[PR]
ニュース:政治 RSS feed
【昭和正論座】京大教授・会田雄次 昭和51年12月1日掲載 (4/5ページ)
そういう人が自分でそう信じているだけならよろしい。あるいはそういう人々の小集団が孤島かどこかで夢想の社会を実現させているなら、あるいはこの濁世に一服の清涼剤になるだろう。例えばアメリカで十八世紀そのままの生活をしているピューリタンの一支派アーミッシュ教徒の小村のように。
しかし、かれらの声が次第に大きくなり、権力を持って大きな社会を支配するようになったら大変だ。
なぜならその思想は希望でしかないのみならず、上に指摘したように、呪詛(じゅそ)と嫉妬と怨念(おんねん)をふくんでいる。例を平等思想にとっていえば、そういう権力者は、悪人である金持ちを退治するとともに「美人を薄命」にし、「才子」を「多病」にすることに狂奔するからである。
≪日本にも「善良」な錯覚者が≫
ここではすべての人が恐怖の余り本心をいつわるピエロとなる。善良主義を強制する権力者をおそれ、争って自分は善良であり、善良なる権力者のおかげで幸福であることを口に出さねばならなくなる。
どうして日本の中国旅行者は、自分たちに会うと、革命前のみじめさ、毛沢東統治下の幸福とかれへの讃歌を我がちに語る人々に接して感心ばかりしているのだろう。そうせざるを得ない哀切さを感知しないのだろう。
関連ニュース
[PR]
[PR]