きょうのコラム「時鐘」 2009年11月30日

 特急で敦賀に行くはずが、京都まで運ばれたことがある。素通りに気付くのが遅れた。そんな列車があるとは知らなかった

駅でも車内放送でも何度も案内した、と車掌にたしなめられた。お粗末な失敗である。失礼ながら、わが首相も、ときに注意力が欠けるとみえる。母親から巨額のカネをもらいながら、「私の知らないところで」という弁明である

自分の非を棚に上げていうと、駅の放送は親切過ぎる。列車の発着案内に加え、危険だから下がれ、離れろと注意される。車内では痴漢の通報依頼まである。情報が多いと、肝心なものをつい聞き落とす

多忙を究める首相の耳には、さぞ多くの情報が集まるのだろう。だから注意の行き届かぬこともあるとは察するが、それにしても巨額なカネの流れが「知らないところで」とは、どうにも理解しがたい

鳩山さんは総選挙の金沢遊説の折、宣伝カーに2度上がった。誰もが聞きたい北陸新幹線の建設促進を言い忘れて演説を終え、周囲に促されて再度マイクを手にした。カネに対する弁明は、あの最初の演説に似ている。聞きたいことを、話していない。