総計371通というたくさんのご応募、ありがとうございました。今回、フリー部門で計6作品に賞を差しあげます。一部門では過去最多の受賞者数で、いずれ劣らぬ秀作です。ただ、それぞれ優れた部分がありながらも、もう一歩の踏みだし、完成度が足らず、金賞までは至りませんでした。一方、テーマ部門は「つき」というテーマの扱いが難しかったのか、残念ながら受賞作を出すことができませんでした。
フリー部門銀賞の「若火之燎于原」は、物語の運びがうまく構成力の確かさを感じました。ですが、設定の説明が不足している部分も多い。「イモムシランデブー」は「キモイ」と嫌われそうな描写を積み重ねながら、読了すると爽やかな後味が残る「青春小説」に仕上げた技量に感心しました。キャラクター造型も達者です。描写の踏みこみが甘い場面が散見されるのが惜しい。銅賞の「千里がいる」は闇を抱えた謎の少年と彼にふりまわされながら成長していく主人公、ふたりの描写が実に上手い。ただ少年たちの描写に「小学生らしくない」ところが多すぎる点が気になりました。「有限会社もやしや」は、登場する数多いキャラクターたちが実に楽しく面白く、ギャグも効果的で文章力はきわめて高い。ただ、狙いでもあるのでしょうが物語以外の寄り道要素が多すぎる感は否めません。「『いかにもってかんじに呪われて荘』の住人」は、特徴的な文体、突飛なキャラ造型、ひねった構成、と「尖った」部分はきわめて優れた小説です。しかし、全力投球、一本調子で緩急がない未熟さも目につきます。「シーナくんのつくりかた!」は、主人公ふたりのやりとりの味わいが実にいい。ただ、それ以外の構成、描写に難があり、特別賞という形となりました。イラスト部門の3人は将来性の豊かさ、「伸びしろ」の大きさを感じさせます。受賞者の皆さん、これからともに頑張りましょう。そして皆様、次回のご応募、お待ちしております。
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