【萬物相】空軍パイロットの早期除隊

 2006年5月5日の子供の日、水原飛行場で航空ショーを行っていたA-37機は、機器故障により墜落した。殉職したキム・ドヒョン少佐は、墜落しながらも子供たちであふれる観客席をよけた。ショーの後、3歳と4歳の息子と遊ぶ約束をしていたが、果たせなかった。妻に内緒で用意した結婚記念日のプレゼントも渡せなかった。事故で殉職した空軍パイロットは20年間で50人に達する。空軍飛行大隊では、パイロットの妻が「夢見が悪かった」と大隊長に電話したら、飛行を取り消すのが不文律だ。

 空軍を辞めるパイロットが増えている。民間航空会社に移ったパイロットは04年40人、06年100人、昨年は134人だった。それも、義務的な服務期間を終えた42歳未満のベテランパイロットばかりだ。パイロットを一人養成するのに123億ウォン(約9億2000万円)かかるというから、国の損失は大きい。そのうえ、戦闘力の低下にもつながる。少佐・中佐が務めていた飛行大隊編隊長を、今は大尉たちが務めている。十数年間、同じ問題が繰り返されてきたが、軍は義務服務期間を延ばし、強制的に拘束しておく以外には対策を打ち出せずにいる。

 おととい、国会で空軍パイロットの早期除隊に関する討論会が行われた。官・民・軍が出席した公開討論会は初めてだった。現役空軍パイロットの63%が義務服務後、民間航空会社に就職を希望しているという調査結果が発表された。除隊の理由は、1日12時間という過度な勤務時間やストレスが24.1%、「昇進が保障されていない」が20.4%だった。飛行手当の現実化といった対策も話し合われた。

 パイロットたちは「カネだけで解決できる問題ではない」と言う。約230人の空軍士官学校、同期生のうち、大佐クラスまで昇進するのが約30人、将軍になるのは7-9人だけ。早期除隊するのは昇進の見込みがないパイロットたちだ。あるパイロットは「空軍での地位に絶望した」と話す。将軍は陸軍には324人いるが、海軍は73人、空軍は64人だ。空軍力は地上軍の火力の何倍も威力があるが、単純に兵力数だけで将軍の定員数を決めるためだ。空軍の将軍を10人増やすだけでも、パイロットの昇進のチャンスは大幅に増えるという。

 日本の航空自衛隊は、辞めていくパイロットがほとんどない。それは、65歳まで務めることができるからだ。イタリアは空軍パイロットの80%が大佐昇進を保障されている。有事の際、敵の心臓部を壊滅させる空軍の力は、戦争抑止の中核的な戦力だ。空軍パイロットはそうした誇りを胸に、黙々とつらい訓練や非常時の待機に耐えている。パイロットに不安な将来を心配させてはならない。パイロットに使命感と犠牲だけを強いていては、国の将来も不安なままだろう。

金泓振(キム・ホンジン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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