期間限定で労働者を受け入れようとしました。一定期間働いたら祖国に帰し、その代わりに他の労働者を採用するという、いわゆる“ローテーション原則”と呼ばれるものです。
しかし、結果的に、非常に多数の外国人労働者がドイツに定住することになった。これには、労働者側と企業側の両方に理由がありました。
祖国に帰る代わりに家族をドイツに呼び寄せた
シュレーダー 企業側は、経験を積んだ労働者を手放したくなかった。一方、外国人労働者は次第にドイツを“祖国”と考えるようになり、祖国より生活インフラが整い給料も高いというドイツでの生活を享受し続けたいと思ったのです。
この制度は1973年に終了しましたが、それが逆に、多くの外国人労働者にドイツに残ることを選ばせることになったのでしょう。一度祖国に帰ってしまうと、もうドイツに戻ってくることができなくなるからです。
その結果、多くの外国人労働者が、本人が祖国に帰る代わりに家族をドイツに呼び寄せたわけです。
私たちは、当時の移民政策には、移民を社会に統合するという観点で欠点があったと認識しています。一時的に労働者を輸入するという当時の統合政策は、場当たり主義と言ってもよいものでした。
2世、3世がドイツ社会に溶け込めず
シュレーダー 当時の移民政策が限定的な成功しか納めなかったということは、現在、特定の地域で、例えば移民2世や移民3世がドイツ社会に十分に統合されていないという事実に如実に表れています。
この教訓を踏まえ、連邦政府は現在、移民がドイツ語を学べるコースを提供しているほか、(移民の中で多くを占めるイスラム教徒との相互理解を深めることを目的とした)「ドイツ・イスラム会議」を立ち上げるなど、国を挙げて統合政策を推進しています。
これは、移民がドイツ社会に参加することを手助けし、自らをドイツ社会の一員だと認識してもらうための重要な取り組みです。
―― 既に、ドイツ人と移民の間では、失業率などで大きな格差が生まれています。こうした格差を、統合政策によってどのように埋めていくのですか。
シュレーダー 移民の統合は、連邦政府の政策における優先課題の1つです。
2007年夏、連邦政府は400以上の具体的な対策を盛り込んだ「国民統合計画」を採択しました。