役割明確化 日本一導く(産経新聞) 日本ハム日本一の裏に高田繁ゼネラルマネジャー=GM=(61)の存在は大きい。かって「壁際の魔術師」と呼ばれたV9巨人の名外野手は、日本球界では初めてGMとして栄冠を手にした。札幌に本拠地を移して3年、昨年のリーグ5位から飛躍させた高田流GM術は、企業の組織論としても注目されるに違いない。 栄光は、札幌ドームのネット裏で見届けた。黒子に徹した2年だった。 「GMの仕事はペナントレースを戦う戦力を整えて監督に渡し、新たな戦力を発掘、養成していくこと。だからヒルマン監督の戦い方に口は挟まないし、逆に補強や育成はこちらの専権事項。それを明確にできた」 GM就任は一昨年の10月。日本ハムは1985年から4年間監督を務めて愛着があり、「フリーエージェント(FA)に頼らず自前で選手を養成するチーム作り」の方針が球団側と一致した。 ダルビッシュ有にマイケル中村、翌年の八木智哉、武田勝と、今年、大活躍した4投手はいずれも就任後2年間で加わった戦力だ。ダルビッシュの父親を説き伏せ、中村はロッテの動きから指名順を繰り上げた。八木は希望枠での獲得だった。 1,2番の森本稀哲外野手と田中賢介内野手は機動力を生かすべく育てた。今年のレギュラー定着の裏にはGMの助言がある。さらに大リーグを目指した稲葉篤紀外野手の動向を辛抱強く探り、中継ぎの左腕岡島秀樹投手は開幕直前に巨人からトレードで獲得した。 「スカウトが得たあらゆる情報は私のところで一元化される。短期と長期の視野に立ち、どの選手を獲得するか、最終的に私が直接見て決める。育成は担当者の情報をもとにファームスタッフたちと練り上げていく」 手元から離さないパソコンに補強対象から選手育成、編成のあらゆる情報が詰まっている。1億円近い巨費を投じて独自に開発したベースボール・オペレーション・システム(BOS)だ。それを基に補強、育成が一体化され、できあがった戦力をヒルマン監督に渡す回路を確立した。 日本球界初のGMは1995年から2年間務めた千葉ロッテの広岡達朗氏。以後、高田氏も含めて5例あるが定着したとは言い難い。広岡氏は当時のバレンタイン監督の采配に口を挟んで衝突、役割が明確でない日本的な野球のあり方が災いした。 その事例を念頭に、西武、ダイエーをトップ球団に育てた故根本陸夫氏の手法を探り、GM像をつくりあげた。「まだ発展途上、今年は幸運に恵まれた。球団の理解も大きく、外国人監督だから役割分担をよくわかってくれた」と言葉を選ぶ。 だが、徹底した情報収集とその一元化、それを基にした人材発掘とフロントと育成スタッフが一体化した育成方式、さらに実際に現場で指揮をとる監督との完全分業化の仕組みは、ビジネスの世界、組織運営に通じるものがある。