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【昭和正論座】京大教授・会田雄次 昭和51年12月1日掲載 (5/5ページ)
大衆だけのことではない。学者文人も同じことである。最近中国古代史家として著名な郭沫若氏が「江青女史は妖怪、張春橋氏は無能」という四人組を痛罵(つうば)する詩を発表したことが伝えられた。ある新聞の北京特派員はやたらとそれを讃美しているが、郭氏は文革がはじまると自分の著書を自ら焼いて不明を謝し政治生命を維持した人であり、とくに江青を讃歌し、女聖のように持ち上げた詩を書いたことは私たちの記憶にも生々しく残っているはずだ。哀切なピエロの姿そのものではないか。
日本にもしだいにこの「善良」な錯覚者で、美人を薄命にせずんばおかぬ人の声が多く高くなってきた。やがて日本も救いなき人々の国になるのであろうか。(あいだ ゆうじ)
◇
【視点】この論稿を一読すると、心の奥底に潜む偽善や嫉妬や怨念のすさまじさをえぐられる。それが美人には薄命、才子には多病、凡人には無病息災でバランスをとるとする人間観は、過酷なリアリズムに裏打ちされている。美人薄命の裏には、必ずしも美人でない人の怨念が表出しているというように。
だから、そのリアリズムを隠して愛や平和や調和を政治に持ち込むと、物差しに合わぬものはすべて排除の対象になる。「大衆は善」「軍事は悪」になり、やがて善良なる権力者を褒めそやさなければ生きられない社会になりかねない。友愛を掲げる指導者の顔色をうかがい、本心を偽るピエロになりたくはない。(湯)
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