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2009年12月01日

安井 至 (独)製品評価技術基盤機構理事長、東大名誉教授 経歴はこちら>>

「仕分け」でスパコン予算が削られたが…(3/4)



 今回の仕分けの対象となったスパコンは、ベクトル型を作る予定であったNECが辞退したため、クラスタ型なのだが、そこに使うCPUから開発しようとするもので、先進的だとも評価することができるが、普及しないCPUを作っても、決してビジネスには繋がらない。いずれにしても、CPUの開発費用は極めて多額であるため、とにかくコストが高い提案になっていた。

 こんなタイミングで事業仕分けが行われたのである。

 その後、著名な研究者から、様々な反撃が行われた。曰く、「スパコンを自国で生産できない国は科学技術の一流国ではない」。野依良治・理化学研究所理事長は、「科学をコストでとらえるのはあまりに不見識」。若手の研究者グループは、「このままでは日本の将来は危うい」と強調した、とのことである。

○コストパフォーマンスに説得力なかった

 しかし、本当に問題にされたのは、恐らくコストパフォーマンスであろう。最終的に約1230億円が必要と言われるこのコンピュータが生み出す計算結果が、他の比較的安価とされるクラスタ型のものとどのぐらい質的に、あるいは、時間的に違うのか。

 計算が速く終了すれば、研究者はその結果の解析に速めに取りかかることができる。これは、時間の有効利用になる。しかし、もしも研究者の待ち時間を短くすることが目的ならば、多少遅くても安価なコンピュータを多数配置する方が効率的なのではないか。

 こんな問いに対して、今回のプロジェクトは説得力のある解答を出せなかったのではないだろうか。

 ノーベル賞やオリンピックの金メダルは、数の多い方がうれしい。これはすべての国民が認めることだろう。しかし、スパコンが世界最高速であることを競って1位になったとしても、いずれあっという間にランキングは下がってしまう。それは、比較的長い間首位を守った地球シミュレータのランクの変動を見れば分かることである。

 →次ページに続く(国民レベルの支持が必要)

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