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きょうの社説 2009年11月29日
◎5回目の金沢検定 学びの輪は世代を超えて
第5回金沢検定の結果が発表され、初級合格者の最高齢、最年少記録が更新された。卒
寿を迎えた高齢者と、ひ孫世代の子どもが同じ問題に挑み、見事に同じ合格バッジを手にしたわけだ。自分たちが暮らすふるさとに愛着を持ち、もっとふるさとを知りたいと意欲を燃やす人々の「学びの輪」が、世代を超えて着実に広がっている様子がうかがえ、喜ばしい限りである。今回は、特に子どもの健闘が目立った。10代の初級合格者3人はすべて小中学生であ り、最年少記録を塗り替えたのは小学4年生の女子児童だった。彼女は1歳上の兄と競うように学び、そろって難関を突破したという。これまで初級の最年少合格記録を保持していた中学2年生の男子生徒も、今度は10代以下で初めての中級合格を果たした。 こんな「快挙」が生まれた要因の一つとしては、金沢市が実施しているジュニアかなざ わ検定をステップにして、金沢検定に臨む流れが定着しつつあることが挙げられる。子どもの金沢検定受験を後押しするため、市は今年、ジュニア検定の高得点者を対象に受験料の一部を補助する制度を導入、検定当日には高得点者向けの特設会場も設けられた。市や各学校などには、意欲ある子どもをより高い目標に導くための一層の工夫と努力を求めておきたい。 大人と子どもが同じ目標に挑戦できるのも金沢検定の面白さの一つであり、頑張る子ど もが増えれば、大人にとってもいい刺激になるに違いない。大人が子どもに教えるのもいいが、時には子どもから教わることもあっていい。学校の中だけではなくて、家庭や地域でも楽しみながら学び合い、「ふるさと愛」をさらに大きく育ててもらいたい。 金沢では最近、藩政期の遺産である金沢城跡や前田家墓所、茶屋街、寺院群、用水など の価値を見直し、文化財指定を目指す取り組みが活発化している。金沢検定が回を重ねるにつれて盛り上がってきた学びの熱気は、そうした動きを加速させ、ふるさとの魅力に磨きをかけていくための原動力にもなるだろう。
◎肝炎法案成立へ 高めたい議員の立法能力
議員立法の肝炎対策基本法案が衆院を通過したのに続き、参院厚生労働委員会でも全会
一致で可決され、今国会での成立が確実になった。超党派の議員提出法案の成立は、鳩山政権で初となる。民主党は原則として議員立法を認めておらず、肝炎対策法案の提出は例外的な措置であるが、議員立法の制限は大きな問題を含んでいる。肝炎対策法案を超党派の法案づくりの良い前例とし、議員の立法能力を高めていくことを民主党に望みたい。民主党執行部が、一般的な政策に関する議員立法を認めない方針を打ち出したのは、政 策決定を政府に一元化し、いわゆる族議員の出現を防ぐためとされる。党の政策立案や立法作業を担ってきた政策調査会は事実上廃止され、法案提出を望む議員は、各省庁の政務三役と与党議員が協議する「政策会議」に参加して意見を述べることになる。 政府提出法案が族議員にゆがめられるような事態をなくす狙いもあるのだろうが、議員 の法案提出の道を閉ざすことには、国会を唯一の立法機関とする憲法上からも疑義を唱える声が多い。 野党時代の民主党は多くの議員立法を行って政権担当能力を養ってきたはずである。立 法能力は政党の生命線と言ってもよく、それをめる場や機会を議員から遠ざけることは、政治主導で官僚依存から脱却するという党の理念にもそぐわないのではないか。 30日に成立予定の肝炎対策法案は、与野党それぞれが原案を持ち寄り、国の責任をよ り明確にする内容に修正して一本化した。こうした議員立法は、関係省庁の対立で政府の法整備が進まない場合などにも有効であろう。 今国会で肝炎対策法案の議員立法が実現したのは、福田衣里子衆院議員らの要望を小沢 一郎幹事長が聞き入れたためという。原口一博総務相も、来年3月末で期限切れの現行過疎法を延長する法案の議員提出について、小沢氏の了解を取り付けている。議員立法は推奨しても、その可否が小沢氏の胸一つで決まるような状況には、首をかしげたくもなる。
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