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単調作業が辛いビジネスマン、OLの方の精神的疲れを取り除く心理テクニック
朝から晩まで製造ラインを細かくチェックする作業。
ひたすらワープロで文字を打ち込む作業。
書類に判子を押し続ける役所仕事……。
こうした単調作業を好む人はわずかだろうが、現実問題として、この種の作業だけに従事している人は多い。
もういやだ、疲れた、という人生の嘆きが波のように押し寄せては消える。
肉体的にどこが疲れるというわけではないが、頭の芯にある精神的な疲れはいつまでも消えない。
こうした苦痛を感じているビジネスマンもまた驚くほど多い。
現在、ビジネスマンやOLの六割以上は、何らかの単調作業に従事しているのではないかという試算がある。
けれども、どこかの企業が単調作業に疲れた人々の疲労を軽減する方法をとっている、という話は聞かない。
実際、私の経験からしても、「我が社ではこういう方法をとっています!」という満足のいく話を企業家の口から聞いたことはない(せいぜい「休憩時間にラジオ体操」がいいところだ)。
これは不思議なことだ。
これではさぞや単調作業をしている方たちはやりきれないだろう、という慨嘆に似た気持ちに私は襲われる。
そこで、忙しいビジネスマンに代わり、私は「オフィスで簡単にできるストレス解消法はないか」という問題について調べてみた。
すると、意外に簡単に答えが見つかったのである。
「人間は色によって影響される動物」ですが、「色」は単諷作業で生まれるストレスの緩和にも利用できそうなのだ。
単調作業がなされるオフィスの壁紙は淡いピンクかベージュがよい
キーワードは、ピンク、ベージュにあり! これだったのだ。
ある教授が実験を行ったところ、ベージュは、
- 人の心を和やかにする
- 筋肉の緊張度を和らげる
という効果があることがわかったのである。
ピンク、ベージュなどの柔らかい色は、従業員のやる気を高め、疲労軽減効果を持つのだ。
そういえば、確かにオフィスの色をピンク(もちろんファストフード店などと違って、淡いピンクだ)にしているところが増えている。
ピンク基調の壁は歯科医院の治療室にも使われることが多く、できるだけ患者の気分を落ち着けてもらおうという配慮がうかがわれる。
単調作業をしたことがない、という人はいないと思うので誰でもわかるだろうが、同じ作業を続けていると、どうしてもイライラがたまり、肩こりがする。
そうした問題は、壁の色を変えることで、軽減できるのである。
もし、オフィス全体の壁を変更する予算がないのなら、机の上にベージュのテーブルクロスなどを置かせるか、ベージュの色彩の多い花瓶などのインテリアを置いても代用ができるだろう。
そして、そうした代用品で効果が認められたなら、予算の都合をつけて、壁全体の色に手を入れるようにしたらよいわけだ。
「色だけでバカな……」と思うかもしれないが、人間の心理は微妙なものなのである。
そして、こうした小さな物事にもきちんと目を向けることができるビジネスマンこそが、成功するのではないだろうか。
色の効果をビジネスに活かす「カラー・マーケティング」はまだ発展途上と言ってもよい分野だが、それでも十分な実験によって確認されているデータが蓄積されている。
ロンドンには、ブラックフライヤーズ橋というのがある。
知る人ぞ知る自殺の名所である。
いや、自殺の名所で「あった」と言ったほうが正確であろう。
なぜなら、今では自殺の名所ではなくなってしまったからだ。
もともと、ブラックフライヤーズ橋は、その名が示す通り、「黒」色の鉄橋であり、どことなく陰鬱な橋であった。
健康な人でさえ、橋の上にいるだけで、「死んでもいいかな」という奇妙な気分になり、おかしな錯覚に身震いするといわれていた。
ところが、である。
この橋の色を黒から緑色に塗り替えたところ、自殺者は三分の一に激減したのである。
これも、黒という「絶望」「死」を連想させる色から、縁という「生命」「繁殖」を連想させる色に変更することで、人間の心理に影響が与えられた結果である。
色の使い方しだいで、人を殺すのも生かすのも、自由自在。
まさに、「色恐るべし」なのだ。
まとめよう。
現在のビジネスでは、どうしても単調作業に従事する人たちが多数必要だ。
それ自体は、どうしようもないことである。
だがどうしようもないからといって、その疲れまでも避けられないということはない。
オフィスの色を淡いピンクやベージュに変えるだけで、疲れのいくぶんかは軽減されるはずだ。
上に立つ人物は、「みんな疲れたろう。もう少しだ、がんばれ」と励ますだけでは不十分である。
予算に都合がつくのなら、職場の色に気を配ってみよう。
こうした小さな配慮に気づくかどうか、こういったことも上司の大切な勤めなのである。-----
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「赤色」は、人間の時間感覚を狂わす
あなたはコンピュータの専門職を対象とした、人材派遣業務を行っているとしよう。
そのため、さまざまな会社から「こういう仕事のできる人はいないか?」との電話を受けるのは言うに及ばず、実際に会社に訪問してきて、話を聞きにくる人もひっきりなしである。
そこであなたは、訪問してくれるお客様の気分を良くするため、ふかふかのソファや内装のととのった接客室を特別に設けた。
経営自体は何も問題がないのだが、訪れるお客様が増えるにしたがい、「なかなか帰ってくれない」腰の重いお客様をどうすればよいか、という問題が生じた。
たとえば、人材のことだけでなく、IT革命だのインターネットの将来だのといったことまで長々と話し始めてしまうのである。
ありがたい悩みではあるが、会社としては大問題である。
ここでの問題は、「話は終わったからさっさと帰ってください」とは言えないことである。
こちらが時計をチラチラ見ているのにもかかわらず、おかまいなしに話を続けるお客様をさばくのは、なかなか難しいのだ。
あまり露骨にやりすぎるとお客様には嫌われるし、接客室のソファを硬いものに変えたり居心地を悪くすれば、さっさと退散してはくれるだろうが、会社自体の印象を悪くさせることになる。
担当の上司はこのジレンマに頭を抱え、どうしたらよいかとあなたに尋ねてきた。
上司の口振りからすると、別にあなたに正解を出してもらいたいというよりも、ただ自分の悩みを話したがっているようにである。
実は、心からあなたの才能を見込んでいるわけではないらしい。
だが、大学で色彩心理学を学んだあなたにとってみれば、こんな問題はたいしたことではない。
すぐにこう答えた。
「簡単ですよ。
接客室の内装を変える必要はありませんし、お客様を不機嫌にする必要もありません。
ただ、接客室の照明を赤系統の白熱灯にしてみてください。
ええ、それだけです。
それだけで、きっと今より早くお客様も帰ってくれるはずですよ」
これなら確かに螢光灯代だけしかコストはかからないが……。
上司は笑って聞いていたが、他になすすべがないのか、翌日にはさっそくあなたの言ったことを守り、接客室にある三つの照明をすべて換えてくれた。
すると、その日からすぐに魔法は効果を発揮したのである。
いつもなら一時間はソファにくつろぐはずの常連までが、さっさと退散したのである。
実は、ある心理学の実験から、
人間は赤色の光の下にいると、その他の光の下にいる時よりも時間を長く感じる
ということがわかっているのである。
あなたは、この原理をちょっと応用させてもらっただけである。
赤色の光は、いつもより短い時間で、普段と変わらない経過時間を感じさせることができ、そのため客の滞在時間を削ることができるのである。
ハンバーガー・ショップやファミリー・レストランなど、客の出入りの激しいお店では、すでにこの原理が使われているところもある。
赤色の光の下にいると、人間の時間感覚が狂ってしまい、それだけ「長居をした」と思わせることが可能なのである。
だから、実際には時間はたいして経過していないのに、「結構くつろいだなあ」と思わせることができ、お客を早め早めに回転させることができるのだ。
ファスト・フード店なら、ぜひとも利用したい原理だろう。
ファスト・フード店の椅子や内装の色が、わりときつい赤やピンクといった色をしていることが多いのも同じだ。
これらは不思議な魔法でもなんでもなく、赤色に秘められた人間の自然な心理に基づいているのである。
もしこの説明を信じられないのなら、次のような簡単な実験を自分自身で行ってみるのも面白い。
それは、交差点で止まった時、赤色の「止まれ」の信号をじっと見つめるものである。
すると、信号を見ていない時よりも、信号が変わるまでの時間がやけに長く感じられるはずである。
信号はきちんとコンピュータで管理されているから、赤色の信号を見つめる時だけ時間が長くなるわけではない。
頭ではそのことを理解していても、赤色を見ているだけで、「なかなか時間が経過しない」という変な気分を味わうはずである。
だからひとつのアドバイスとして、せっかちな人は赤色の標識を見ないほうがよい、ということも言える。
ちなみに、部屋の螢光灯を赤系統の色にすることには別の目的もある。
それは、「温かみ」を与えることができるということだ。
東洋大学の野村順一教授によると、赤、黄色、オレンジなどの色を使った部屋は、青、青紫などの色を使った部屋よりも、三度ほど温かみを感じさせるという。
この実験結果からすると、赤色の光のもとで接客するということは、お客に「温かさ」「ぬくもり」といった満足感を与えることにもなるようだ。
腰の重いお客を帰らせるのに、「さて、そろそろ……」などと言葉を使う必要はない。
わざとらしく時計をちらちら見る必要もない。
部屋の色を赤色に変えるだけで、お客は自分の足でさっさと帰ることになる。
もちろん、お客へ与える満足感が減るわけではないし、むしろ温かい心持ちで帰ってくれるのだから、願ったり叶ったりというものだ。