昨晩、日本語版『赤の書』の内容見本をご紹介しましたが、本日思いがけなくも、当該書籍の英語版(ノートン社)が届きました。アマゾン・コムに予約を入れていて、発送が早まりそうだとの通知は受け取っていましたけれど、まさか11月中に届くとは。アマゾンの箱を開けると、搬送用の特製函が出てきて、その中にシュリンクされたカバー装の『The Red Book』が入っています。シュリンクのせいでカバーにいささかしわが寄っているものの、まあご愛敬の範囲。思った以上に大きくて重いです。A3よりわずかに小さいくらい。そうですね、今年入手した本の中では森山大道の『北海道』と同じくらいの重量級大型本ですね。
英語版には、ドイツ語原文の転記はなく、すべて翻訳されていますから、写本の原文を一字一句確認したい場合は、英語版よりもドイツ語版を購入しなければならないでしょうね。写本のドイツ語をそのまま読むというのはしんどい作業です。ただただユングの写本そのものを芸術として楽しみたいという目的の方はパトモス社のドイツ語版(Das Rote Buch)よりも英語版の方がだんぜんお得です、現下のドル安のおかげで。ドイツ語原文と英訳を比較したいという方は、出費がたいへんですが、両方買わねばなりません。これ、テクストだけで将来的に売ってくれたりする可能性はないのでしょうかねえ。ありそうな気も大いにしますけど。テクストだけじゃ意味ないか。挿絵ごとサイズを縮小した廉価版希望。 中身を何枚か取ろうと思ったのですが、見開き二頁のみにしました。というのも・・・・やはりこれは現物を見て各自が受け取る印象というのが、かなり違うであろう気がしたからです。私が撮ったのは「なんだこれ?」感が一番強かった頁。左頁の顔みたいなもの、これは1919年12月4日に描かれたアトマヴィクトゥ(Atmavictu)だそうです。アトマヴィクトゥというのはDonald Kalsched著『The inner world of trauma: archetypal defenses of the personal spirit』によれば、「生の息」すなわち「精霊」を指すとのことです。写本の別の頁(117頁)では、アトマヴィクトゥは、足が無数にあるトカゲのような緑の蛇というか龍で、金色の太陽を食らおうしている姿が描かれています。編者による注を読むと、アトマヴィクトゥは太陽を食らおうとする蛇であり、ドイツ民話のコボルトという精霊でもあり、ユングにとっては老賢者フィレモンでもあるようです。以上はいくつかの注を拾い読みした断片的な理解なので、不正確かもしれません。 とにかく『赤の書』はそれ自体が一個の大いなるファンダジーとして、内なる世界の地平と深度を探求するための「鍵」となる書であろうと思います。創元社から2010年3月に発売される日本語版がとても楽しみです。ちなみに――なんたることか!英語版はすでに版元品切になっています。まだアマゾンなどでは購入可能のようです。また、ドイツ語版もまだある模様。
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