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「一度だけ…」から薬物依存、27歳が体験告白

11月28日15時7分配信 読売新聞

 芸能界だけでなく、若者にも広がる薬物汚染。遊び感覚で手を出すケースが多いが、抜け出すのは容易でない。深刻な薬物依存からの回復を目指す男性(27)が、自らの体験を語った。

 男性が最初に使った薬物はシンナーだった。高校2年の夏、同級生から誘われた。一度は拒んだが、同級生の様子を見ているうちに抵抗感が薄れ、「一度だけ」と吸ってみた。

 使用回数が徐々に増え、1年後にはシンナーを手放せなくなった。高校卒業後、親類を頼って上京し、革靴製造工場に就職。一度はやめようと決意したが、5か月後、工場のシンナー缶に手を出した。クビになると歯止めが利かなくなった。

 睡眠薬、向精神薬、そして覚せい剤。どんどん深みにはまり、禁断症状も出始めた。覚せい剤を買う金欲しさに知人に片っ端から電話した。しばらくすると誰も電話に出なくなった。実家に忍び込み、金を盗んだこともあった。

 20歳のある朝、駅のホームで突然、「殺してやる」という幻聴が聞こえた。パニックになり、駅員に助けを求めた。通報されて、覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された。執行猶予付きの有罪判決を受けた後、薬物依存者の民間リハビリ施設「京都ダルク」(京都市伏見区)を紹介された。体験を語り合うミーティングを通じて回復を支援する施設だ。

 そこで薬物をやめたくてもやめられない苦しみを正直に打ち明けられる仲間を得た。目標は「今日1日は使わないで生きる」。そうして積み重ねた時間が間もなく5年になる。

 現在、京都ダルクでスタッフとして働く男性は、「気がめいると、薬物に心が動きそうになる。死ぬまで治らないだろう。『すぐにやめられる』は大きな間違いだった」と話した。

 薬物を断つ難しさは、覚せい剤取締法違反容疑の再犯率の高さに表れる。警察庁によると、再犯率はこの5年間、例年55%前後。

 「夜回り先生」として知られ、若者の薬物問題に詳しい水谷修・花園大客員教授は「薬物依存は『回復のない病』。自分の人生を台無しにしてしまう。中学・高校段階からの予防教育が必要だ」と指摘する。

最終更新:11月28日15時7分

読売新聞

 

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