2009年12月01日
安井 至 | (独)製品評価技術基盤機構理事長、東大名誉教授 | 経歴はこちら>> |
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そのため初代の地球シミュレータは引退し、現在は2代目となってNECのSX-9モデルに置き換えられた。これも初代と同じベクトル型のスパコンである。最新のランキング(2009年11月)では、31位にまで復活している。
しかし、世界のトップと競うという点では、確かに、いささか力不足とも言えるだろう。
これは当然予想されたことであったため、次世代モデルの選定が行われてきた。2007年に文部科学省で次世代スパコンとして決めたのは、ベクトル型とクラスタ型の複合型だった。このプロジェクトの決定についても複雑な経緯があった。当初、NECが中心的な存在であったが、その後、日立・富士通も参画することになった。
○次世代モデル選定の紆余曲折
ところが、これらの3社のもっている技術が違う。NECはベクトル型を、そして、富士通と日立はクラスタ型に移行していた。ところが、現時点ではNECと日立が撤退を表明し、この事業も、参画する企業は富士通1社になってしまった。
クラスタ型という形式は、1枚の配線基板上に1台のコンピュータを作り、それを多数連結して、計算を分業させるやり方である。1台1台は通常のパソコンと似た構造であり、しかも、CPU(中央演算素子)も通常のパソコンの上位機種(サーバー用)を使うもので、比較的安価である。この方式は、地球シミュレータがデビューした2002年頃には、まだまだマイナーな存在だったのだが、2009年11月のランキングでは、100位までにランクされた機種の83.4%がクラスタ型になっている。
計算する課題の種類によっては、ベクトル型の優位性はあったのだが、今となっては、クラスタ型をいかに旨く使うかという時代になった。さらに、クラスタ型では多数のコンピュータが情報を交換しつつ作業を進めるのだが、その情報交換速度をどこまで速くできるか、などが問題だとされるようになっている。
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