富山のニュース 【12月1日01時21分更新】

食物アレルギー抑制  葛根湯に新効果

マスト細胞に葛根湯の成分を加える門脇教授(右から2人目)ら研究グループ=富大杉谷キャンパス
 富大和漢医薬学総合研究所の門脇真教授(消化管生理学)らの研究グループは30日ま でに、葛根湯(かっこんとう)に含まれる成分が食物アレルギーを抑制することを世界で 初めて、マウスを使った実験で見つけた。食物アレルギーには従来、治療薬がなかったが 、研究グループは、根本治療につながる研究として今後、食物アレルギーに特化した漢方 薬「富山型葛根湯」の開発に取り組む。

 アレルギーは、通常は病原菌や寄生虫などの抗原に働く免疫が、無害な抗原に過剰に働 いて起こる生体反応である。日本国民の約3割が何らかのアレルギーとされるが、ほとん どは抗アレルギー薬で対処できる。一方、食物アレルギーには治療薬がなく、アレルギー を引き起こす食物を摂取しないことで症状を防いでいる。

 門脇教授らは、卵白アレルギーのマウスへ食前に漢方薬を施し、アレルギー症状である 下痢の有無を観察した。10種類以上の漢方薬を試した結果、葛根湯を施した場合で約8 割の個体に下痢がなかったが、葛根湯以外の薬では全く効果がなかった。

 食物アレルギーは小腸、大腸で有害異物を除去する粘膜型マスト細胞が、無害な抗原と 反応して起こる。この際、免疫グロブリンがマスト細胞と抗原をつなぐ。影山夏子助教ら は葛根湯に含まれる芍(しゃく)薬(やく)が、免疫グロブリンを捕らえるマスト細胞の 受容体を減少させたことを実験で確認した。

 また、山本武助教はマウスの約2万の遺伝子を調べ、葛根湯が、マスト細胞を活性化さ せるヘルパーT細胞の過敏な働きを抑制することも確認した。

 門脇教授は、人間の場合でも有効かなど、調査が必要とした上で「食物アレルギーの子 供が、成長期に卵や牛乳など栄養価の高い食品を食べられない問題の解消にもつながる」 と話している。国立成育医療センター研究所の斎藤博久免疫アレルギー研究部長は「根本 治療に向けて明るい見通しが開けた」と評価している。


富山のニュース