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■[補習授業]奇跡の慰安歌手 渡辺はま子の物語

　大尉は何故軍人をやってるんですか？

　他に飯を食う方法を知らんからさ。だから未だに嫁さんももらえん。

　カミーユ、急にどうしたんだ？

　戦うのが嫌になったんですよ。

　カミーユ、それでは貴方は死ぬわよ！

　すいません。でも僕には戦いなんて似合わないです。靖国だ反日勢力だなんて僕には解りませんよ！

　カミーユ、君は渡辺はま子という人物を知っているか？

　いえ・・。誰です？

　慰安歌手ですね。本で読んだ事があります。

　あぁ、彼女を知ると君も戦う意義が解るだろう。

　大尉・・・教えて下さい！

　私からも頼む。パイロットがこれだと作戦に影響する。

　そのつもりだ。

　そういう訳で今日は慰安歌手渡辺はま子の物語よ。

　慰安歌手って、あの戦争の？

　あぁ、渡辺はま子は主に中国、満州で慰問コンサートをやっていた。

　天津で敗戦をむかえたのだけれど、収容所でも引き揚げ船の中でも歌い続けたのよ。

　プロですね。

　人気あったんですか？

　あぁ、内務省から「甘い歌い方が官能的」として発禁処分を受けた程の人気歌手だ。

　元々慰安歌手は楽しみにされてたから当時の兵隊さんも大喜びでしょうね。

　敗戦後、彼女はどうしたんです？

　当時の日本では戦犯の家族まで苛められてる状況でな。

　ひどい話ですね・・。

　あんな優しかった兵隊さん達が悪い人な訳ないわ！

　と、巣鴨拘置所、傷病兵、戦犯家族を慰問して歌いまくるようになるのだよ。

　カミーユも知ってると思うけど、戦犯なんて罪をでっちあげられた人も多かったから特にね。

　はい。戦争に負けるって悲惨ですね。

　渡辺はま子は元々ヒット歌手なので、このニュースは広がる。

　当時100人以上のBC級戦犯がいたフィリピンのモンテンルパ刑務所にも伝わったわ。

　加賀尾秀忍という教誨師の僧侶によってな。

　戦後6年近く経った昭和２６年の話だ。

　彼らはどうして何年も？

　フィリピン政府は身代金材料にしようと思っていたんだろうな。

　かわいそう・・、それでどうなったんです？

　そんなに戦犯の事を考えてくれてるなら、自分達の歌を歌ってもらいたいと囚人達は考えたのさ。

　確か、彼らは処刑された人もいるんですよね・・・。

　あぁ・・、14人が処刑された。ちなみに死刑前の仲間への挨拶は「生きて帰る人があれば、日本の再建を頼みます！」

　うぅ・・・。

　はま子さんは海外にまだ戦犯として拘留されてるなんて知らなかったの。

　その話は、たまたま渡辺はま子の歌を聴きにきたフィリピンの駐日大使デュラン大使から聞いた。

　じゃあ彼女はフィリピンに飛んで行ったんです？

　カミーユ、そんな事できないのよ。一般人の渡航は禁止されてたのだから。

　行きたいのは山々だったろうな。慰安も申し出てる。

　仕方が無いので彼女は銀座でお香を買ってそれを刑務所に送ったのだ。

　それだって許可がいるんでしょうね。

　歌は、歌はどうなったんです？囚人達の歌は？

　あぁ、死刑囚代田銀太郎作詞、同じく死刑囚伊藤正康作曲でとうとう完成した！

　二人とも行った事も無い場所での虐殺容疑。

　ひどい・・。

　名曲「あゝモンテンルパの夜は更けて」だ。

「ああモンテンルパの夜は更けて」

作詞：代田銀太郎

作曲：伊藤正康

唄：渡辺はま子・宇都美清

１（男）

モンテンルパの　夜は更けて

つのる思いに　やるせない

遠い故郷(ふるさと)　しのびつつ

涙に曇る　月影に

優しい母の　夢を見る

２（女）　

燕はまたも　来たけれど

恋し我が子は　いつ帰る

母の心は　ひとすじに

南の空へ　飛んでゆく

さだめは悲し　呼子鳥(よぶこどり)

３（女）　

モンテンルパに　朝が来りゃ

昇る心の　太陽を

　（男）　

胸に抱いて　今日もまた

強く生きよう　倒れまい

　（男女）

日本の土を　踏むまでは

　うああぁぁ！！泣けるじゃないか！

　「あゝモンテンルパの夜は更けて」。色々な想いが込められてるでしょうね・・。

　届けられたこの歌詞と曲を見た者は全員涙したらしい。

　全員・・？何でですか？

　トイレットペーパーにヨードチンキで書かれていたからさ。

　うああぁ！何てこった！

　紙もペンも与えられて無かったのですね・・。

　ともかく渡辺はま子はすぐビクターに持ち込み「あゝモンテンルパの夜は更けて」は発売された。

　売れたんですか？

　バカ売れよ。20万枚の大ヒット。

　やるじゃないか！

　これでフィリピンの受刑者の事が思い出されますね！

　あぁ、良い啓蒙にもなったろう。

　だがなカミーユ、これを叩く輩もいるのだよ。

　誰なんです！

《昭和二十七年九月二十五日の朝日新聞の夕刊に「不愉快なレコード」というコラムが掲載された。執筆者は、国際的な指揮者の近衛秀麿、戦前の総理大臣近衛文麿の弟である。モンテンルパの獄舎に刑死を待つ人から、その心境を作詞作曲した悲歌が日本に送られてきて最近レコードとなったことに対する近衛の辛辣な意見であった。この歌とは、渡辺はま子のヒット曲となる「あゝモンテンルパの夜は更けて」である。近衛のコラムには、はま子の実名こそ挙げていないが、「この歌とナンセンス渡世の流行歌手とはミスキャス（不適切）」であるとの渡辺はま子に対する痛烈な批判である。

「新聞記事に抗議文をだすも、残念、握りつぶされた。寝られず」。この記事をそっくり日記に書き写して、はま子は悔しさをにじませている。はま子にとっては、まったく思いもよらぬ屈辱的な批判記事であった。

「いつの世にも、他人の善意を曲解し、なにもできないくせに偉そうな批判をして足を引っ張ろうとする輩がいます。こっちのほうがよほど不愉快で苦々しく、はま子さんの爪の垢でも煎じて飲ませたいものだ、とあのとき思いました」と当時のはま子を知る復員局の植木信良は言う。》本文より

[なんだか粤っぽい　〜小心ものは地を滑る | 2005年6月]

　またお前らか！！

　何もできないのに偉ぶるものではなくてよ！

　全く。今と変わらんな。

　朝日はよっぽど戦犯擁護が気に食わなかったらしいな。

　お前ら！受刑者は、受刑者は助けてくれるのを、ずっと、ずっと待ってるんだぞ！

　助からないとは思ってたと思うけどね。

　でも結局慰問には行けないんです？

　いや、その頃にはデュラン大使もはま子の大ファンになっていた。

デュラン　渡辺はま子のモンテンルパ慰問を許可しビザを発行します。

　な、何かこんな気分でビザ出していいのか解らないけど有難う！

　よかったですね。とうとう慰問が実現して。

　そうね。モンテンルパ刑務所での第一声。

　皆さん、やっと来ましたのよぉ！

　本当によく来れましたね。

　昭和２７年１２月２５日慰安コンサート　挨拶のスピーチはこれだ。

　本当に一生懸命、来ました。もっとたくさんお土産を持って来たかったんです。

だけど自分が来られるかどうか。わからなかったものですから。

なにも買うこともできないで、ただ走り回って、やっと自分だけ来ました。

だからみなさんに、あれもしたい、これもしたいと思っていたんですけどなにもできないで……ただ一生懸命歌って……

[三銃士]

　凄い人だ・・・。本当に。

　12月でもフィリピンは暑いのだけれど、はま子さんは振袖で頑張って歌ったわ。

　泣かないと彼女は決めてたようだが、受刑者達が泣くのでな、泣きながら歌ったようだ。

　フィリピン人看守達も感動して歌を唱和したらしい。

　凄い空間ですね・・。

　随行してたデュラン大使も泣いたわ。そして言ったの。

デュラン　禁じられていた 「君が代」をお歌いなさい。私が責任を持ちます。

　有難う・・・。うっ・・(泣)

　禁じられてたのですね・・。

　一同が起立して、祖国の方に向かって泣きながら「君が代」を大合唱をしたの。

　君が代反対の人達は彼らの気持ちを一度考えてみるのだな。

　全くですね・・。

　そしてこの時渡辺はま子は決心する。

　この兵隊さん達を日本に帰したい！

　そう思うでしょうけど・・・。

　あぁ、一般人にどうにかなる話じゃない。今までも政治的な活動には彼女は手を出さなかった。

　何故です・・？

　政治の難しい話はよく解らなかったからだ。

　何となくそんな気がしてました。

　でもそれが彼女の強みでもあるの。

　はま子は帰国してから音楽番組のラジオで呼びかけるのだよ。

　この『ああ、モンテンルパの夜は更けて』は今もフィリピンで囚人生活を送っている死刑囚が作った歌です。

彼らが日本へ帰れるように署名を集めたいと思います。

お願いします！兵隊さん！

　いいぞ！動けよ、動いてくれ兵隊さん！みんな、みんなには解るはずだ！

　署名で何とかなるものなんですか？

　いや全然。何せ大事な賠償金のネタだからな。だが何もしないより良いだろう。

　でもこの署名活動がはま子さんもびっくりする位拡大したの。

　・・・軍人達ですね。

　あぁ、戦時中に彼女の慰安コンサートで元気づけられた兵士達だ。各地でモンテンルパ恩赦嘆願署名隊が組まれた。

　だが、当時は今よりもっとひどい状況だからな、多くの人が戦犯解放に協力するのを拒んだ。

　ふざけるな！無実の人間だって一杯いたんだろ！

　無茶言わないでカミーユ。戦後は戦中を全否定していたの。署名一つでもかなりの勇気がいる事よ。

　でもっ！

　安心しろカミーユ、署名部隊は渡辺はま子に慰安された兵士達だ。こんな感じで彼らは歩き回った。

隊員１　「山田村、私の部隊が担当します！」

部隊長　「よし！行ってこい！川田村はどうなった？」

隊員２　「完了しました！全部の家を回りました！200件署名集めました！」

部隊長　「ご苦労、引き続き県西部を回ってくれ。」

隊員２　「了解であります！」

　やるじゃないか！流石軍人だ！足を使うんですね！

　凄いわ・・・。

　元々日本人はこういうマメさがあるのでな。期待していい。

　それで署名活動の裏で、フィリピンに行って釈放嘆願をするという計画が進んでいたの。

　代表の加賀尾和尚がフィリピンのキリノ大統領に開放嘆願面会をしようとデュラン大使に申し込んだのさ。

デュラン　お気持ちは解りますがキリノ大統領は家族を日本軍の空爆で殺されてて日本を恨んでますし釈放は無理ですよ。

　こうは言ってもちゃんとセッティングしてくれたのよ。

　まぁフィリピン人はアメリカの空爆で死んだ人の方がよっぽど多いんだが、キリノ大統領は妻と娘を日本軍の空爆で亡くしている。

　ここでキレイ事では済まない事があってな、キリノ大統領に会うのにフィリピン政府要人から金を要求されたらしい。ワイロだな。

　会うのにも金がいるのか・・。

　汚い話かもしれないけど、こういうのが必要な場合もあるのよカミーユ。

　ちなみにその金は岸信介が用意した。幾らか解らんがな。

　安倍さんのお爺さん？

　そうよ。彼も裏で色々動いていたらしいわ。

　だから私は今拉致関連で健闘している安倍長官の気持ちも本物だと信じたい。

　お爺さんを尊敬してるって、こういう事なのかもしれませんね。

　安倍さん、これからも頑張って下さい！僕も、貴方を信じますから！

　話はそれたがとうとうキリノ大統領と加賀尾和尚が対面する事になる。昭和２８年５月１６日だ。

　元々無茶な交渉だから、彼はちょっと変わったやり方をしたの。

　『ああ、モンテンルパの夜は更けて』のオルゴールを黙ってキリノ大統領に渡したのさ。

キリノ大統領　・・・この悲しい曲は何か？

加賀尾　『ああ、モンテンルパの夜は更けて』という戦犯者が作ったものです。

キリノ大統領　そうか・・・・・。

　これは効果的だ！効いてますよ。

　加賀尾和尚も策士ですね。

　ちなみにこのオルゴールは元軍人のオルゴール職人が出来たばかりのアルバム式オルゴールにこの曲を詰めて

はま子に送り、はま子がフィリピンに行く加賀尾に送ったものだ。

　色んな人の力が集中しているのか・・。

　キリノ大統領もこれは効いたみたいね。

キリノ大統領は、妻と３人の子供を日本軍に殺されており、

どうせ加賀尾も、涙でも流して、戦犯を釈放してくれと泣き落としにかかるのだろうが、そんな涙には騙されないぞ、と身構えていた。大統領は後にこう語っている。

ところがそうではなかった。何も言わないのだ。黙ってこのアルバムを土産にと手渡しただけなのだ。開いてみる

と、中からもの哀しいメロディーが流れてきた。「この曲は何か」と聞くと、「あゝモンテンルパの夜は更けて」という曲で、戦犯者が作ったものだという。

言葉の代わりに、音楽をアルバムに仕込んできて、それを黙って手渡された。それが私の心の琴線に触れた。私は初めて、心を動かされた

◎そのメロディーはこちら

　言葉より威力がある事ってありますよね。

　そうだな。これでキリノ大統領は家族の事を語り出す。

キリノ大統領　妻は料理が上手な女だった。僕は酋長の家系だから、溶け込むのに苦労はしてたけど頭が良かったから上手くやっていたよ。・・・子供は3人目の娘が生まれたばかりだった。

・・・二人目の娘は体が弱くて心配していたが元気になってきた所だった・・。

・・・でもマニラが爆撃されたんだ・・。*1

　かわいそう・・・。

　全員亡くしてしまったのね。

　何で突然家族の事を？

　恐らく気持ちに区切りをつけたかったのだろうな。その後こう言ってる。

キリノ大統領　７月４日の独立記念日には日本人を二人釈放してあげましょう。

この二人というのは小池君と藤崎君です。戦争中、私が捕虜になっていた時、こっそりとかばってくれたんです。

この二人については早くからなんとかしたかったのです。

　釈放が決まった！

　凄いわ！

　二人だけだが、大きな一歩だな。

　加賀尾和尚も大泣きしたらしいわ。

　一人でも二人でも嬉しいですよね・・。

　あぁ、だがこれで終わりにする訳にもいかんからな。加賀尾和尚はフィリピンに残って他の受刑者の解放要求を続ける。

　6月27日、その加賀尾はマラカニアン宮殿に呼び出される。

　７月４日の独立記念日を機会に、一部の者に恩赦、釈放の恩典を与えるので、それに値すると認められるものを指名せよ

　やったのか！？

　二人だけじゃないんですね！

　どうして恩赦が増えたんです？

　モンテンルパ刑務所の所長が進言してくれたの。

　彼は生で渡辺はま子の『ああ、モンテンルパの夜は更けて』を聞いて感動したようだ。

　有難う！所長さん！・・歌って、凄いんだな・・。

　だがこの決定は翌日に全く違うものになる。

　ちょ、ぬか喜びなのか！？

　慌てるなカミーユ、こうなったのだよ。

昨晩５００万人の戦犯釈放嘆願署名が届いて考えが変わった。

死刑囚、無期刑囚を全員釈放。

死刑囚は無期に減刑して、日本の巣鴨に送還するものとする。

　うああぁぁぁ！全員、全員帰れるのか！

　凄い、凄いわ！

　署名部隊もよく頑張ったのだな。全員帰国決定だ。

　ご、500万の署名って・・・。

　流石軍人ね、叩かれながらも足を使って集めたんでしょう。ちなみに当時の日本最多署名よ。

　あぁ、街頭署名だけでなく、地図をエリア分けして短期間で効率よく回ったらしい。

　作戦行動ですね。軍隊らしいな・・。

　当時の状況でここまで集めるか。

　皇軍の兵士は化け物か！？と言った所だな。

　何て奴等だ！感動した！

　とにかく渡辺はま子さんの「この兵隊さん達を日本に帰したい」という悲願は叶ったのよ。

　慰安歌手が外国の政府を動かす・・。凄い事です。

　素敵な話ですね・・・。

　当時から外務省が何もしてない気がするが、まあ言わんでおくか。

　日本政府も衆参両院で感謝決議をしてるわ。

この恩典を与えられたことは、一人本人およびその家族のみならず、日本国民のひとしく喜びとするところである。

　7月15日、加賀尾も含めた帰国者111名が日の丸を掲げた白山丸に乗り込む。この日の丸を見るのも彼らは久しぶりだったのでな。泣きっぱなしだったらしい。

　日の丸反対運動の奴等には、解らないでしょうね・・。

　最低9年ぶりの帰国だったらしい。嬉しいだろう。

　船の一等サロンには祭壇が設けられて、処刑された17人の遺骨も一緒に乗せられてたわ。

　加賀尾和尚がフィリピン政府の許可を得て掘り返したのさ。仲間たちの願いでもあったらしい。

　それ・・、解ります。

　処刑された人も一緒に帰れたのですね。

　白山丸は横浜に到着した。出迎えたのは2万8千人の大群衆だ。

　そ、そんなに沢山の人が！

　その中にはもちろん渡辺はま子さんも。そして歌ったわ。

「ああモンテンルパの夜は更けて」

作詞：代田銀太郎

作曲：伊藤正康

唄：渡辺はま子・宇都美清

１（男）

モンテンルパの　夜は更けて

つのる思いに　やるせない

遠い故郷(ふるさと)　しのびつつ

涙に曇る　月影に

優しい母の　夢を見る

２（女）　

燕はまたも　来たけれど

恋し我が子は　いつ帰る

母の心は　ひとすじに

南の空へ　飛んでゆく

さだめは悲し　呼子鳥(よぶこどり)

３（女）　

モンテンルパに　朝が来りゃ

昇る心の　太陽を

　（男）　

胸に抱いて　今日もまた

強く生きよう　倒れまい

　（男女）

日本の土を　踏むまでは

　本当に・・、本当に良かった！

　感動する曲です。

　色々な人の力があるがな、結局のところこの歌が彼らを救ったのだよ。

　はま子さんや加賀尾和尚や軍人さん達も、戦犯の家族まで後ろ指を刺されてた時代に、よく・・・。

　むくわれて良かったわ。

　国会でも盛り上がったようだな。

当時の参議院本会議

海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員長

山下春江：

８年という長い間、異国の獄中、苛烈なる運命に耐えて来られた、これらの人々を迎えるこの日の母国は、折からのつゆ空もめずらしく晴れわたり、岸壁を埋めた数万人の出迎人のどよめきの中に、戦友の御遺骨をしつかと抱いて、白山丸から歩一歩静かに祖国の土におり立つた方々の深刻な苦悩を刻んだ悲壮な姿は、人々に深い感銘を与え、群衆も一瞬鳴りをしずめたのでございます。（拍手）続いて、御遺骨に対するしめやかな拝礼が行われている一方には、上陸第一歩とともに自由の身となつた方々を囲む晴やかな歓声があがり、またその一方には、黙々として巣鴨の鉄窓の中に送り込まれる一団の方々がありました。まことに悲喜哀歓、あらゆる感激の場面が展開され、名状しがたい大きな感動がすべての人々の心を支配していたのでございます。生ける者、死せる者、すべてを母国に迎え得た、それはやはり国民の大きな喜びでなければなりません。（拍手）

私は、この機会に、個人的な恩讐を超越して、よく比島国民の不満を押え、正義人道の大局からこのたびの大英断を下されたキリノ大統領に対し、最大の敬意と感謝をささげるものであります。（拍手）なおまた、この悲願達成の陰に、筆舌に尽しがたい苦難の道を乗り越えて、献身的な努力を続けられましたモンテインルパの聖者加賀尾秀忍師、マニラ在外事務所の金山参事官、復員局の植木事務官に対しましても、厚くお礼を申し上げたいと存じます。（拍手）

　みんな、みんな有難う！

　はま子さんの名前が無いけど、中々のスピーチね。

　この後、はま子さんはどうしたんです？

　変わらんさ。

　変わらないって・・？

　サイパン、フィリピン、硫黄島、沖縄など激戦地に慰問にいき、印税で慰霊碑を立てまくるのさ。

　ホント、変わらないですね・・・。

　立派なもんだな。

　大尉、僕は何か見えてきた気がします。艦長、日本を通ったら靖国神社に寄っていいですか？

　あぁ、許可する。

　戦争で、あの戦争で死んでいった人たちのおかげで今の日本があるんです。僕もはま子さんを信じますから！

　カミーユ、吹っ切れたようね。

　大尉、今日は何でこんなエントリなんですか？

　渡辺はま子の命日だからさ。

　命日・・？大晦日が？

　そうだ。1999年12月31日に彼女は亡くなった。

　今日は大晦日でもあり、はま子さんの命日でもあるのよ。

　21世紀を見ずに・・・・。

　キリが良いと言うか・・・。

　大尉、良い話を有難うございます！カミーユ・ビダン、行きます！

　待ってカミーユ、ブライト艦長？

　そうだな。ファ、艦内放送開け。

　はいっ。

　クルーの皆は手を休めて聞け。今日は大変な偉人の命日だ。彼女は世間の冷たい目にも負けず自分を信じて意思を貫き通した。そして政治家でもできない事をやってのけた。総員、渡辺はま子とあの戦争で死んでいった全ての人達に、敬意と哀悼の意を表して、敬礼！

　・・・（ビシッ！）

▽ネタ元・関連

[JOG(180) 渡辺はま子 国際派日本人養成講座]

[三銃士 『モンテンルパの夜はふけて・気骨の女（ひと）渡辺はま子の生涯』中田整一／著]

[渡辺はま子 - Wikipedia]

[日刊スポーツ・訃報・渡辺はま子さん]

[Amazon.co.jp：桑港のチャイナ街/あぁモンテンルパの夜は更けて: 音楽]

あぁモンテンルパの夜は更けて　メロディ

[ああモンテンルパの夜は更けて　メロディ２]

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　流石に私も苦労した。紹介してくれると嬉しい。