2009年12月01日
安井 至 | (独)製品評価技術基盤機構理事長、東大名誉教授 | 経歴はこちら>> |
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事業仕分けが終わった。連日、新聞紙上を賑わした。様々な人々に感想を聞いてみると、「面白い」という人が多い。
これは、これまで見えないところで行われてきたことが、初めて衆目監視の舞台に上がり、いささかパフォーマンス混じりではあったが、真剣な議論のやりとりを見ることができたことを率直に喜んでいるものと思われる。もちろん、良い面を評価する意見ばかりではなく、逆効果だという主張を含めて様々な指摘もあり、それぞれもっともな意見だとは思った。
個人的に、今回もっとも興味をもったことが、先端科学技術の事業仕分けに関してであった。ノーベル賞受賞者が大々的な反論をしたことも、インパクトのある新聞記事になった。
しかし、先端科学技術への国家予算の配分について、何が本当の問題点なのか、今後、さらに突っ込んだ議論が行われるべきだ、と考えている。
○現状は“力不足”のスパコン
なかでも、もっとも話題になったのは、スーパーコンピュータ(以下スパコン)事業であった。その事業仕分けの結論は、「次世代スパコン開発予算(267億円)大幅削減」であった。
この計画自体はかなり古くから検討されていた。2002年にできた地球シミュレータと呼ばれるスパコンは、独立行政法人海洋開発研究機構が所有するベクトル型と呼ばれるタイプの計算機であるが、当時世界一を誇った設備であった。しかし、進化の速いこの世界ゆえに、能力的にも見劣りがするようになった。2005年6月のランキングだと4位を確保していたのだが、2008年11月のランキングだと、世界で73位まで低落してしまった。
しかも、余りにも大量の電力を消費する設備のため、運転経費が相当の高額になった。上記のリストの最後には消費電力が表示されているが、75位にランクされているIBMのBlue Geneという2008年モデルは、後で説明するクラスタ型と呼ばれる形式で、その消費電力が94.5kWであるのに対して、地球シミュレータの消費電力は3200kWもあった。
→次ページに続く(クラスタ型をいかにうまく使うか)
安井 至 | |
「仕分け」でスパコン予算が削られた・・・ | |
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