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きょうの社説 2009年12月2日
◎新幹線の「新潟問題」 3県は粘り強く打開策を
新潟県が北陸新幹線の建設負担金の支払いを拒否している問題で、石川、富山、長野3
県の知事が、国と新潟県に問題解決を求める緊急声明を出した。前原誠司国土交通相は新潟県の拠出がなければ完成時期が遅れることを指摘する一方、話し合いでの解決を強調しており、3県も新潟と国交省の問題と傍観せず、もつれた糸を解きほぐす積極的な役割を担うのは当然である。新幹線開業後にJRから経営分離される並行在来線について、前原国交相は「地方に丸 投げでよいのか」との問題意識を重ねて示している。並行在来線の経営は沿線自治体にとって最も頭の痛いテーマであり、国交相の基本認識は新潟県も共有できるのではないか。国と自治体、JRとの間で整備新幹線をめぐる新たなスキーム(枠組み)の検討がこれから始まるなかで沿線の足並みが乱れたままでは納得できる結論を導くことは難しい。JRが並行在来線に引き続き関与する仕組みを含め、地方負担軽減を実現するためには「新潟問題」にいつまでも時間を費やすわけにはいかない。3県は粘り強く打開策を見いだしてほしい。 北陸新幹線では福井延伸が見送られ、新規着工の新たな基本方針がつくられることにな った。さらに金沢開業まで遅れる事態になれば沿線への影響は計り知れない。2014年度末までの金沢開業を確実にすることが最優先課題であり、そのことが福井延伸の道を開くことにもなる。 沿線県の会談に泉田裕彦新潟県知事が参加しなかったのは残念だが、まず3県知事が認 識を共有し、新潟と国交省で食い違う点を整理し、問題解決へ向けた環境を整える必要がある。前原国交相に対しては、新潟県の主張に配慮し、今後建設する各駅への列車停車の在り方を検討する専門チームを提案したが、協議のテーブルを設定するのも一つの方法である。 国交省は整備新幹線の建設主体となる鉄道・運輸機構に対し、工事の落札率や応札者数 などを関係自治体に報告することやコスト縮減に取り組むことを通達で指示した。これは新潟県が求めていたことでもあり、新潟側もそれに応じた姿勢をぜひ示してほしい。
◎日銀の金融緩和 政府と足並みそろった
日銀が追加的な金融緩和に踏み切ったのは、鳩山由紀夫首相とのトップ会談を前に、政
府との足並みの乱れを修正しておくためだろう。このタイミングでの実施は、政府からの強い要請にこたえるかたちになり、日銀の独自性を問題視する声も出そうだが、急激な円高株安状況を放置してはおけない。まずは政府と日銀が足並みをそろえた点を評価してよいのではないか。日銀は、新たな資金供給手段の導入で、10兆円規模の資金を供給し、やや長めの金利 低下を促す方針という。ただし、政策金利は据え置かれ、国債買い切りの増額もなく、材料的にはやや小粒な印象もある。より踏み込んだ対応を予想していた市場は、どちらかというと「期待外れ」の声が強いのかもしれない。 日経平均株価は、金融政策への期待感が株価を押し上げ、1週間ぶりに9500円台を 回復した。もっとも、これは詳細な内容が明らかになる前であり、東京外国為替市場は発表後に、円相場が1ドル=87円台半ばから86円台後半に上昇し、円高の流れに歯止めはかからなかった。今回の金融緩和ではデフレと円高対策への効果は必ずしも十分とはいえず、株価への影響力も限定的だろう。 日銀は、政府と歩調を合わせる姿勢を鮮明にしたとはいえ、政府との温度差はまだまだ 解消されていない。鳩山政権の本音は、国債買い入れの増額を望んでいたはずだ。日銀の白川方明総裁と鳩山首相との会談では、さらなる緩和要求が出される可能性もある。特に円高が急激に進むような局面では、日銀に対する政府の圧力は一段と増すに違いない。 政府はデフレと円高に対応するため、週内に取りまとめる新たな経済対策の方針を閣議 了解した。鳩山首相は、日銀の追加的な金融緩和策について、「デフレを止める思いを行動で示した」と評価したが、今度は政府が行動で示す番である。税収不足が深刻な中、家電のエコポイント制度の期限延長のような需要の喚起に有効な政策をどこまで打ち出せるか、鳩山政権の経済政策の実力が問われる。
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