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【社会】

「1度の過ちで人生が…」 社保庁職員の分限免職

2009年11月29日 朝刊

 来年1月に日本年金機構に移行する社会保険庁。懲戒処分歴のある職員は機構に採用されず、最大数百人が民間の解雇にあたる「分限免職」となる可能性が出ているが、対象の職員から「1回の軽率な行為で、人生が変わってしまうのか」といった声があがっている。これだけの規模の分限免職は異例で、日本弁護士連合会は処分歴による一律不採用は「二重処分を科すことになり違法」との意見を表明している。

 「身から出たさびとはいえ、不安で仕方ない」。東京都内の社会保険事務所に勤務する男性職員(47)が口にする。5年前、友人の年金納付記録をコンピューターでのぞき見した。年金記録問題と同時に業務外閲覧が批判を浴び、男性も減給処分を受けた。

 自公政権は昨年、処分歴のある職員を機構に採用しない方針を閣議決定。長妻昭厚生労働相も就任後、踏襲する考えを示した。

 男性は今年6月に官民人材交流センターに登録し再就職先を探すが、まだ決まっていない。高校生と中学生の娘を抱え、マンションのローンも残る。「過ちを取り戻そうと、一生懸命に仕事をしてきた。職を奪われるほど悪いことをしたのか」と自問自答する。

 愛知県内の社会保険事務所に勤める男性職員(35)は、ある政治家の記録をのぞき見して戒告処分を受けた。この政治家の不納付がメディアで報道され、確かめようという軽い気持ちだった。「世間の目が社保庁に厳しいのは分かる。でも当時は目的外閲覧を具体的に禁じる規定がなく、個人情報を漏らしてもいない」と話す。

 2人は分限免職になれば、処分取り消しを求めて提訴することも検討するとしている。

 社保庁によると、再就職先が決まっていない職員は約550人。このうち処分歴があるのは約300人で、処分理由は目的外閲覧が約8割を占める。

 

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