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「今後もビラを配り受け取る権利守る」 上告棄却の被告(2/2ページ)

2009年11月30日16時23分

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写真:政党ビラ配布事件で上告を棄却され、会見する荒川庸生被告(左)=30日午前11時50分、東京・霞が関、豊間根功智撮影政党ビラ配布事件で上告を棄却され、会見する荒川庸生被告(左)=30日午前11時50分、東京・霞が関、豊間根功智撮影

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 《解説》最高裁判決は荒川住職のビラ配りを「私生活の平穏を侵害するものと言わざるをえない」と述べた。外部者にはマンション内に立ち入って欲しくないという住民側の意思を重視した結論だ。確かに、様々な人が出入りすれば不安を感じる人はいる。プライバシーや防犯に対する社会全体の意識の高まりもある。

 だが、判決がもたらす影響を考えると、刑事罰を科すことには疑問が残る。

 荒川住職の上告を棄却した同じ第二小法廷は昨年4月、東京都立川市の自衛隊官舎で自衛隊イラク派遣に反対するビラを配った3人についても、有罪を維持する判決を言い渡した。このときの判決は官舎の状況や、3人が自衛隊向けのビラを度々配り、被害届が前から警察に出されていたことなどを考慮し、「法益侵害の程度が極めて軽微だったとはいえない」と被告側の主張を退けた。

 一方、荒川住職の場合は共産党の議会報告などを一般のマンションに配っていた。事件前に苦情を受けていたわけではなく、一審・東京地裁判決も指摘したように、立川の事件とは「相当に事案を異にする」のは間違いない。しかし、最高裁の判決はこの点について言及をしておらず、両事件の違いは罰金の額だけだということになる。

 今回の判決に従えば、ビラを配るために集合住宅に入ることは多くの場合、犯罪と認定されるだろう。そのことで得られる「平穏」と、表現の自由という、市民の大切な権利の行使を萎縮(いしゅく)させる影響とを比較すると、判決はあまりに形式的だ。

 仮に有罪とせざるを得ないとしても、自宅が強制捜査を受け、逮捕から起訴までの23日間、勾留(こうりゅう)が続くに値するほどの行為だったのか。この点についても、判決には、関与した4人の裁判官の意見がない。(中井大助)

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