【北京・来住哲司】フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第3戦・中国杯は最終日の31日、当地の首都体育館で各種目のフリーがあり、男子は織田信成(関大)、女子は鈴木明子(邦和スポーツランド)の日本勢が優勝した。
ショートプログラム(SP)1位の織田はフリーでも1位となり、計239.58点。GP第1戦・フランス杯に続く優勝で、GP通算5勝目は日本男子として単独最多。GPファイナル(12月、東京)への進出一番乗りを決めた。SP3位のエバン・ライサチェク(米国)が2位、SP2位のセルゲイ・ボロノフ(ロシア)が3位。
女子SP4位の鈴木はフリー1位で計176.66点となり、GP出場2戦目で初優勝。SP6位の村主章枝(AK)は計145.99点で7位だった。SP2位のキーラ・コルピ(フィンランド)が2位、SP7位のジョアニー・ロシェット(カナダ)が3位で、SP首位の長洲未来(米国)は5位に沈んだ。
ペアは3季ぶりに戦線復帰してSP首位の申雪、趙宏博組(中国)が計200.97点で制した。
「シンデレラガール」の誕生だ。海外のシニアGP大会初出場の鈴木明子(邦和スポーツランド)がほぼノーミスの演技で、SP4位から逆転優勝。本人も「びっくりしすぎ」と目を丸くした。
冒頭の3-2-2回転の3連続ジャンプは3-2回転に自重し、続くダブルアクセル(2回転半)-3回転トーループはシークエンス付きの2連続ダブルアクセルに変更。「ダブルアクセル-トーループは朝の練習で調子が悪く、不安が残っていた。(ダブルアクセルを)降りた瞬間に変更を決めた」。無理をしなかったことで余裕のある演技を最後までこなすことができた。
今大会は長久保裕コーチから「リベンジだぞ」としったされて臨んだ。7年前、今大会と同じ会場で行われたジュニアGPシリーズ・中国杯で5位と惨敗。その後、摂食障害になって体重が15キロ減って32キロになり、表舞台から遠ざかった。復調した昨季はGP初出場のNHK杯で2位と大健闘。この日は「これだけ成長して戻ってきた場所で、いい演技をしたい」とリンクに立ち、24歳にしてGP初勝利をつかんだ。
3連続ジャンプとダブルアクセル-3回転を跳ぶ課題は次戦のスケートカナダに残したが、「90点あげてもいい」と長久保コーチの評価は高かった。鈴木は今年2月にバンクーバー五輪と同じ会場で開かれた4大陸選手権に出て「もう一度ここで滑ったらすごく幸せ」と思ったという。五輪代表争いに向け、遅れてきたシンデレラが強力な存在感を放った。【来住哲司】
○…日米両国籍の長洲はSP首位から5位に転落。3回転ループで転倒したほかは一見すると大きなミスなく終えたが、ジャンプの回転不足がループを含めて五つもあり、得点は伸びなかった。試合後は悔し涙を流し、「そんなに悪くない演技と思ったが、すごく恥ずかしいです。悔しいです」。それでも、昨季の不振から復調の兆しが見え、「五輪に向けて頑張ります」と前を見据えた。
2009年10月